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『バースデープレゼント』 1

ウジョーさまからリクエスト的なものをいただき、誕生日ネタです!
甘いものにチャレンジしようということで、ハンスとアニーは付き合い始めたという設定です。ハン→アニでなく、ハンアニっていうのは初めてです。
でもあんまり甘くない……あれー。






*****





『バースデープレゼント』 1


「はあ……」
 本日何度目になるのかわからないため息を吐き出して、ハンスは肩を落として歩いていた。
 リゾート開発も軌道に乗り、たくさんの観光客が訪れるようになったものの、だからといって委員会の職務が軽くなるというわけでは決してない。むしろ、より忙しい。
 明日は久しぶりのオフ。めでたくつきあい始めた愛しの彼女と、幸せデート──の、はずだったのだが。
 急な予定が入ってしまった。
 無論、仕事だ。
 ハンス自身残念だったが、それ以上に、悲しそうな顔をする彼女を想像して、胸が痛んだ。
 たどり着いてしまったアトリエの扉の前で、立ち止まる。
 ノックをして、名を呼んだ。
「アニー」
 アニーはすぐに出てきた。キラキラと顔を輝かせて。
 その表情に、ハンスの胃がキリキリと痛む。伝えたくはないが、伝えなければ。

「どうしたの、ハンス? ね、明日、楽しみだね!」
 全身から「楽しみ」が聞こえてくるようで、ハンスは目眩を覚えた。あまりにもかわいい。額を押さえるようにして、ついでに自分も抑えて、謝罪を口にする。
「すまない。実は、急な仕事が入ってしまったんだ」
「え」
 アニーの表情が固まった。
 そのまま、数秒の沈黙。表情がかげるよりも早く、アニーはうつむいた。
「うん、わかった。しょうがないよね」
 声に元気がない。
 思わず手をのばしかけ、扉の向こうにぺぺの姿を確認し、そのまま手を引っ込めた。
「本当に、すまない」
 アニーは顔を上げた。ううん、と首を振る。
「いいよ、ハンスが悪いんじゃないもん。悪いのは──悪いのは、そう、委員会そのものだよ! よぉし、ここはひとつ委員会を壊滅させる方向で……」
「……冗談だよな?」
「冗談だよ」
 それにしても過激な冗談だ。あるいは彼女なら──と思わせる何かがある。

「ね、ハンス。その代わり、お願いしてもいい?」
 アニーが少しいいにくそうに、小首をかしげるようにして、ハンスを見上げた。
 そんな「お願い」を断れる人種が果たしてこの世にいるのだろうか──そんなことを考えながらも、表面上は平静を装いつつ、ああ、とハンスはうなずく。
「もうすぐ、あたしの誕生日でしょ。実はね、欲しいものがあるの」
「ほ、欲しいもの?」
 ちょっとひるんだ。彼女の誕生日についてはもちろん知っていたが、プレゼントをどうするべきか、それがここのところのハンスの悩みだったのだ。何かとんでもないものをリクエストされるのでは、と嫌な予感がよぎる。
 だが、望むものをプレゼントできるのならば、外してしまう心配もない。ハンスはできるだけ優しく、促した。
「なんだ? なんでもいってくれ」
 えへへ、とアニーが笑う。
「あのね……──っと、耳、耳貸して」
 ハンスが少しだけかがむと、アニーはその耳に顔を寄せてきた。
 恥ずかしそうに、ごくごく小さな声で、「お願い」を告げる。
 
 ハンスは、眉根を寄せた。
 彼女の言葉を、脳内でリピートさせる。
「……そんなものでいいのか?」
「──────『そんなもの』?」
 アニーの声が、二段階下がった。
 怒りのオーラが立ち上る。ハンスはすぐに自分の失言を知ったが、もう遅い。
「あ、いや、いまのは──」
「ハンスのバカ────!」
 怒声と共に飛んできたのはまさかのフラムで、さすがにハンスは身をかわす。その隙に、バッタンと力強く、扉は閉められてしまった。

「アニー、悪かった、アニー!」
 扉を叩くが、返事があるはずもない。
 ハンスは、頭を抱えた。
 怒らせるつもりではなかった。そんなもの、というのは、単純に意外だったから出てしまった言葉で、軽んじているわけではないというのに。
 しかも、冷静に考えれば、恐ろしく難易度の高い課題だ。誕生日まで、あと一週間ちょっとしかない。
 とはいえ、用意しないわけにはいかないだろう。
「うぅ……」
 ため息はうめき声に変わった。来たとき同様に肩を落として、残った仕事を片づけに、ハンスは本部へと歩いていった。



   *


 
 仕事に奔走しているうちに、あっという間に一週間が過ぎた。
あれ以来、アニーには会っていない。会ってくれない、というのが正しい。
 ハンスは仕事をすること自体は苦ではなかった。けれど、日々の潤いがないとなると、話は別だ。
 セラ島に配属されて以来、あたりまえのように供給されていたある種のエネルギーが、ぷっつり途絶えて一週間。
 いつの間にか、一週間ですら、耐え難いものになっていた。


「うちのかわいいアニーに何してくれたわけ」
 仕事で雑貨屋に立ち寄ってみれば、リーズが腕を組み、ケンカを売る勢いでそう問いかけてきた。
 ハンスは言葉に詰まる。自分に非があるという自覚があり、反論などできるはずもない。
「な、なんでリーズさんのアニーなんですか」
「あたしのだもーん。泣かせたりしたら奪っちゃうよ」
 え、とハンスが目を見開く。奪っちゃう、というのは彼女なりの冗談なのか、いやもしかすると本当に──
「他の誰かを全力でサポートして、奪わせるって意味ね」
「……や、やめてください……」
 そんなことをされては本当に奪われそうだ。なんだか泣きたくなった。
「よかったら、相談に乗るよ?」
 リーズが苦笑して、優しい言葉をかけてくる。
「いえ……あの、アニー、何かいっていましたか?」
「いってた。けど教えない」
「……相談に乗ってくれるんじゃ」
 口の中でもごもごとつぶやく。やはり彼女は最強だ。いろんな意味で。

 それに、聞くまでもなかった。アニーに何をしたのか、というセリフが出てくるぐらいなのだから、やはり何か──おそらく不満めいたものを口にしていたのだろう。
「だいじょうぶ、です。ちゃんと、しますから」
 リーズは肩をすくめた。息を吐き出し、まるで小さな子を諭すように目を細める。
「不安なものよ、女の子はね」
 それはいつになく真剣な声だったので、ハンスの胸の奥まで、しっかり届いた。
 不安。
 もしかして自分は、アニーを、不安にさせてしまっていたのだろうか──ハンスの胸に得体の知れないもやのようなものが、広がっていく。
「しっかりしなさいね」
 そういって、リーズは出て行ってしまった。もう答えるべき相手はいなかったが、ハンスは自分に誓うように、はい、とうなずいた。





────────────
長いので続きます。
バースデープレゼント2、はコチラ
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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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