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『くず木シンドローム』

DSアトリエwebアンソロ参加作、そのさん。
『リーナのアトリエ』リュオ→リナです。

提出した3つを、確か1日かそこらでががっと書いたのですが、その中でいちばんノリノリで書きました。
ここまでふざけ倒したら怒られたりしないかな、とか実はちょっとびくびくしてました。




*****





『くず木シンドローム』


 リュオンはリーナが心配だった。
 そもそも、犯人でもなんでもない妖精の森火災事件に、なかば責任を取る形で関わって数ヶ月──リーナは行商に駆け回り、それと同時に、ほとんど毎日森に通っている。
 くず木を採取するためだ。
 確かに、復興にはくず木が必要だ。とはいえ、リーナ一人に要求されたくず木は全部で700個。
 あの長老の頭をトンカチで殴ってやりたいと、リュオンは本気でそう思ったものだ。
 それを実行しないのは、一重に彼女がけなげに頑張っているからで……リュオンにしてみれば、おまえが笑っているならそれでいい、という心境なわけなのだが。
 最近では、それすらも、怪しくなってきた。
 話しかけても、生返事ばかりするリーナ。足元もおぼつかず、体調を崩しているのは一目瞭然だ。
 リュオンは、両手一杯のどんぐりと、照れ隠しのキノコ類を抱え、アトリエの前に立った。
 ちょっとは休め──それだけでも言えれば成功だ。本当は、オレはおまえが笑っているならそれで、的なことが言いたいがそれは多分無理。
「おい、入るぞ」
 ノックもせず、ドアを開ける。
 そこにいたリーナは、くず木を抱え、緩慢な動作で振り返った。
 のほほん、とした笑顔。
「あれ、いらっしゃい、くず木さんー」
「…………っ!?」
 明らかに、目がイっていた。



   *



「ふむ……これは、くず木シンドロームじゃな」
 アトリエにやってきた長老は、もっともらしい顔でひげをさすった。
「過度のストレスのために、そのとき囚われていたもののことしか考えられなくなる、という病じゃ。いまのリーナには、ほとんどなにもかもがくず木に見えていることじゃろう。これは厄介じゃのう」
「だれのせいだ、だれの……!」
 のんびりと、まるで他人事のように言う長老の首を締め上げる。死ぬ、とつぶやかれ──正直なところ望むところだったが──それでもリュオンは手を離した。もし妖精族の技で治せるというのなら、頼むしかないのだ。
「困りましたね……どうにかして、治せないものでしょうか? いままでいろんな町へ行き、様々な病の噂も聞きましたが、こんな症状は初めてです」
 ちょうどリーナに会いに訪れたジェラールが、眼鏡を曇らせる。それに便乗してやってきたというキースは、心から状況を楽しんでいるようで、リーナの前で色々なポーズをとっていた。
「ほい、これは?」
「くず木さんっ」
「じゃ、これは?」
「えーと、変な格好のくず木さん」
「よし、それなら、これでどうだ!」
「わわ、くず木さんの抱っこだ!」
 どさくさに紛れてリーナを抱き上げる。リュオンはトンカチの柄でキースの後頭部を強打した。つっこむ言葉もない。
「錬金術の薬とかで、どうにかなんねえのかよ。どう考えたってあんたら妖精のせいだろ」
「これは耳が痛いのう」
 たいして痛くもなさそうに、長老が窓の外を眺めた。
「一刻も早くくず木が集まり、森が復興すれば、リーナも病から解放されるかと思うんじゃがのう……」
「てめえ、たいがいにしとけよ……!」
 殺意が湧く。
 しかし、病にかかった当人は、のんびりとテーブルに茶を用意していった。チョコラットも並べ、どうぞ、と笑う。
「くず木さんたちのお口に合うかどうかわからないけど……よかったら。えへへ、こんなにたくさんのくず木さんが遊びに来てくれるなんて、嬉しいな」
 その健気さに、リュオンの目頭が熱くなった。彼女の目には、くず木があれこれ言い争っているように見えるのだろうかと一瞬考えるが、あえて考えないことにする。
「ありがとうございます、リーナさん。いただきます」
 ジェラールが微笑み、さりげなく長老の前のチョコラットから手を付ける。彼なりに頭にきているのかもしれない。
「詳しいことはわかんないけど、そこの小さいおじーちゃんのいってることももっともだよね? くず木700個、っていうノルマがリーナちゃんの負担だったなら、それをクリアしちゃえばいいんじゃないの」
 キースが椅子の上にあぐらをかき、茶に口を付けた。なんとなく彼からは言われたくなかった正論に、リュオンは眉根を寄せる。
「じゃあ、残りのくず木、アンタが取ってくるのかよ」
「いいよ、それぐらい。リーナちゃんのためだからね、おやすいご用さ」
「…………っ」
 さらりと言われてしまえば、余計に対抗意識が湧き起こった。
「あいつがどれだけ苦労してたかも知らねえで、軽々しくいうんじゃねえよ! オレが取ってきてやる、部外者は引っ込んでろ!」
「リュオンくん、そんないいかたはないでしょう。リーナさんを心配する気持ちは、みんな同じです」
 ぴしりとたしなめられ、リュオンは言葉に詰まった。なぜだか子ども扱いされているようで、かっと頭に血が上る。
「おい、長老!」
 怒りのままに、長老の胸ぐらを掴んだ。
「ぼ、暴力反対ー」
「うるせえ! くず木、残りいくつだ!」
「残りは……400じゃな。まだまだじゃ」
 その言いようがまた癪に障った。リュオンは突き飛ばすようにして長老から手を離し、アトリエを飛び出す。
「すぐに集めてきてやるからな! 待ってろよ!」
 残された面々が顔を見合わせ、
「くず木さん、どこ行くの?」
 リーナがごく真剣な顔でつぶやいた。




 何度かリーナに付き合ったことのあるリュオンは、くず木集めには慣れていた。どこにあるのかもわかっている。どうすれば効率が良いのかも。
 しかし、日が暮れるまで集め続け、早くも限界を感じ始めていた。
 数える気にもならない、集めに集めたくず木の山。これを、どうやって妖精の村まで持って帰れば良いのか。見ているだけで、うんざりだ。
「そりゃ、病気にもなるわな」
 リーナの、屈託のない笑顔が脳裏に蘇る。リュー、と呼ぶあの甘い声。
 ここで踏ん張らなければ、いつまでたっても「くず木A」のままだ。その事態は、なんとしても回避しなければならない。
 彼女の笑顔が見たかった。
 願わくば、自分だけに向けられた、眩しいばかりの笑顔が。
「おやおや、頑張ってますね」
「お、やってるやってる。ひとりで頑張っちゃって、そんなにイイトコ見せたいの?」
 そのうちに、大型の馬車を連れて、ジェラールとキースがやってきた。
「……何のようだよ」
 思わず唇を尖らせる。二人は肩をすくめた。
「手伝いにきたに決まってるよ。ボクは、リーナちゃんにイイトコ見せたいからね」
「数の把握と、馬車への積載は任せてください。一刻も早く400個集めて、リーナさんを治して差し上げましょう」
 それが、悪意でないことはわかった。リュオンと同じ気持ちだということも。 
 だからこそ、素直になれない部分がある。それでもリュオンは、そっぽを向いて、おお、とうなずいた。
「がんばろうぜ」
 そうして、それから何日も、彼らは森に泊まり込み──

 ──やがて、念願のくず木400個を手に入れた。



    *



「リーナ!」
 森から帰ったその足で、リュオンはアトリエに飛び込んだ。村につくやいなやいてもたってもいられなくなり、馬車から飛び降りたのだ。
「あれ、くず木さんだー」
 リーナはベッドに横になっていた。彼らが採取に出かけている間、噂を聞きつけたファラが医者を呼び、寝ていることを義務づけられたらしい。いまではリーナしかいないアトリエのベッドに駆け寄り、顔色の悪い幼なじみをじっと見る。
 手を伸ばそうとして、慌ててズボンで拭った。それからもう一度手を持ち上げるが、今度は勇気がない。結局、自分の後頭部をがりがりとかき、見つめ返してくるリーナから目を逸らした。
「その……集まったぜ、くず木。これでもう、おまえがくず木のことを考える必要はねえよ。あとは、オレの仕事だからな」
 リーナが、目をぱちくりとまたたかせた。しかし、声は出ない。
 そっぽを向いていたリュオンだったが、だんだんと不安になってきた。リーナは、ゆっくりと上半身を起こし、なおもこちらを見つめてきている。
「だから、安心しろよ。おまえは、もうちょっと休んどけ」
 投げるようにして、言葉を告げる。ちらりとリーナを見ると、彼女の頬がみるみるうちに生気を取り戻していくのがわかった。紅潮した顔で、目を見開く。
「リュー、それ、本当?」
 返された言葉に、耳を疑った。
 リュー、と呼ばれたのだ。
 いったい何日ぶりだろう。
「そ、そんな嘘いうかよ! 本当に決まって……」
「ありがとう、リュー! すごいすごい! リュー、すごいよ!」
「うおっっ」
 あろうことか、リーナは飛び上がるようにしてリュオンに抱きついた。そのまま、ぎゅっと胸元に顔を押しつける。
「ちょ、お、オレ、帰ってきたばっかで服とか汚い……」
「リュー、大好きー!」
 しかし、さらに力を込められる。リュオンはもはやどうすればいいのかわからず、頭が沸騰しそうだ。
「あ、いいなー! リーナちゃん、ボクにもやってよ、それ! ボクらも一緒に頑張ったんだからさ」
「いいですね、ぜひやってもらいましょうか」
 本気とも冗談ともつかないことをいいながら、キースとジェラールがアトリエに入ってくる。リュオンは力任せにリーナをふりほどき、思い切り咳き込んだ。
「ば、バカいうな!」
 ごまかしにもならない言葉が漏れる。生温かい目線を感じたが、無視を決め込んだ。
「ジェラールさん、それにキースも……あたし、自分が恥ずかしい。なんだか、くず木のことしか考えられなくなって、みんなにも迷惑かけて……」
「いいよいいよ、そんなこと。それより今度デートしてよ」
「デートは無理だけど、なにかお返しするね」
 そのやりとりに、リュオンは思わずにやりとする。しかし、本当のところは、それどころではなかった。
 いいたい言葉があったのだ。
 こんな状況で言う言葉ではないが、いまでなければ効果がないような気がした。
 リーナが治った、まさにこのときに。
 ありがとうといわれた、この瞬間に。
 おまえが笑っているなら、それで……──
「いいんですよ、リーナさん。あなたが笑っていてくれるなら、それが一番です」
「そうそう、リーナちゃんは笑顔じゃなくっちゃね。元気になってよかった!」
「そんな……! ありがとう、二人とも」
 リーナが顔を赤らめる。嬉しそうに、うつむいて。
「…………っ」
 わなわなと震えるリュオンに、悪気があるのかないのか、ジェラールが眼鏡を光らせた。
「リュオンくんからも、なにか一言ないんですか?」
「あるかっ! 一生くず木の夢でも見てろバーカ!」
 どうしようもない言葉を投げて、リュオンはアトリエをあとにした。




 その後、リーナが植物栄養剤シンドロームにかかり、もう一悶着あったとかなかったとか──それはまた、別の話。








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もはや甘さのカケラもないという。
たぶん私は長老が大好きなんだと思います。



 
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