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『純白ドレス』

瀬名さまからいただいたネタで、純白ドレス──もちろん、ウェディングなアレのネタです。
自分で考えたネタより、いただいたネタの方が確実にやる気が出ます。
なんか、妄想点が刺激されるというか(妄想点って何だ。

瀬名さま、悶えネタをありがとうございました!






*****





『純白ドレス』


 どうぞー、といつもの声が返ってきて、ハンスはアトリエの戸を開けた。
 開けた状態で数秒停止、そのまま閉めようかと本気で思った。
 アトリエ内にいたのは、いつもの帽子にマント姿の少女ではなく――
「どうどう? キレイ?」
 ――純白のウェディングドレスに身を包んだ、アニーだった。


「あ、ああ」
 なんと間抜けな返答だろうと思いつつも、そんな相づちしか出てこない。
 事実、アニーは綺麗だった。
 普段の少年然とした姿からは想像しがたい、少女というよりも女性的で、まるで知らない誰かのようだ。
 白い生地には花の刺繍とビーズが散りばめられ、長い裾は床に広がっている。ヴェールさえついていれば、そのまま教会に立っていても違和感がないぐらいの。
 教会、という考えに、ハンスは我に返った。
 さすがに、それはない。

「なぜ、そんな姿なんだ? それは、その……ウェディングドレスというやつだろう」
「そう、女の子の憧れ、ウェディングドレス!」
 アニーは誇らしげに胸を張った。裾をつまみ上げ、くるりと回る。
「実は、あたし、結婚するの」
「――――ッ」
 ハンスは絶句した。
 目を見開き、ついでに口も開ける。
 リアクションが出てこない。
 さすがにそれはない、と思ったばかりだというのに、本人の口から出たとなると別だった。まさかまさか、いつの間にそんなことに、相手は一体──……まさかぺぺっ? と混乱し放題だ。
「え、まさか信じたの?」
 ハンスの体内に、時間の流れが戻ってきた。
 冷たい汗を背中に感じながら、首を左右に振る。
「まさか」
 平静を装って否定した。

 だよねー、とアニーは笑って、裾を整えるようにしてまっすぐに立った。
 正面からハンスを見る。
 両手をそっと前で重ねて、ポーズを取った。
「ねえ、どう? どこか、おかしいところとかある?」
 そういわれても、なんといえばいいのかわからない。
 思わず、見とれてしまった。
 自分よりも年下で、まだまだ幼いと思っていたのに、いつの間にこれほどになったのだろう。純白のドレスに、美しく映えるほどに。
「ハンス?」
 ハンスは慌てて目を逸らす。
「……僕に、聞くのか?」
「あー、そうだよね、ハンスだもんね。ゴメンゴメン」
 認められるのも癪だったが、かといって期待されても困る。
 服のセンスに自信がないことは、アニーだって知っているはずだ。

「見た目の違和感、ということならば、特に何も。素晴らしいドレスだと思う」
 咳払いをして、当たり障りのないことをいう。
 アニーが頬を膨らませ、ずい、とハンスに詰め寄った。
「素直に、綺麗だかわいいウツクシイ、っていってくれていいのに」
「な、なにを馬鹿な」
 寄られた分だけ、うしろに下がる。そもそも直視できず、ハンスは両手でアニーを制した。
 綺麗なのは、もちろんだ。
 かわいい美しい、などと、わざわざいうまでもない。
 ついでに、もしここが教会で、隣に立っているのが──などと想像してしまったことなど、口が裂けてもいえない。

「そ、それで、どうしてウェディングドレスなんだ」
 できるだけ自然に話題を変える。アニーはあっさりと乗ってきた。
「依頼だよ、今度結婚するって人の。あたしと背格好がほとんど一緒だから、あたしのサイズで作ってるの」
 ハンスは、目をまたたかせた。アニーの着こなすドレスを、まじまじと見る。
「ということはまさか、それは、君が作ったのか?」
「うん。レシピももらったから、レシピ通りにね。錬金術師だったっていうお婆さんのレシピで、その名も『幸せの純白ドレス』。だたのドレスじゃないんだよ、イロイロ入ってるの」
 ハンスは素直に、目の前の少女を尊敬した。それは、たとえば本土の高級衣装店にあっても目を引くぐらいの、見事なドレスだった。レシピ通りとはいえ、なかなか作れるものではないだろう。
「うん、素晴らしい。よく、できてる」
 心から、つぶやく。アニーは目を輝かせた。
「ほんと? ハンスの意見っていうのが気になるけど、でもよかった。もうこれで、ほとんど完成なんだ」
「……悪かったな、僕の意見で」
 ハンスは息をついた。
 ともかく、どうやら彼女は忙しそうだ。怒ったフリをして、そのまま帰ろうかときびすを返す。
「ちょっとした用があったんだが、出直そう。明日はここにいるか?」
「あ、うん。──あああ、あの、ハンス!」
 明らかに慌てた様子で、呼び止められた。
 意を決したような、声。
 振り向いて、驚いた。アニーは、頬を真っ赤に染めていた。

「な、何だ?」
 純白のドレスに身を包み、アトリエとはいえ二人きりで──この状況。
 否応なく、何かをほんのりと期待してしまいながら、ハンスは促す。
 アニーはうつむいた。
「あのね……いまからすっごく恥ずかしいこというけど、恥ずかしいってわかってていうんだからね? 怒ったりしないでね?」
 奇妙な前置き。
 ハンスはしっかりと向き直り、ごくりと生唾を飲み込む。
「あ、ああ、わかった」
 一体、何をいおうというのか。
「えっとね」
 アニーは、ぐるりと背を向けた。
 首元に、大きなリボンと、複数のボタン。
「自分じゃはずせないから、お願いしていい?」

 ハンスのなかで、時間が止まった。
 期待した何かではなかったものの、それはハンスの許容量をはるかに超えた要求だった。
 背中の、リボンとボタンを、はずす──ぐるぐると脳内が渦を巻く。沸騰できるものなら沸騰しそうだ。
「で、できるわけないだろう!」
「ほら! やっぱり怒った!」
 うしろ姿のまま、アニーが身をすくませる。
「大体、着るときはどうしたんだ」
「ぺぺにやってもらったんだよ」
「じゃあぺぺに──」
 いいかけて、気づく。この場にぺぺの姿はない。
 アニー自身、恥ずかしい、と前置きをしていた。彼女なりに考えた末の、仕方のない結論なのだろう。
 ハンスは、大きく息をついた。
 リボンをほどき、ボタンをはずす──ただそれだけ、それだけだ、と自分にいい聞かせる。
 ボタンは三つ。
 きっと、時間にして十数秒。

「……わかった」
 結局、負けてしまった。
「ありがとう、ハンスー! もう夕方には納品なのに、ぺぺったら帰ってこなくてさ。間に合わなくなるかと思ったよ」
「いいから、やるぞ」
「ん、よろしく」
 ハンスは、息を飲んだ。
 じりじりと伸ばした手が、震えている。
 しかし、やるといった以上、ここでためらうのもおかしい。白いリボンの先を掴むと、そっと引いた。
 ひどくあっけなく、ハラリと、ほどける。
 首筋が露わになり、襲いかかる熱量に目眩がした。
 あと、ボタンが三つ。
 何も考えるな──呪文のように唱えて、丸いそれに手をかける。

 バタン、と戸が開いた。
「アニー、いるかい?」
 ノックもなく入ってきたのは、メガネの機械師。
 ハンスは、そのまま固まった。いいわけも何も出てこない。
「あ、カイルー。どしたの?」
 アニーが脳天気に返事をして、カイルのメガネがキラリと光った。
「いや、ゴメンゴメン、でもそういうことはホラ、ちゃんとカギをかけてやってくれないと」
 カイルは決して動じなかった。
 しかしはっきりと、誤解をした。
「ち、違──ッ」
 ハンスが慌てて手を離す。カイルはメガネの奥の瞳を好奇心に細め、
「ところでそれって、何プレイ?」
「違うんだ──!」
 ハンスの絶叫が、響き渡った。



 翌日には、噂は町中に広がっていた。
 いわく、『ハンスがアニーにウェディングドレスをわざわざ着せて、うしろから脱がせていたらしい──』。
 ハンスを知る人間は誰一人としてそんな噂を信じなかったが、ほぼ全員がおもしろがってネタにした。
 皆が飽きるまでの数日間、ハンスはセラ島中を弁解して回ることになる──。





────────────
ハンスはどこまでも皆にいじられる方向で。
本当は、ウェディングドレス姿のアニーにもっとドキドキして欲しかったんですが、うまいこと転がってくれず、ドキドキイベント追加。背中のボタンをはずして、なんて、いったらダメよ、アニー(と私がいってもな。


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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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