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『恋人ごっこ』

またゆるーい感じなのをアップ。
ゆるーい。ゆるーーい。

最近停滞気味ですが、これよりもっと遅くなるかもぐらいを平均ペースとしてノロノロ進んでいく予定です。のろり。


ゲームに登場しないこの話限りのオリジナルが出てきますので、苦手な人はご注意ください><






*****





『恋人ごっこ』


「あなたが、婚約者?」
 敵意丸だしの目を向けられ、アニーは思わず逃げ出したくなった。
 金髪の髪に碧の眼、きっと玉の輿なんて夢見たことなどないであろう、絵に描いたようなお嬢様――名はレシティアといったか。ここが町のレストランであることを忘れてしまうほど、きらびやかな衣装に身を包んでいる。まさかこれは普段着なのか――だとしたらいったいいくらするのだろう。
 アニーは、帽子にマントという錬金術スタイルであることにほんのり後悔を覚えたが、いまさらどうしようもない。
「こ、婚約者というか……ええと、お付き合いしています」
 えへへ、と笑いながら、役目をまっとうしようとする。
 レシティアがすっと目を細め、隣のハンスが身じろぎした。
「どうぞ」
 不機嫌そうにフィズが紅茶を運んでくる。アニーは思わず助けてと目で訴えたが、フィズにだってどうにもできないことぐらいわかっていた。
 頼まれ、承諾してしまったのは、アニー自身なのだから。
 ハンスの恋人役という、この大役を。 


 どこぞのお嬢様が僕を見初めたらしい――ひどくやつれた様子で訴えられたのは、つい先日のこと。上司の薦めで縁談まで取り付けられそうになり、とっさに相手がいるといってしまったのだという。
 その場にいた面々――主にリーズとカイルの提案で、アニーが恋人役をすることになった。
 ハンスが困っていることは明らかだったし、曲がりなりにも普段お世話になっているというのもあり――第一、ハンスがまともに話せる異性といえばアニーしかいないのだ――アニーは渋々、請け負ってしまった。
 今日に至るまでに、訓練も受けた。
 予想されるレシティアからの質問にどう答えるか……頭に入っているかどうかはともかくとして。


 少し離れたテーブルでは、リーズをはじめとしたいつもの面々がこちらの様子をうかがっていた。アニーは居心地が悪いながらも、どうにかテーブルにおさまっている。
「確か、ハンスさんが担当している錬金術師さんだとか。――まだお若いですわね?」
 レシティアが優雅な所作で紅茶にミルクを入れ、まるでことのついでのように聞いてきた。
「ええっと、二つ年下です……けど、愛に年齢は関係ないっていうか」
「あら、もっと下に見えましたわ」
 反論する空気でもなく、アニーはあははとお茶を濁した。ハンスに顔を寄せ、ささやく。
「……なんかこのお嬢様、こわいよ~」
「……思ってもいわないでくれよ」
 それはもちろんわかっている――アニーはため息をついた。
 ハンスは、令嬢を前にしているとあって、どこかギクシャクしている。緊張しているのだろう。
 どうせこうなるのならば、恋人役が自分である必要はなかったのではないかとチラリと思う。
「アニーさんは、ハンスさんのどこがお好きなの?」
 ギラリとレシティアが瞳を光らせた。きた、とアニーは身構える。
「きっとレシティアさんと同じですわ、ホホホ」
 練習通りの答えだ。白々しいが、淀みない。
 しかし、レシティアは眉をひそめた。
「それでは納得できませんわ。たとえばですけれど――ハンスさんがこの縁談を断るために、ダミーを用意したとも考えられます」
「うわ、鋭い――じゃないや、そ、そんなことないですよ。ね、ハンス?」
「ああ、も、もちろんだ、アニー」
 ああもう帰りたい、とアニーは思った。それだけ縁談を断りたがっているということがわかっているのならば、おとなしく引き下がってくれれば良いものを、と胸中で毒づく。
「まあ、ニセの婚約者ならば、もっと釣り合いのとれた女性を用意しますわよね」
 ふん、とレシティアが鼻を鳴らす。
 アニーはむっとした。こちらは完全に慈善活動なのだ、そこまでいわれる筋合いはどこにもない。

 不穏な空気に、ハンスが慌てるのがわかる。そもそもハンスがきっちり断らないのがいけないのだ――アニーはちらりとハンスを見て、意地悪く笑んだ。
「ねーハンス、ハンスこそ、あたしのどこが好きなのか、こちらのお嬢様に語ってあげたら?」
「な……あ、アニー!」
「なあに、ダーリン」
「――――ッ」
 ハンスが言葉に詰まる。アニーにしてみればしてやったりで、悠然と紅茶を口に運んだ。
「そうですわね、それはぜひ聞きたいわ。ハンスさん、アニーさんのどこを愛していらっしゃるの?」
 レシティアも乗ってきた。アニーはせいぜい困ればいいと思いながら、ハンスの反応を待つ。お馴染みの面々が、身を乗り出す気配。トレイを手にしたフィズまでもが、こちらに耳を向ける。
「ど、どこといわれても……ええと、ゴホン、何に対してもまっすぐな姿勢や――よくいえば我が道を行く、というか、周囲に影響されない……ええ、つまり、分け隔てなく、どこまでも自由で……ともすれば鈍いというか……身の丈を知らない、じゃない、ええ、ポジティブな感覚は見習うべきだと……」
「……ハーンス~?」
 アニーがにこやかに、ハンスのティーカップに角砂糖を入れまくった。猛スピードでかき回す。
「さ、どうぞ」
 彼女顔で差し出した。ハンスが息を飲み、甘んじて罰を受ける。すぐにむせた。

「――ではアニーさんは、ハンスさんのどこを? わたくしを納得させられるだけの理由を、ぜひ」
 レシティアの目が胡散臭そうに細められている。話題を逸らしたつもりだったのに、しっかりと回ってきて、アニーは視線をさまよわせた。
 用意していた答えは、もう使えない。
「アニー、僕も、ぜひ聞きたい」
 仕返しのつもりなのか、ハンスからも促される。
 アニーは腹をくくった。

「ええと、ご存じかと思いますが、ハンスはマジメンスと呼ばれるほど真面目な好青年で――」
「呼ばれていない」
 ハンスの咳払い。アニーはきょとんと目を丸くした。
「あれ、そうだっけ? まあいいや、それでですね、とにかく融通が利かないというかお堅いというか……冗談は通じないし女の人の前だと緊張しちゃうし、あ、それに服を武器屋に買いに行っちゃうぐらい――」
「――どうぞ、です」
 大きな声を出して、フィズが角砂糖の入ったポットを交換していった。どうやら、助け船だ。
 はた、とアニーは我に返る。視線が痛い。
「えっとー、あ、そうそう、すごく優しいんですよ。ちゃんと男の子っていうか。ケガしたときにはおんぶしてくれたりして」
「そ、その話はいまわざわざすることじゃないだろう」
 なぜかハンスが遮った。アニーは唇を尖らせる。
「いましなくていつするの」
「それは、そうだが」
 せっかくがんばったのに、どうやら彼の意には沿わなかったようだ。なんだか面倒になって、アニーはちょっと考えた末、
「ぜんぶが大好きです」
 ほとんど投げやりに告げた。いい笑顔のオプション付き。
 ハンスのため息が聞こえてくる。む、っと頬を膨らませた。

「――ハンスがビシッとキチッとしないからこんなことになってるんでしょー。もっとちゃんとしてよ」
「――君こそ、自分の立場がわかっているのか? 持ち上げるつもりなら持ち上げて……」
「だって、ウソいうわけにもいかないじゃん」
「時と場合によるだろう! ――というか、ウソじゃなきゃ僕に褒めるところはないのか?」
 ひそひそとバトルを繰り広げる。
 声を潜めているつもりなのだが、丸聞こえなのか、レシティアが大きく息をついた。
「……一つ、お願いが。ハンスさん、アニーさんに、口づけしていただけます? いま、ここで」
「ええっ」
「な――ッ」
 これには、アニーもハンスも慌てた。まさかそこまではしないだろうと、アニーはとっさにハンスを見る。
 ハンスは顔を真っ赤にして、首を左右に振った。
「そ、それは、できません!」
 猛否定、猛お断り。アニーはほっと胸をなで下ろす。向こうのテーブルから「ちっ」と舌打ちが聞こえた気がしたが、気にしない。

 怒りを隠そうともせず、レシティアはびしりと紙幣をテーブルに置いた。
「もう、いいですわ」
 憤然と立ち上がる。
「充分わかりました。これだけ目の前で大好きオーラを出されたのでは、わたくしの入る余地はありませんわね。せいぜいいちゃいちゃなさってください。――わたくしはスッパリあきらめます」
 では、と一礼して、背筋をピンと伸ばして、スタスタと出て行ってしまった。


 いったい、どこをどう見たら「大好き」や「いちゃいちゃ」という表現が出てくるのか――釈然としない思いで、それでもアニーはちゃっかり紙幣を確認した。
「おお……!」
 思わず一枚を懐に入れそうになる。
「まあ、とりあえず、あきらめてくれたみたいで良かったよね。どうなるかヒヤヒヤだったけど、めでたしめでたし、だね!」
 晴れ晴れしい気持ちで隣を見ると、ハンスはまだ真っ赤な顔をしていた。
 アニーは目をまたたかせる。
「……なんでまだ赤いの? キス、免れたよ? したかった?」
「な、なにを……! だいたい君がちゃんとやっていれば、あんなこと――!」
「ちゃんとやったから無事に終わったんじゃん! まずありがとう、でしょー!」
 そして、いつものやりとりが始まってしまった。


 

「――もっとおもしろい展開を期待したんだけどなあ」
 デザートセットを口に運びながら、つまらなそうにリーズがつぶやく。
「もう一押し、欲しかったねえ」
「あのお嬢様呼び止めて、もっとガンバッテっていってみる~?」
 カイルとジェリアが好き勝手にいう。
「いざとなったらオレがハンスのために、『ダーリィン☆』って飛び出すというドデカい計画があったんだがな」
「ああ、そっちの方がおもしろかったかもね」
 恐ろしいキルベルトの提案にリーズが乗っかって、
「おまえら、ハンスの人権無視かよ……」
 人として、とりあえずビュウはつっこんでおいた。

「まあ、あっさり帰っちゃうお嬢様の気持ちも分かるけどね」 
 本人以外には筒抜けなハンスの思いに、リーズは苦笑した。
 





────────────
なんとなく仲良さげな二人が書きたかったのです。
仲良し、だけど恋人未満、な。
ゲーム内でも、二人の仲良しっぷりは見ていて微笑ましいです。アニーはだれとでも仲良しな感がありますが……でもそれがアニーだッ!


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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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