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『オシャレ心』

アニーはちゃんとかわいい女の子なのに!
という気持ちだったんですが、甘くはなく、なんかガチャガチャした感じのSSです。




*****





『オシャレ心』


「異議あり!」
 アニーは、ドンとグラスを置き、据わった目でいい放った。レストランの客が、何事かとアニーを見る。
 向かい側でランチの皿をつついていたリーズは、思わずグラスの中身を確認した。まさか酒だったのではと、イヤな予感が脳裏をよぎったのだ。しかし、それは注文したとおりのパインジュースだった。
「どうしたの。なにかあったの」
 やや気圧されながらも、聞いてみる。アニーは頬を膨らませ、身を乗り出してきた。
「聞いてよ、リーズ姉さん! あたしの扱いって、絶対悪いと思う! 相談する相手が間違ってるとは思うけど、聞いて!」
「ちょっと聞き捨てならないフレーズがあったけど」
 リーズはわざと剣呑に目を光らせる。あはは冗談、とごまかすアニーに苦笑した。

「アニーってば、ちゃんとみんなからかわいがられてるじゃないの。扱い悪いなんて、思ったことないよ?」
 ちょっと考えてみても思い当たらなかったので、リーズがフォローというわけでもなくそういうと、アニーは唇をとがらせた。
「たとえば、カイルだよ。無類の女好き~、みたいなこといって、あたしは完全に範疇外でしょ。――あ、もちろん、口説かれたいとかそういうんじゃないんだよ。そのへんの微妙な女心はちゃんとわかって欲しいんだけど」
「あ~……うん」
 それは素直にわかる気がしたので、リーズはうなずくしかなかった。続く言葉は想像できたが、促す。
「それで?」
「それに、キルベルト。誰に対してもそうなんだろうけど、ふつう女の子のベッドで勝手に寝たりするー? レディとして優遇してくれてたらさ、まずしないと思うんだよね」
「まあ、ねえ……」
 それについては個人的に思うところはあったものの、ここでいうこともないかと、リーズは言葉を濁した。
 アニーはパインジュースの残りをのどに流し込み、勢いよく続ける。
「で、ハンスだよ! 女の子苦手とかいいながら、あたしだけ平気とかっておかしいよ! 男の子みたいとかって、そりゃよくいわれるけど……でも納得いかなぁあい!」
 もしかしたらこの子はパインジュースで酔うんだろうか――ありもしない可能性を考えてしまうほど、今日のアニーはアツかった。どうしたものかと、リーズは思案する。言葉を並べてアニーのフォローをするのはたやすいが、それではおもしろくないという気もする。
「食後のあさつゆティー、です」
 そつなくフィズがカップを運んできた。ありがとう、と受け取り、リーズはフィズに目を留める。
 まじまじと、頭の先から足の先まで、じっくり観察した。
「な、なによ!」
「どしたの、リーズ姉さん?」
 フィズが頬を染め、アニーがきょとんと首を傾げる。
 リーズは瞳を輝かせ、指を鳴らした。
「これよ!」


   *

 
 そろそろ昼休憩にしようかと顔を上げた先に、見慣れぬ姿の見慣れた少女がいて、ハンスは目を見開いた。
 そのまま、数秒間停止する。
 本部の入り口で、きょろきょろと様子をうかがっている、あまり背の高くない少女。
 オレンジのカチューシャに、ミニスカートのワンピース。華奢な体躯を露わに、好奇心にあふれた大きな目をさまよわせている。

「アニー!」
 思ったよりも大きな声になって、ハンスは慌てて咳払いをした。失礼、と周りに告げ、平静を装いながらも、早足でアニーの元へ向かう。
「あ、いたいた、ハーンス!」
 邪気のない顔で、にこにこと笑っているアニー。
 それは、客観的に見てもかわいらしい少女そのもので、ハンスは行動を決めかね、固まってしまった。
 スカートが短い。
 こちらを見ている。
 なにやら、キラキラしている。

 たっぷり数秒の沈黙の後、ため息とともに頭を抱えた。
「――ちょっとこっちへ来い」
「え、あれ? ふつうだね。っかしいな~」
 なにやらごにょごにょと聞こえてきたが取り合わず、細い腕をつかんで本部を出る。


 できるだけ人気のない路地に入ると、手を離した。改めてアニーの姿を見て、深々と息を吐き出す。
「どういうことだ、その格好は……」
 怒りのような何かが、声ににじみ出る。
 どうやら風向きが悪そうだと察したらしいアニーが、ばつが悪そうに頬をかいた。
「ちょっとしたオシャレ心だよ。えーと、そんな深い意味はないんだけど……なんでそんな怒ってるの?」
「怒ってはいない」
「怒ってるじゃんっ」
 アニーが唇をとがらせる。勘弁してくれ、と思いながらも、ハンスはうまく言葉にすることができない。
 それにしてもどうして急に、オシャレ心とやらに目覚めたのだろうか――考えたくないことまで考えて、ハンスは気が滅入っていくのを感じた。まさか、着飾った姿を見せたい相手ができた、とか。

「ハンスがあたしにだけ緊張しないでしょ? それが癪だって話してたら、リーズ姉さんの提案でね、フィズが服貸してくれたの。できるだけ女の子らしくなるように、みんなでいろいろ合わせてみてさ。――そんな怒るぐらい、変?」
 拍子抜けして、ハンスは言葉を失ってしまった。
 まさか、そんな理由で。
 アニーがスカートの裾をつかんで、なにかを期待するように上目遣いを披露してくる。ともすれば前のめりになりそうなのをこらえ、目を逸らした。
「……へ、変ではないが……くだらないことをしているヒマがあったら、錬金術の修行をしたらどうだ。その……そ、そんな短いスカートでは、風紀が乱れるだろう」
「えーっ、ふつうじゃん。ジェリアとかの方がよっぽどだよ」
 それはそのとおりだったので、ハンスは反論できない。短いといっても、一般的なミニスカートの範疇だ。露出しすぎというほどでもない。
 が、普段の少年然とした姿とのギャップがあまりに大きくて、明るい色のワンピースは、アニーを必要以上に女性的に見せていた。
 意識してしまっては目のやり場に困り、ハンスは瞳を伏せる。ええと、と話題を探した。

「――とにかく。早くフィズに返して、いつもの服に着替えるんだ」
 結局、そこにいきついた。アニーは納得がいかないのか、無言で抗議してくる。自分でも理由不足だという自覚があるが、ハンスにはちょうどいい口実を探すほどの余裕がなかった。
 本当は、自分でもよくわからないのだ。
 着飾ったアニーを、単純にかわいいと思う。
 けれど、彼女がかわいいということなど、ハンスにとっては新しい事実ではない。それよりも、わけのわからない焦りがつのるばかりだ。
 いつもと違う姿のアニー。
 それはハンスを、ひどく不安にさせた。
「わかったよー。ちょっと反応見てみたかっただけだし、おとなしく、着替える。ぺぺにも帽子とマント取っちゃダメっていわれてるしね」
 唇をとがらせたままだったが、アニーはそういって折れて見せた。ぷいとそっぽを向くようにして、ハンスを置いて歩いていく。
 ちょっと反応を見てみたかった──つまり、わざわざ、その姿を見せにきたということだ。ハンスは喜べばいいのか呆れればいいのか、しかし幸せだという気持ちは確かにあって、緩みそうになる頬の筋肉をなんとか制御した。

「いや……っ、――送ろう、アトリエまで」
「いいよー、無理に女の子扱いしてくれなくても」
 離れていくアニーにそう声をかけると、完全にへそを曲げてしまったのか、そんな返し。
 そうなのか? ――と、ハンスは考えた。
 確かに、普段なら送るとまではいわないかもしれない。アトリエまで行くにしても、もっと口実を練る。
 とはいえ、目の前のアニーを特別扱いしようという気もない。ただ、単純に、ほかの人間の目にさらしたくはないという、独占欲まがいの気持ちはあるものの。
 
「君に対してだけ緊張しないというが……そういうわけでも、ないぞ」
 フォローしようとして、そんな言葉を口走った。
 いってしまってから、ハッとする。捉え方によっては、きわどいセリフだったかもしれない。
「いいってば、無理しないで」
 しかし、流された。そうなるとかえってムキになって、ハンスはアニーの手を引いた。
「無理しているわけじゃない」
 胡散臭そうに目を細め、アニーがハンスをじろじろと見る。逸らしたら負けだと、ハンスはそのまま見つめ返す。
「……ドキドキ?」
 直球で、聞いてきた。
 う、とハンスは言葉に詰まる。
「ど、どきどき、かどうかはともかく――」
「だって、女の人相手だと、いつもドキドキして大変なんでしょー」
 なんだかどんどん深みにはまっているような気がしながらも、ハンスは少しだけ瞳を逸らし、意を決した。
「ど、どきどき、だ」
 どもった。
 完全にいわされたセリフだったが、アニーが嬉しそうに全開の笑顔になる。
「ほんと? やった! じゃあもうこれで悔いはない! ここに来る前にね、カイルやキルベルトも、最初あたしだって気づかないぐらいでさ――」
 ひやり、と空気が冷えた。
 ハンスは、自らが周囲の気温を下げたことを自覚した。
 自分のために着飾ったのだと――方向性は違えども、そう解釈していたのに。
 カイルやキルベルトも、という、言葉。

「……ハンス?」
 怒りを察し、完全に逃げ腰のアニー。
 しかしハンスには、取り繕ってやるつもりはなかった。
「……アトリエまで送ろう。錬金術師とはどうあるべきか、ついでに現在のリゾート開発の状況や他参加者の動向も含め、徹底的に教えてやる。今夜は眠れると思うなよ」
「え、あれー?」
 ハンスはそれ以上口を開かなかった。アニーの手をしっかりと握りしめ、静かな怒りを内に押さえつけながら、アトリエへと連行する。
「なんでぇ──?」
 泣きそうな声が聞こえてきたが、無視。


   *


 その日、深夜を通り過ぎるまで、ハンスによる説教が続いた。人としての身だしなみから始まった説教は、予告通り、錬金術師としてのあり方からリゾート開発、さらには世界情勢についてまで広がりを見せた。
 安易に帽子とマントを脱ぎ去ったことにより、ぺぺからのお怒りも加わる。

 地獄の説教一夜を過ごし、アニーは、もう二度とオシャレ心を出すものかと、固く誓ったのだった。






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……これがスランプってやつかっ、第一弾。
ぐだぐだと書いてしまいましたが載せる。ああう。

特典についてきたCDを聴きながら書いてました。ジャケットの雰囲気ちがうオシャレアニーがかわいくて!!
みんなビジュアルもキャラもいいけど声もいい。

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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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