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『エンゲージ』

拍手コメントにて、リクエストいただきました!! 
リクエスト、って語感にドキドキ。要するにネタ提供してくださってありがとうございます、なわけなんですが、リクエストって、リクエストって……なんか私、偉そう!?(気のせい。

次期王国付き錬金術師ED後の、二人です。
このEDって、ふつーにやってると一番見る確率が高いんじゃないかなと思います。





*****




『エンゲージ』


「呪いだ、これって呪いだよ」
 錬金釜をかき混ぜながら、アニーがぼやいた。
 その姿はまさに呪いをかける魔女のようで、ハンスは思わず一歩引く。伝達事項を伝えに来ただけなのに、まさか自分は呪われてしまうのだろうか。
「まったく、君はどこにいても変わらないな。次期王国付き錬金術師としての自覚はあるのか? 君に憧れて錬金術師を目指そうという少年少女だっているぐらいだというのに」
「この状況じゃ変わるに変われないよ! おじーちゃんったらぺぺより厳しいしさ! もうやだ、寝たい、休みたい、ゴロゴロしたい~~!」
 初めて会ったころとほとんど変わらないセリフに、ハンスは苦笑した。

 セラ島での錬金術大会を終え、本土へやってきて一年あまり。
 彼女はもう、二十一歳になるはずだが、少女らしさもそのままに、毎日愚痴をこぼしている。外見は多少変わったものの、内面の変化はほとんど感じられない。とはいえ、本当は錬金術を愛していて、楽しんでいることは明白だった。どれだけ悪態をついても、彼女がさぼることはもうない。
「で、ハンスさん。なんの用でございましょーか。なんか新しいいびりネタ?」
 手を休めることなく、アニーがそんなことを聞いていた。用件を告げようとして、それよりも呪いの内容が気になって、問いを返す。
「呪い、というのはなんだ? 近頃では、君のことを七光だなんだという人間もいないはずだが」
「それはもういいよ、いいたいやつにはいわせとけばいいんだもん」
 さらりと流される。やはり昔のままではないのだと、ハンスは内心で感心した。いや、こういうところは出会ったときから変わらないだろうか。
 次期王国付き錬金術師として期待され、迎えられたアニーを、良く思わない人間は少なくなかった。ベートゲアの孫だということ、良くも悪くも錬金術師としてのオーラが漂ってこないことが原因だった。嫌がらせも受けたのだというが、アニー本人にはへこたれた様子はない。
 
 では、呪いとはなんなのか。
 考えていると、アニーが口を開いた。
「ねえハンス、知ってる? 女性錬金術師の宿命」
「宿命?」
 それは、穏やかではない。ハンスは眉根を寄せる。
「……いや、聞いたことがないが」
「有名な女性錬金術師に共通してる事実、あたし、気づいちゃったよ。錬金術師としての腕をバリバリと上げて、没頭しているうちにね……──」
 アニーは、手を止めた。
 真剣な顔で、ハンスを見る。
 たっぷりの間を取って、わざと声を潜めるようにして、続けた。
「──……婚期を逃すんだよ」
「……は?」
 ハンスは間の抜けた声を出した。
 婚期を逃す──それはつまり、結婚できなくなってしまう、ということだろうか。
 そんなバカな、と笑い飛ばそうとして、そういえば高名な女性錬金術師は独身が多いと思い当たってしまう。その分、フォローが遅れた。
「あ! ホラ、その顔! 納得しちゃったんでしょ、いま納得したんだ! あたしってばこんなにかわいいのに、言葉を交わす男の子ってハンスぐらいだし! うわあんっ、あたしはこのまま錬金術と結婚するんだー! そんなのやだー! 玉の輿ー!」
「玉の輿って……まだ諦めてなかったのか?」
「それは冗談だけど。でもお嫁さんにはなりたい」
 アニーは唇をとがらせた。呆れて、ハンスが息を吐き出す。
「バカなこといってないで、ベートゲア師からの課題をさっさとこなさないと、婚期どころじゃないぞ。新しいいいつけを預かってきた。これだ」
「うえぇ」
 アニーが情けない顔をする。それじゃあ、とハンスはアニーに背を向けた。


 廊下を行きながら、考えた。
 婚期を逃す、というアニーの言葉。
 アニーは二十一歳。自分はもう、二十三歳になる。
「ハンスさん、午後の外回りの件ですが──」
 部下に呼び止められ、立ち止まった。
「やはり、私が行きましょうか?」
「いや、僕が行こう。ついでに用事を思い出した」
 ある決意を胸に、そう答えた。



   *



 その日、アニーはいつも通り、割り当てられた調合部屋で、資料とにらめっこしながらせわしなく動いていた。
 忙しそうな様子にちょっとためらったものの、ハンスは空いたままの扉をノックする。
「アニー」
「うわあ、また増えるの?」
 顔を見るなり、そんな声。ハンスは苦笑して、いや、と首を振った。
「今日は別件だ。先日いっていた呪いは、解けたのか?」
「──解呪の薬を調合中だよ、おあいにくさま」
 頬を膨らませ、負けじと返してくる。ハンスは笑った。その薬がいつできるのか、聞いてみたいような気もしつつ、コホン、と咳払い。
 
「アニー。実は、渡したい物があるんだが」
 後ろに隠し持っていた小さな箱を、差し出した。
 アニーはきょとんと目を丸くして、それから足早に駆け寄ってくる。ハンスの手の上の箱をまじまじと見て、確認するように顔を上げた。
「あたしに?」
「君に」
 アニーは手を伸ばした。小さな箱を、そっと受け取る。
 赤いリボンをほどいて、蓋を開けた。
 箱の中、小さなベッドに、キラキラと輝くシルバーのリング。
「わっ、ナニコレ! 綺麗! ──ハンス、これって、婚期を逃すとかいってたあたしを気遣って、わざわざ?」
 アニーの瞳が、感動のあまり潤んだ。
 え、とハンスが言葉に詰まる。違う方向に行ってしまいそうな軌道を修正しようとするものの、言葉を探しているうちにアニーは続けた。
「考えてみればあたしって、アクセサリーとか無縁だったもん──うん、もっと外見にも気をつかって、自分からもガツガツしなきゃ! 嘆いてばかりじゃだめだよね。あたし、頑張るよ、ハンス!」
 なにやらやる気に満ちていた。そのテンションには覚えがあって、ハンスは記憶を探る。
 そう──あれは確か、出会った最初の日。玉の輿に乗ってみせる、と豪語した彼女が、ちょうどこんな調子ではなかったか。
 瞳の内に炎を燃やし、キラキラと輝いて。

 ハンスは破顔した。
 アニーの手にする小箱から、リングを抜き取る。
「え、なに、くれるんじゃないの?」
「はめてやる。手を出して」
 アニーは堂々と右手を尽きだしてきた。咳払いをして、首を振る。
「……そっちじゃない」
「左手なの?」
 あっさりと、左手に変える。
 ハンスは、小さなリングを、左手の薬指に通した。
 こっそりとサイズをリサーチ済みだったそれは、アニーの指にきっちりとおさまる。
「お守りだ。これをつけてれば、婚期を逃すこともないかもな」
「え、でもここにつけてたんじゃ、逆に誰も寄りついてこないんじゃ」
「そんなことはないと思うが」
 さらりというと、ふうん、とアニーは納得した。本当に納得しているのか、そこに潜む真意に気づいているのか。
 ──恐らく前者だろうと思いつつも、四年分の想いを込めたリングを、ハンスは見やる。どうか彼女の「お守り」になってくれと、願うように。
「ところで、今夜の予定は?」
 問いかけると、アニーは満面の笑みを返してきた。
「うん、今夜はヒマ! いつものお店?」
「ああ。──じゃあ、また夜に」
 そういって、その場は別れる。
 いまはまだこのままで、共にいられればそれでいいと、小さな幸せを胸に抱いて。



 アニーが色恋に無縁となっているのが、ハンスの無意識の牽制のせいだとは、二人とも気づいていない。周囲にだだもれなハンスの恋心は、それゆえに、思い人を甘い話題から遠ざけていた。
 リングの存在によってさらにその状況に拍車がかかり──

 ──ハンスが本当に想いを告げられるのは、もう少し、先の話。





────────────
セラ島時代よりも、ほんの少しオトナなハンス君を意識しつつ。
いつまでもいちゃいちゃしていてくれればいい(笑
ED後の情報が少なくて、ごまかしつつな描写で申し訳ないです。

素敵なリクエストをありがとうございました>< しょ、精進します……!


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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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