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『お天気』

それだけかよ! というぬるーいゆるーいお話です。





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『お天気』



 すごくいいお天気。
 太陽がこっちを見てる。 
 とくにやることもないなんて、いったいいつ以来だろう。
 あたしは中央広場のベンチで、空を見上げた。
「雲……も、錬金術で作れたりして」
 そんなことをつぶやく自分にびっくりする。いつのまに、こんなに錬金術が好きになったんだろう。
 大きく伸びをして、視線を下げる。こんなにいい天気なのに、親子連れが何組かいるぐらいで、あんまり人がいない。みんな町から出て、どこかにおでかけでもしてるのかな。リゾート施設に行ってくれてるんだといいなあ。
 ……ああ、だめだ。
 あたしは首を振った。考えないって、難しい。いままではどうやって過ごしてたんだっけ。寝てたのかな。でも、寝る気分でもないしな。
 ふと、見慣れた姿が目に入った。背筋を伸ばして、まっすぐ前を見て歩いている。
「ハ──ンス──!」
 あたしは大声を出して、手を振ってみせる。ハンスはぎょっとしたようにこっちを見て、早足で近づいてきた。
「どうして君は、そう……」
 いきなり説教されそうになる。あたしは口を尖らせた。
「ハンスが見えたから、ハンスって呼んだだけじゃん。なにかマズイ?」
「あそこまで大きな声を出さなくても、聞こえるといっているんだ。何事かと思うだろう」
 ほんのり顔が赤い。広場にいたママさんたちがこっちを見て、くすくす笑っている。どうやら恥ずかしかったらしい。
「いーよー、じゃあこれからは、ハンスが見えても呼ばないから」
「そうじゃないだろう。もう少し考えてくれればいいんだ。君には、羞恥心というものがないのか?」
「あるある」
 うなずくと、なぜかハンスは疲れたようにため息をついた。あれ、なんで?
「……それで、どうしたんだ?」
 そうやって聞かれてしまうと、あたしはちょっとだけしまったなという気持ちになった。だって多分、ハンスは忙しいんだろうし。わざわざ広場の端から端まで歩かせたらいけなかったかもしれない。
「えーと……別に用はないんだよ。ごめんね、ハンスは忙しいよね。えへ」
 ちょっとかわいく笑ってごまかしてみる。ハンスは完全にスルーして、もう一度ため息をついた。
「そんなことだろうと思った。いまは休憩時間だから、問題ないが……」
「あれ、でもどこかに行くところだったんでしょ?」
「……君のアトリエに行くところだったんだ」
 ハンスは少しだけ目を逸らした。変なの。
「じゃあ、ちょうどよかったじゃん。ここ座りなよ」
 あたしは、ベンチの端に移動する。ちゃんとハンスが座れるように。
 でも、ハンスが固まってしまった。それから、なんだか居心地が悪そうに、視線をさまよわせる。
「あたしじゃなくて、ペペに用だったとか?」
 だから、のんびり座ってる場合じゃないのかも。でもそういうわけじゃなかったようで、ハンスは首を動かした。
「いや、その……特に用はないんだが」
「ええ? ナニソレ?」
「君だって用もないのに呼んだんだろう! お互いさまだ」
 ああ、そっか。確かに。
「では、失礼する」
 座るだけなのに、わざわざそんなことをいう。あたしのとなり、ほんの少しの隙間を空けて、ハンスが座った。
 なんか、変なの。
 くすぐったい感じ。
「いい天気だよねえ」
「そ、そんなことより、錬金術の修行は進んでいるのか? リゾート開発は? こんなところで油を売っている時間なんてないんじゃないのか」
「あー、それがねー」
 あたしは、空を流れる雲を目で追いながら、ぼんやりと答える。
「なんか最近がんばり過ぎちゃって、いまんとこやることないなってぐらいなんだよー。でも、あたしはまだまだやりたいし、今日も朝から施設に行こうと思ってたんだけどね。ペペが、そんながむしゃらになってたら見えるもんも見えなくなるとかなんとか……えーと、とにかく一日錬金術からもリゾート開発からも離れて、ゆっくり休むのが大事だとかいうからさ。こうやってぼーっとしてるんだよ。だから今日は、お説教もなしだよ」
 ハンスが黙った。しばらくしてから、
「そ、そうか」
 とだけ、つぶやく。
 なんだか、なんともいえない沈黙が流れた。
 ハンスってば、しゃべらない。
 なんでかな。
 あたしはわざと黙って、ハンスが何かを言い出すのを待ってみる。
 でも、話しかけてこない。
 となりにいるだけなのに、なんとなく心地いい感じ。
 でも、ハンスがしゃべらないのは、もしかして……
「ハンスってさ」
「な、なな、なんだ?」
 まさか寝てたのってぐらい、ハンスが飛び上がって驚く。
「……ハンスってさ、もしかして、あたしにお説教しないとなると、他に話すことない?」
 ハンスが目を見開いた。
 図星?
「そ、そんなわけ、ないだろう」
 ごほんと咳払いする。
 ……えー。
「怪しい」
「君は、僕をなんだと思っているんだ。大体、いつも説教ばかりしているというわけじゃ……」
「お説教ばっかじゃん」
「それは君が説教されるようなことをするからだろう!」
「あ、いまのもお説教」
「…………!」
 ハンスはゆっくりと息を吸って、吐き出した。深呼吸?
 あたしはなんだかおもしろくなってきて、黙って待つ。次はなんていうかな。
「……レストランの」
「うん?」
「近くに」
「うん」
 相づちをうっていると、ハンスがちらりとこちらを見た。おもしろがってるの、ばれちゃったかな。
「……おいしいアイスクリーム屋ができたらしい。暇なら、食べに行かないか?」
「アイス! 行く行く!」
 あたしはすぐに立ち上がった。噂で聞いたことがある、すごくおいしいアイスクリーム屋だって。行きたいと思ってたんだ。
「あ……」
 立ち上がってしまってから、少しだけ残念な気持ちになる。思わず声に出すと、ハンスが怪訝そうな顔をした。
「どうかしたのか?」
 改めて聞かれると、ちょっと恥ずかしい。けど。
「このまま、二人で並んで座ってるのも、捨てがたかったかなーと思って」
「な……!」
 ハンスは一気に顔を赤くした。え、なに、怒った?
「どうして君は、そういうことを……!」
「えー、なんでまたお説教なの? あたし悪いことしてないじゃん!」
 ひどい、納得いかない。ハンスは説教しすぎだ。ぜったい、あたしを怒るクセがついてるんだ。
「……いいからさっさと行くぞ! 人気どころはすぐに売り切れるらしいから、急いだ方がいい」
「そういうことは先にいってよ! じゃあ、よーいドンで行こう」
「走ることはないだろう!」
「よーい、ドン!」
 あたしは走り出した。後ろから、ハンスも走ってくる。
「待て、アニー! だいたい君は……」
 やっぱり聞こえてくるお説教。
 あたしはスピードを上げて、ぐんぐんハンスを引き離す。角を曲がったところで待ち伏せして、あとから来たハンスを驚かしたら、やっぱり怒られるだろうな──そんなことを考えながら。
 とても楽しい、お天気の一日。
 
 



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なんて久しぶり!
アニー目線は新鮮です。


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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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