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treasure『あと5分』

いただきSSです!
今回は、お馴染みの瀬名さまです。瀬名さまにはSSいただいたりネタいただいたり、いつもお世話になっております><

つきあい始めているわけではないけれど、その一歩手前みたいな、甘い甘い空気を、堪能くださいませーー!!






*****






『あと5分』 BY 瀬名



アトリエにやってくる友人の中でノックをするのは4人。
する、しないの割合は、半々だ。
ノックしないのは男性陣で、キルベルトにカイルとビュウ。
ここは女の子の住む場所だというのに。考えてみると腹立たしいことだ。

ノックの仕方にはそれぞれ特徴がある。

フィズは小さく軽やかに。あの鈴の鳴るような声で「アニーお姉ちゃん、いるですか?」との呼びかけつきのことが多い。
ジェリアはノックをすることはするが、返事を待たずに開けてしまうタイプだ。ノックの意味がないと何度も注意してるが、なおる気配はない。最近は諦め気味だ。
リーズは軽やかでリズミカル。返事をするとドアの隙間から顔を出して笑顔であいさつする。
その仕草は子供っぽいというよりは不思議と大人可愛く、あんな動作の似合う女性になりたいなと思っていたりする。口には出さない、決して出すまい。調子に乗った彼女に授業料をとられそうだ。

男性陣でただ一人マナーをわきまえてるハンスは、マジメンスらしくノックも一定のリズム。
そういえば以前、名乗りを上げる前に「ハンス? どうぞー」と言ったら開口一番「なぜ僕だとわかった」と聞かれた。
身構えるような声色の問いに「ハンスのノックなんてすぐわかるよ~」と答えたら固まった。それを首かしげながら
「ハンスのはキッチリしてるからね。他のみんなのも聞き分けられるんだよ、すごいでしょ!」
と言ったら何故かものすごく脱力された。褒めてほしかったアニーとしては不平を言わずにはいられなかった……説教されたというオチつきだ。なんで説教される流れになったのか未だによくわからない。



実は近頃、その几帳面な音を心待ちにしてる自分がいる。
理由はよくわからないけど、ハンスの顔を見ると嬉しくなる。
お小言や説教には耳をふさぎたくなるが、あの声は心地よいと思う。
彼の傍にいるとすごく安心する。
ずっと……ずっと、一緒にいられたらいいなと、思っている。



そのハンスの様子が変で、アニーは眉をよせた。
「アニー、先日頼まれたリゾートイベントの件だが……」
何か言っているが頭には入ってこない。
だってハンスの目は少しうつろで、心なしか肌も白い。声にもいつもの張りがなくて、それが不安で仕方ない。
もしかして、と思った。
「ハンス、ちょっとごめん」
「え、――――っ!?」
すっと額に手を当てる。空いてる手で自分のも触ると、やはり少し差がある。
「な、なんだいきなり」
なにやら動揺してるが構わずに問いかける。
「ハンス、風邪ひいてる?」
「? いや……」
そうではない、なら別の可能性と言えば……
「じゃあ昨日何時に寝た?」
ちょっと後ろめたそうに視線をさまよわせた末にぼそりと答えた。
「…………2時」
「にっ!?」
ぎょっと声をあげる。
そりゃ自分は睡眠大好き人間だけど、2時は一般的にも遅いはずだ。
「い、いつも2時なんてことは……」
無い、と言われて心底ほっとした。
ハンスをこき使ってる自覚は多少ある。知らないとは言えヒドイ仕打ちを自分は…と思ったのだ。
「普段は10時に寝るように心がけている」
あぁそうだ、彼は早寝早起きの人間だった。朝は6時とかそれより前に起きてるとか言ってた。ちなみに自分は何の用事もなければいつでもどこでも眠れる。

「ならなんで昨日はそんな時間だったの」
「仕事がたてこんでて……昨日はそれでも早く寝た方だぞ」
「昨日は、それでも、早かったほう~……?」
眉をつりあげるとばつの悪そうな顔になった。言い訳のつもりだったのか口を滑らせたのかは知らないが、いずれにせよ聞き捨てならない。
「一昨日は何時」
黙秘を許さない口調に負けたのか、ハンスは聞かれるままに覚えてる限りで就寝時間をさかのぼった。2時半、3時、3時半、3時……それで起床時間はいつもと変わらないというのだからアニーには信じられない。
定休のある職ならその時に寝溜めができるが、彼の仕事には定休は存在しないはずだ。休みは不定期で、聞けばこの一週間以上休みなしだという。つまり、
「ここ一週間ろくに寝てないってことじゃん!」
「もうすぐ落ち着くところだ。――そんなに怒らなくてもいいじゃないか」
普段のやりとりとはまるで逆だからか、ハンスは居心地悪そうだ。
「何言ってんの、そんなに顔色悪くして!」
そんなに悪くはないはずだぞ、誰にも気づかれなかったし…などと言ってるがありえない。嘘に決まってる。一目見ておかしいと思ったのに誰も――あの気遣いダニエルさえも気づかなかったというのだろうか。

気持ちが伝わってないことが苛立たしくてうつむく。
いつだってハンスはこうだ。仕事のために無理をして、それをまわりの人間が心配してるとか、なかなか気づいてくれない。仕事の中には自分の担当も含まれている。つまり自分はハンスの負担なのだ。

なんだか涙が出そうになった時「わかった」と声がした。
顔を上げるとハンスは息をのみ、目に見えてうろたえた。
「泣かないでくれ……! 今日は、なにがなんでも早く寝るから、……だからそんな顔しないでくれ」
そんな顔とはどんな顔だろう。泣きかけだし、顔は少し熱いから赤くなってるのだろうし、みっともない顔になってる気はするが。
「約束する?」
小指をだすと「う」とつまってから約束する、と小指を絡ませてくれた。少し安心する。こそばゆい感覚が遅れてやってきた。そっと小指を見つめる。



「で、さっきの話の続きだが……」
続けようとするのを遮って
「もう一個お願いがあるの」
「なんだ?」
まだ目がうるんでるからだろうか。気遣うような優しい声。

「今すぐ、ここで寝て」


ギシ、と音が聞こえた気がするほど、見事に静止した。息をしてるかもあやしい様子に首をかしげる。
「仕事中だから、1時間とは言わないよ。30分、ううん15分だけでも寝ていきなよ。本当に顔色悪いよ、ちょっとの睡眠でも疲れはとれるし」
ようやく硬直を解いた。だが承諾の表情ではない。
「いや、でも……」
「ベッド使ってもいいから」
「………」
「毎日干してるから気持ちいいと思うよ」
「………」
「ね?」
やがてハンスは深々とため息をついた。
「とりあえず布団は辞退する」
「そんな…」
「本当に、気持ちだけもらっておくから。
でもせっかくだし、15分ここで寝かせてもらう。椅子とテーブルを貸してくれないか?」
ほっと息をつく。少しは自分の心配をわかってくれたらしい。
「それじゃあ十分に疲れとれないよ? 硬いところで寝るのと柔らかいところで寝るのじゃ全然違うよ?」
諦めきれずに説得しようとするが、いいからと再度拒否された。しかたない、せめてとクッションを用意しながら「手袋とブーツと靴下とか、なるだけ脱いだ方がいいよー、むくむから」とアドバイスしておく。採取先でよくやるからお互いわかっているが、念のためである。

「じゃあ他に必要なものない?」
訊ねるといやと答えかけてから「一つだけ」と言った。
「うん、何?」
珍しくハンスの役にたてるのが嬉しくて身を乗りだす。
腰をかけながら「手を貸してくれないか」と言われた。
「うん、だから何すればいいの?」
問いかけるとそうじゃなくて、と言葉を濁してから少し悩む様子を見せた。
「……もう一つ椅子を用意してくれ」
「ん? うん」
2つ並べてそこに横になるのかと思ったら違うらしく、座ってくれと頼まれた。不思議に思いつつも素直に従う。

すると手を掴まれた。

え、と思う間もなくハンスは片腕で枕をつくり、そこに顔を伏せながら自分を見た。角度的に流し眼、おぉ~色っぽい、などと感想を抱く。
「おやすみ」
「あ・うん、おやすみ」
その声を聞いてるのか聞いてないのか、すぐに目を閉じて寝息が聞こえてきた。やはり疲労がたまっていたのだろう、あっという間だった。


(手を貸してくれってこういう意味か……でもなんで手を繋ぐ必要があったんだろ?)
意味不明だと思いながらその手をしげしげと見つめる。
自分の助言に従ってハンスは手袋とブーツ、上着を脱いでいる。流石に靴下は、と脱がなかったが。あまり見る機会のない、ハンスの素手。
いつもは手袋で隠されている筋張った手。
関節はごつごつしてるし、少し骨が目立つ。
自分の手よりふたまわりは大きいし、硬い。
どんなに綺麗な顔をしてても男の人なんだなぁと感心した。

そういえばこの手に護ってもらったことが何度もある。
戦闘中はもちろん、獣道を歩くとき、街道で馬車が通ったとき……いちいち数えていたらきりがない。
そういえばおんぶしてもらったこともあった、と思いだした。
いつもぴんと伸びた背が、今は丸まって休息をとっている。
あの時も思ったが、やはり広い背中だ。
(いつもありがと)
伝わればいいな、と思いながらきゅ、と手を握り返すとほんの少し、表情が緩んだ気がした。

陽光にあたって、いつもより薄く見える髪を見つめる。砂浜のような色合い。確かこういう髪をサンディブロンドと言うのだったか。
(男の子だから髪の手入れとかしてるとも思えないのに、なんて羨ましい髪の毛…)
女の子が夢見るようなサラサラの髪。痛んでる様子もなく、枝毛は見当たらない。指ですくったらするりと逃げそうだ。自分の頑固なクセッ毛と交換してほしい。

その美しい髪から覗く、長いまつげ。今は閉ざされてるまぶたの下の瞳は、優しい色をしている。
例えばねぎらってくれる時や、綺麗な景色を見た時、自分との他愛ない会話……そういったときに見せる笑顔がとても好きだ。
そういう時のハンスは、目も空気もとても柔らかい。



(寝顔さえ綺麗なんて……ズルイなぁ)
ハンスと向き合う形で、自分もテーブルに頭を乗せる。見れば見る程一つ一つのパーツが整っていることがわかる。しかもそれがバランスよく配置されているのだ、かなわない。
(壁画の大天使様みたい)
あるいは物語の王子様。
実際彼はリヒターゼンの乙女達の王子様だ、ファンクラブまである。
当然と言えば当然だ。こんなに甘い顔立ちで、若いけどエリートで、性格だって悪くないし、身長もそこそこ高い。乙女のハートをがっちりわしづかみだ。
中性的だがハンサムで、一目惚れされるなど日常茶飯事だろう。
そう考えるとなんだか遠い存在みたいで寂しい。
ふいに苦しくなった胸を押さえる。
どこか病気かな、胸ってことは心臓? そう考えてうすら寒くなった。後でエリキシル剤でも飲んでおこうか。



視線は髪、目、とたどった順のままその下へ。
唇。もちろん形の整った……
(男の人のも、やわらかいのかな)




オトコのヒトのも、ヤワラカイのかな……?
(――――ッ!!)
自分の思考を反芻し、カッと頬が熱くなった。
(ヤだっ、なんか今の思考回路、やらしい!)
うぎゃーっと空いてる片手で顔を覆う、熱い。
ひょっとしてひょっとしなくても自分はかなりアブナイことを考えたのではないだろうか。
あぶないというかあやしいというか、一番しっくりくるのはやはりやらしいの一言だが。

アニーは顔を赤くしたり青くしたりと忙しい。
ちらりと時計をみるとすでに13分。あと2分もしたらハンスを起こさなくてはならないが、それまでに顔色を戻せるだろうか。
あたふたしてる間にも秒針は容赦なく進む。チクタクチクタク、ハンスのノックより正確だ。
いっそ自分も寝てしまおうかと考えた。しかし現在、時間に追われてるハンスにそれは酷い意地悪だ、いくらなんでもそれはない。
迷ってる間にあと1分になってしまった。
あぁ時の石板はこういう時にも有効だろうかと考え、しかしあれは対象者の時を止める道具だったと思いだした。それじゃあ全然意味がない。しかも今それは引き出しの中で、ここからは手が届かない。
そうこうしてる間にあと5秒だ。60倍にのびてほしいと無茶なことを考える。

カチリ、と秒針が動いて15分経ったことを示した。
あぁ、せめてあと5分。

毎朝の口癖を心の中で唱えながら、おそるおそるアニーはハンスに握られてる手をちょいちょい、と引いた。
どうかうまく誤魔化せますように、と祈りながら。








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この甘さー! ドキドキです。ヘタレンスでないハンス。ちょっと攻めてます。
アニーのかわいさといったらもう。そうやって、徐々にでもいいから意識していって欲しい!! さあさあ! さあさあさあ!!
いやもう、久しぶりのハンアニで誰よりも私がはしゃいでます。ごちそうさまです。


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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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