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treasure『とある鳥のさえずり』 2

続きです。






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『とある鳥のさえずり』 2 BY平隊員T


 少し細い路地をしばらく歩いてそこを抜けると、急に視界が広がった。私の目に映ったのは、広い敷地とそこに構える大きな施設。清楚感漂う白の服を着た人と、鎧を着た騎士風の人が行き来している。門番が立っている事から、この街にとって重用な施設なのだろう。
「アーデ、あそこは何?」
「あれはリゾート開発の委員会本部ですね。白い制服姿の方が役員、鎧を着ている方が島の開拓地域、いわゆる未完地区の安全確保などを行っている方です」
 安全確保。未完の場所のため、もしかしたら何か獰猛な動物が縄張りを張っているのかもしれない、という事だろうか。平和そうに見えてその実、案外危険な島のようだ。
 しばらくその施設を眺めていると、制服姿の一人がこちらに気付き近付いて来た。私達と同じ金色の髪。整った顔立ち。思わず見惚れてしまう。
「委員会に御用ですか?」
 女性的な作りではあったけど、声色は男性。黙っていたら女性と間違えてしまいそう。きっとそういった経験は多いはず。
「いえ、立派な建物だなと思って」
「そうでしたか。何か困った事があればいつでも委員会を尋ねて下さい。職務がありますので、僕はこれで」
 踵を返して立ち去って行くその姿は、まるで一枚の絵画を見ているようで実に様になっている。小型の映写機でもあればこの情景を撮影しているところなのに、実に惜しい。
「はあー……。凛々しい方でしたね」
「そうね、綺麗だったわね」
「モテそうですよね」
「どちらからもね」
「お金持ってそうですよね」
「ええ――って、あなたの頭の中にはそれしかないの?」
「そんなわけないじゃないですか。宝石にも興味ありますよ」
 結局のところ金銭的価値のものにしか興味がないらしい。彼女にさえ出会わなければ、私の中のエルフ像は神秘的な存在だったのにと思ったのは、これで一体何度目だろう。多分、三桁は下らない。
「あ、お嬢様」
「なに?」
 施設とは反対側を向いていた彼女の声に、後ろを振り返ると、そこにいたのは公園で見掛けたあの緑の妖精、ペペだ。今回はもう一人一緒にいる。帽子にマント姿というちょっと変わった服装の少年。どうやらペペに叱られているようだった。
 意味もなく声を掛けるのはどうかと思い、その姿を見送るようにしていたわけだけど、こちらに気付いたペペが手を振ってわざわざ挨拶に来た。本当に紳士的な妖精だ。誰かさんとは大違い。
「よお、また会ったな」
「ペペ師匠、この人は?」
 まだこちらが名乗っていない事に気付き、アーデに目線で合図を送る。それが理解出来なかったのか、彼女は首を傾げていたが、それからすぐに私の言いたい事を読み取り一歩前に出て頭を下げた。出来れば即座に理解して欲しい。
「申し送れました。私はアーデ・クーナ・ヴィレッツェ。立派なエルフ族です。“一応”じゃありません」
 根に持ってたのね。それ。
「そしてこちらの方はモルテ・フォル・ブラーナ様です」
 私の名前を聞いた二人は顔を見合わせていた。少し有名だという自覚はあったけど、まさか島国にまで知れているとは思ってもいなかった。
「リーズから聞いた事がある名前だな。確か、歌姫って呼ばれてる有名な歌い手もモルテって言わなかったか?」
「うーん、確かそんな名前だったよね」
 よかった。大陸にいた頃のように、握手やサインをねだられるのかと思ったけど、どうやら詳しくは知られていないよう。心底ほっとした。
「お二人ともモルテ様をご存知ないのですか? それはもう立派な歌い手ですよ。その歌声はまるで清流のように澄み渡り、春風のように優しい。大陸一、いえ、世界一の歌い手だと言われていましたから」
 アーデは本当に余計な事をべらべらとしゃべるのが好きなよう。帰ったらきつく口止めしておかないと面倒な事になりそう。
 それよりも、適当にごまかして退散しないと早速面倒な事になりそう。
「でも、リーズ姉さんの話だと二年前から活動休止したって」
「そこは色々とあるんだろ。深く詮索しない事だな」
 アーデとペペを取り替えて欲しいと、本気で思う。こんなにまで紳士的な方、人間でも早々見掛けない。
「ああ、そうだ。これから帰って夕飯にするんだけど、良ければ二人も一緒にどうだ?」
「え、そんな、ご迷惑――」
「是非、ご一緒させて下さい!」
 自分が夕飯の支度するの面倒だからってなんて失礼な世話係り。ここまで図々しいと、いっそ羨ましくも思えて来る。



 ペペの好意に甘え、私達はアニーのアトリエへとお邪魔する事となった。ペペの話によれば、アニーは錬金術というものを彼から学んでいるとか。大陸では書物なんかで見た事はあるけど、それを生活に取り込んでいる国は存在しない。そう考えると、この島の文化レベルは少し変わったものなのかもしれない。
 料理法一つ取ってもそう。食材を適当に切り分け、なぜか大きな釜に放り込む。それをどう見ても単なる棒切れでぐるぐるとかき混ぜると、魔法のように料理が出来上がって出て来る。ペペの話では、錬金釜と錬金用のかき混ぜ棒には特殊な術式が施されていて、なんとかかんとか……。魔法ではなく、そういった法則らしい。
 ただ、出来れば料理は包丁を使ったり、火を使ったりして作って欲しい。釜から出て来た野菜サラダや焼き魚は、正直ちょっと手を伸ばしづらい。アーデは全く気にならない様子だけど。
「モルテさん、食べないの?」
「あ、いえ。い、頂きます」
 見た目、香り、共に店で出される料理と変わらない。もしかしたら、それ以上の出来かもしれない。完成品だけ見せられたら、まさか釜から出されたとは到底思えない。そう考えると本当に錬金術は便利だ。
 野菜サラダを口にしてみる。一流シェフの作ったもの、とまではいかないまでも、それでもかなりの味。アニーは料理人としても十分やっていけそう。テーブルに並んだ他の料理もなかなかの味だった。アーデの代わりに料理を作ってもらいたいくらい。
「味はどう?」
「ええ、とても良い味です」
 釜から出て来た物でなければ本当に最高です。
「普通に料理はしないんですか?」
「いつもは普通にしてるよ。今日はね、ちょっと修行も兼ねて」
 修行に付き合わされたらしい。失敗作でなくてとりあえずはよかった。
 夕飯を終えてさあ帰ろうと思ったわけだけど、満腹になったアーデは主人を無視してアニーと二人で彼女のベッドで大の字。こんな態度でも一応給金を払わなければいけないのは納得いかない。
 それはそうと、先程知った驚くべき事実。アニーは少年ではなく少女だった。ごめんなさい、アニーさん。でも、あの格好を見たら誰でも男の子だと思う。
 寝息を立てるアーデを眺めながら、食後のハーブティーを一口。葉は安物だと聞いていたけど、なかなかの味。淹れ方が上手いのだろう。
 もう一口とカップに手を伸ばした時、隣に座っていたペペが袖を軽く引いた。
「ちょっといいか」
 ペペに言われ、その後を付いて行く。表に出ると家の裏手に案内され、掛けられたはしごを上り始めた。屋根に上ったペペが手を振って合図する。どうやら上って来いという事らしい。
 一段上るごとに軋むはしごに冷や汗を流しながら、ようやく屋根に辿り着く。たった数段のはしごがやけに長く感じた。
「ほら。見てみろよ」
 ペペが空を指差す。夜空一面を覆う星の海はどこまでもどこまでも広がって、とても綺麗な光景だった。見慣れているはずのその星空は、なぜだか懐かしい。
「進むばかりが人生じゃない。たまには立ち止まって、ぼーっと星空を眺めるのも必要だ」
「え?」
 そう言ったペペは、にひひと歯を見せて無邪気な笑顔を向けた。
「昔、オイラがまだ見習いだった頃に教わった言葉だ。ま、疲れたら休めって事だな。とは言え、アニーみたいにサボってばかりじゃ困るけどな」
 屋根の上、私はペペと星空を眺めた。いつ以来だろう、こんなに頭を空っぽにしたのは。
 見詰める星の輝きがあまりに眩しくて、涙が溢れそうになる。
「お、流れ星」
 広い星空を、一つの星が尾を引いて流れた。それから間もなく、一つまた一つと流れていく。
「ねえ、ペペくん」
「ん? どうし――」
 振り向いたペペの帽子を取り上げると、おでこにそっと口付ける。突然の事に驚いたのか、ペペは少しの間そのままの格好で固まっていた。
「――なっ?!」
「ありがと」
 胸の内にあった全てのもやもやが晴れたような、そんな清々しい気分になれた。きっと今日からはぐっすり眠れる。


※※※


 飛ぶ事を止めてしまった鳥は鳥だと言えるのだろうか。その答えは、とても簡単なものだった。
 どうなろうと、どうあろうと、鳥は鳥であり、私は私だ。
 もし許されるのなら、私はもう一度この翼を広げよう。大空を飛ぶために、大きく大きく。
「お嬢様」
 アーデの声に一つ息を吐くと、ゆっくりと目を開ける。
「行ってきます」
 さあ、行こう。私の羽ばたくべき大空、その舞台へ。






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ぺぺのこのかっこよさ!!!
ぺぺってば、いままでほとんど重要視してなくてゴメン、と思わず謝ってしまいました。
素敵なポジションです、ぺぺ。かっこいい。
アーデさん良い味だし、モルテさんは応援したくなってしまうし。そんな二人からの、あたりまえにそこにある風景、といったアトリエのワンシーン、堪能です><
特別ではない、っていうのが、アトリエの魅力ですよね。
ああ、この世界に行きたい……(逃避中。


モルテさんは、 『永遠に続くメロディ』にも登場します。こちらもゼヒ。

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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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