FC2ブログ

『風邪っぴき』

ハンス君が風邪を引きます。
なんかこう……甘いシチュエーションっていったら風邪の看病だろ! とか思ったんですが、なかなか……なかなか……なんで!?(知るかっ。

二つ(treasure含め三つ)更新で、ちょっくら姿を消しそうです。また書いたらひょっこり復活します。





*****





『風邪っぴき』


「もう……ダメだ……」
 天井が揺らいでいる。頭が重い。
 声を出してもしょうがないとは知りつつも、ハンスは呻いていた。
 委員会で割り当てられている寮の一室。昼間にいることはほとんどない部屋のベッドで、敵と戦うこと数時間。
 熱、頭痛、喉の痛み――なかなかの強敵だ。
 いっそ寝てしまいたかったが、ひどくだるくてそれすらままならない。
 完全に、風邪だった。
 こんなことになった理由は明白だ。昨日、アニーについていった滝つぼで、足を滑らせたアニーをかばい、代わりに自分が水の中に落ちてしまった。
 ろくに乾かさず、そのまま帰路についた――風邪を引く可能性を、考えないでもなかったが。
「……情けない……」
 まさか本当に、熱にうなされることになるとは。

 コンコンと、控えめなノック。
 返事ができないでいると、そうっと扉が開いた。おずおずと遠慮がちに顔を出したのは、ぐるぐるめがねのダニエルだ。
「あ、ハンスさん、起きてましたか」
「ああ、すまない……まだ動けそうには」
「いえ、あの――」
 ダニエルは視線をさまよわせるようにして、いいにくそうに言葉を切った。
「……お見舞いに、アニーさんが」
「ハンス! だいじょうぶ!?」
 ダニエルがいい終えるよりも早く、アニーが飛び込んできた。なにやら大荷物を抱えて、いまにも泣きそうだ。
「ア、アニー!?」
「いらっしゃってるんですが、どうしますか……と、いおうと、思ったんですが」
 しかし、アニーはとっくに部屋に入り、勝手にイスを動かしてベッドの横に居座っていた。
「案内してくれて、ありがとね!」
 敬礼のように、びしりと礼を告げる。
 ダニエルがハンスを見た。ひどくもうしわけなさそうな顔をしている。
 いまここでなにをいってもどうしようもない――ハンスは悟り、力なく手を振った。
「ああ、ありがとう」
 としか、いいようがなかった。


「ごめんね、ハンス。あたしをかばってずぶ濡れになったから――ものすごい高熱でうなされてうなされて、一歩も歩けないし水も喉を通らないし、今夜あたりが峠のヒドイ状況だって……」
 冗談なのか本気なのか、アニーが瞳を潤ませる。
 ハンスはとりあえず寝間着然とした格好を気にして、さりげなく毛布を首もとまで引き上げた。彼女の真意を見極めようと、じぃっと観察する。
「し、死んじゃったら、どうしようぅ」
 あろうことか、ぎゅっとつぶった瞳から涙がこぼれた。
 一気に熱のことなど忘れ、ハンスが身体を起こす。
「な、泣くことはないだろう! ただの風邪だ!」
「え」
 きょとん、とアニーが目を丸くした。
 瞬きを繰り返し、また涙が落ちる。手の甲で、ぐしぐしと拭う。
「そうなの?」
「――そうだ。勝手に死の淵まで追いやらないでくれないか」
「だって、ジェリアとリーズ姉さんが」
 アニーの口から出た名前に、ハンスはすべてを悟った。
 ジェリアは昨日一緒に滝つぼへ行ったメンバーであり、委員会本部にも顔を出すはずだから、事情を知っていてもおかしくない。だがそこにリーズの名前が加わるとなると、陰謀の香りが漂う。
「なんだ、あたし、てっきり。――でも良かったよ、風邪かあ。あ、良かったってことはないよね、見るからにツラそうだし」
 アニーが胸をなで下ろす。彼女の表情から涙が消えたことにほっとして、同時に病状を思い出し、ハンスはずるずると毛布の中に戻った。
「だいじょうぶだから……その、気持ちは嬉しいが、わざわざこんなところまで来ることはない。うつったらどうするんだ」
「うん、そうだね。帰る」
 あっさりとそんな言葉が帰ってきて、ハンスは少し残念だという気になる。
 しかしすぐに思考を追い払った。
 彼女に風邪がうつって、錬金術大会にまで影響してしまったのでは、責任を感じるどころではない。風邪を引いた原因も、アニーをかばったとはいえ自分の不注意だ。

 ほんの数分だったが、アニーが来たことによるドタバタで、一気に熱が上がったような気がした。
 視界が揺らぐ。だんだんなにも考えられなくなってきて、誘惑に逆らわず、目を閉じた。
 隣にあった気配が消える。
 もうそのまま、寝てしまおうと、意識を手放しかける。

 不意に、額に冷たいものが乗せられた。
 ヒヤリとした感触。うっすらと目を開けると、アニーが布から手を離したところだった。もう寝ていると思っているのか、懸命な様子で、荷物を探っている。わざわざ持ってきたらしい薬や栄養ドリンクの類を、テーブルに並べていた。
 そうして、ハンスの隣に戻ってくる。
 帰るのではなかったのかと話しかけたいが、熱と眠気のせいで、声にならない。
「……ハンスー。ハンスさんー。お薬飲める? 寝たー?」
 小さな小さな声で、アニーが囁いた。  
 もしかしたら夢なのかもしれないと思いながら、ハンスはまどろみの中でその声を聞いた。できることなら、そのままずっと、そこにいてくれないだろうかと、儚い願い。
 アニーの手が、額の布に触れた。
「……早く、治れー!」
 ハンスは心の中で吹き出した。どうしようもない愛しさが溢れ、手を伸ばす。
 
 アニーの手を掴んで、引き寄せた。
 不意打ちだったのか、アニーはごくあっさりと倒れ込む。イテッ、とムードもなにもない声。
「アニー……」
 様々な感情を込めて、名を呼ぶ。
 とぎれそうな意識の中で、続きを告げた。
 愛しいぬくもりをつなぎ止めるように、ぎゅっと、抱きしめる。
「ハ、ハンス?」
 とまどったようなアニーの声。
 しかし答えずに、ハンスはいっそう腕に力を込めた。



 ──目が覚めたのは、夜だった。
 ハンスは、現状把握に数分を要した。
 アニーが、眠っていた。自分の腕の中で。
 とはいえ、ハンスは毛布にくるまっているものの、アニーはイスに座った状態で上半身だけをベッドに預けている。もちろん、何かを羽織っているというわけでもなく。
「むにゃむにゃ……」
 眠る横顔が、熱を帯びている。
 正確には、発熱していた。
「────!」
 自分の風邪のことなどどこかに吹っ飛んだ。ハンスは慌てて起きあがると、急いで外套を羽織る。アニーにもコートをかぶせ、抱きかかえようかどうしようか迷ったすえ、どうにかして負ぶった。そのまま、アトリエへ直行。


 しっかり風邪がうつってしまったらしいアニーは、ぺぺの看病のもと、丸一日寝込んだ。
 ハンスの見舞いに行ったときのことはまったくもって覚えていないらしい。ハンスは心から胸をなで下ろす──が、少し残念だとも思う。
 とはいえ、見舞いに行ったまま半日帰ってこず、しかも風邪がうつったという事実により、ハンスはリーズとジェリアから長期にわたってからかわれることになる──

 





────────────
こ、これがスランプと……第二弾。
いっそ甘々なのにも挑戦してみたいと思いつつ、きっと無理だなとも思う。
う~~にゅ。

ハンスが暮らしてるの寮ってことにしちゃいましたが、実際はどうなのでしょう。書こうと思うと、知らないこと目白押しです。


  TOP


Menu

  はじめに
  SS
  LONG
  頂き物
  小ネタ・バトン
  拍手レス・雑記



Gust

   ガストゲームズサポーターズリンク「マナケミア・アルトネリコ2」公式サイトはこちらへ!

Rank etc

   アトリエサーチ!
   (GC)GAMEHA.COM - ゲーム派ドットコム


Profile

  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

  本家オジリナル小説サイト↓↓
  『光太朗小説処』へ


Links


→ Reset