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『おバカの利点』

注意:キル→アニです!!


いま気づいたんですが、カテゴリ名が「ハンアニSS」だ……なんてこった。SSに変えようか。
消える前に書いてたんですが、存在を忘れてました。
復活して最初の更新がキルアニだけというのもどーなんだということで、ハンアニができるまで保留してた品です。






*****





『おバカの利点』



「なんだか最近、なめられてるんじゃないかと思うわけだ」
 ごくあたりまえのようにアトリエに居座って、キルベルトはそう不満を漏らした。仕事が休みなのか、そもそも働く気がないのか、いつもの重そうな鎧を着ていない。黒のハイネックにズボンという、ラフな姿だ。
 釜をかき混ぜながら、へえ、とアニーは一言返す。残念ながら、フォローのしようがない。
「こっちに来たときはよぅ、オレが通ればもう誰だって恐れおののいて、ひれ伏して、あいつってばスゲーんだぜ的な声が届いてきたもんよ。女なんか、きゃーんっ、キルベルトさまだわ、カッコイーイーッ、ってよりどりみどりだったのによ」
「なんか変なもの食べたの?」
 親切心から尋ねたのだが、キルベルトは眉間に皺を寄せた。
「いうじゃねーか。この物語はノンフィクションだ」
「じゃ、記憶の混乱?」
「混乱……そうか、これは記憶の混乱だったのか──!」
 アニーの言葉に、なにやらひらめいたらしいキルベルト。帰ってくんないかな、と思いながら、アニーは自分の喉が渇いたので、キルベルトの分も茶を出した。どうぞ、とテーブルに置く。ついでに買い置きのクッキー。

「確かに、最初に会ったときはもっと恐れられてる感じだったよね。近寄りがたい、っていうか」
 自分も座って、クッキーに手を伸ばしながら、アニーは出会ったころのことを思い出していた。あれは冒険者ギルドに、ボディーガードを探しに行ったときだ。大剣のキルベルト──畏怖を込めてそう囁かれ、ひとり浮いていた。
 呆れたように、キルベルトが肩をすくめる。
「おまえは最初っから恐れてなかっただろ。いきなり話しかけてきたもんな。やー、あれにはびっくりした。なんだコイツと思ったね」
「うん、なんだコイツ、って顔された気がする」
 アニーは苦笑した。思えば、ずいぶんイメージが変わったものだ。
 けれど、と考える。果たしてそれは、本当に不満に思うようなことなのだろうか。
「いいんじゃないの、なんだか毎日楽しそうだし。近寄りがたいあのキルベルトより、いまのバカまっしぐらなキルベルトの方が、あたしは好きだよー」
 笑いながらいうと、キルベルトは少し言葉に詰まる。
「お、おお──っておまえ、バカまっしぐらってなんだ」
「褒めてるのに」
 心からの賞賛だったのだが、キルベルトは気に入らなかったようだ。苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「まあ、なめられるのはともかく、こういうスタンスも悪くないけどな。それなりに、利点がある」
 眉を上げ、キルベルトがそんなことをいってきた。利点、といういいかたに、アニーは首をかしげる。いいこと、ではなく、利点。
「たとえば?」
「お、知りたいか?」
「そりゃいいかけたんだから。気になるよ」
 どうやらあっさりと帰ってくれる運びにはなりそうもなく、アニーは茶のおかわりを用意するために立ち上がった。今度は多めに作ることにする。
 キルベルトがカップを差し出してきたので、注いだ。ほんのりと紅い、香りの茶。
「たとえばだな、こうやっておバカなキルベルトくんを演じていると──」
「え。演じてたのっ?」
「──話は最後まで聞けよ」
 アニーは眉をひそめた。なんて胡散臭い。三年という付き合いで、彼の人となりは把握しているつもりだ。恐ろしいほどの天然バカ。 
「まあ、オレが本来持つ純粋無垢な部分が表出しちまってるってのもあるが──ゴホン、ともかく、おバカでいるとだな。あれだ。警戒されない」
 ふむ、とアニーはうなずいた。
 確かに、黙って立っていれば警戒度百二十パーセントだが、おバカだということがわかってしまえば、警戒するほどではない。
 だが、もったいぶってまでいうことだろうか。
「警戒されないと、どうなの?」
「知りたいか?」
 また、知りたいか、ときた。別に知りたくない、と返そうかとも思ったが、やはり気になったので、アニーは素直にうなずく。
 うなずいてから、思い立った。ああ、と手を打つ。
「モンスターとの戦闘で有利、とか?」
「はずれ」
 呆れたような声で、さらりと返される。
「じゃあ……冒険者として、依頼人になめられる!」
「それだ! おまえは見た目怖そうだけど話してみるとそうでもないから報酬減額な! ──ってなんだそれ。それのどこが利点だ。はずれ」
「むぅ」
 唇をとがらせた。警戒されないとどうなのか、どうしても想像できない。
 対して、キルベルトはどこか楽しそうだ。にやにやと、アニーを見ている。

 びしりと手のひらを突き出して、視線を遮った。
「その目、やだ。ヒントちょうだい、ヒント」
「ヒントー?」
 からかうようなキルベルトの声。癪に障るが、ギブアップするよりましだ。
 アニーは辛抱強く、待つ。指の隙間からちらりと覗くと、キルベルトは唇の端をあげ、どこまでもニヤニヤしている。
 楽しくてしょうがない、という顔。
「じゃ、ヒントな。たとえば、どこへ行ってもモテモテで引く手数多のオレさまにも、気になる女の子ってのがいるとするだろ」
「…………」
 ツッコミどころ満載だったが、とりあえずアニーは黙った。ここで話の腰を折ったのでは、また正解が遠のいてしまう。
「……それで?」
「まあふつうは、警戒されるわな。こんな大剣背負って頬にキズのある大男が、そいつの家の戸をノックしたところでよ」
 そこまでいわれれば、なんとなく腑に落ちて、アニーはなるほどど頷いた。
 警戒されない、というのは、つまりそういうことなのだろう。
 気になる女の子とやらに、心を開いてもらえる──具体的には、訪れた際に戸を開けてもらえる。
 いわれてみれば、アニーだって、こうしてキルベルトと二人で茶を飲んでいる。警戒心、というものはない。
「うんうん、わかった。そのキャラだと、好きな子に警戒されないってことだね」
 わかってしまえば、すっきりした。ヒントどころかほとんど答えをいわれたようなものだが、それほど引っ張る話題でもなかったな、とアニーは手を下ろそうとする。
 その右手を、つかまれた。
「わかってねえだろ」
 先ほどまでのからかうような声のまま、けれどかすかに真剣味を帯びている。アニーには、何が起こったのかわからない。きょとんとして、つかまれた手とキルベルトとを見る。
 あっという間に左手もつかまれ、平衡感覚を失った。
「きゃわっ」
 衝撃を受けると思い、目をつぶる。しかし、痛みはほとんどなかった。ただ、背中に固い感触。鼻先に、キルベルト。
 アニーは、事態を察した。
 床の上に、組み敷かれていた。
「──ちょ、……!?」
「正解、知りたいか?」
 アニーは首を振った。それどころではなかった。アニーの許容範囲を超えた何かが起こっているということしかわからない。 
 足をばたつかせ、手に力を込めるが、逃れられそうにもない。
 キルベルトの目は、真剣だ。
 まるで知らない誰かのような顔をして──けれど確かに、キルベルトに違いない。この距離では、吐息も、香りも、何もかもが伝わってきて、それらすべてがアニーを混乱させた。
 鼻の奥が、つんとした。
 目が熱くなる。
「────うぅ」
 涙が滲んだ。
 なんだか悲しくて悲しくて、仕方がなくなる。

 ──瞬間、キルベルトに叩かれた。
 額に、手のひら。ぺし、と音がする。
「知り合いだからってホイホイ家に上げて馬鹿面さらしてんなってことだ! バーーーカ!」
 そういって、キルベルトは立ち上がった。一直線に扉へ向かい、勢いのままに出て行ってしまう。
 残されたアニーは、思うように動けない。
 そんな話だったろうかと、遅れて疑問がふってくる。
 閉まったばかりの戸をぼんやりと見ていると、ふたたび勢いよく、それは開いた。
「また来るからな」
 捨てぜりふのように言葉を投げて、今度こそ、キルベルトは出て行った。
「……どっちよ」
 アニーは、ぽつりと、つぶやいた。



 翌日、アニーのアトリエには、一枚の紙が張り出されていた。
 目撃した面々があれこれ尋ねたが、アニーは言葉を濁し、当のキルベルトも口を割らず。

 『キルベルト、お断り』

 キルベルトが土下座で謝罪するまで、それは張り出されたままだったという。   





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たまには、こういうのもありということで。
ごく希にハンアニ以外も増えるかもしれません……が、需要はない気がする!

ちなみに私の中でキルは当て馬位置。ごめんキル。

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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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