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treasure『ペペの日常』

伽砂杜ともみさまにいただきました。

ずいぶん前にいただいたものなので、先に伽砂杜さまのサイトで見た方多数なのではと思いつつ>< 遅くなってしまって申し訳ないです!!





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『ペペの日常』 BY 伽砂杜ともみ



「アニー、いるか?」
「いないぞ」

 口を一文字にむすび、いつもよりかはほどほどに緊張感ただようキルベルトが、アトリエへと、我が家であるかのように平気で侵入してくる。
 アニーの錬金釜から出来上がったばかりのチョコラットを出し、ペペはいつも通り答えた。
 いつもの通りであれば、そうかと残念そうに答え、お茶を飲んでから出て行くのだが、今回ばかりは何かが違うのだろう、悔しそうに歯噛みし、下にたらしている両手は、堅くにぎりしめられていた。

「なんだ。大事な用事だったのか?」
「ペペ。アニーは、どこに行ったんだ?」
「あーっと。洋菓子店の依頼品を届けに行って。その後、動物見つけたとかで、様子見に行くとか言ってたぞ。しばらくは戻ってこないな」
「その、誰と行くとか……言ってなかったか?」

 とてつもなく真剣なまなざしに、ペペは眉をひそめる。
 あのキルベルトが――出来たてチョコラットに手をのばしてはいたが――かくも真面目な顔で問いかけてくるなど、なかなか見られない。
 アニーが、何か問題でも起こしたとでも言うのか。
 知らない所で。いや、ありうるか。とペペの心に、アニー=説教とインプットされかけたが、キルベルトの様子も気になった。

「今回は一人で行くとかで、荷物抱えて出てったぞ」
「……一人、で?」
「ああ。なんだ、何か依頼でもしたかったのか?」
「い、いや。ならいいんだ、いや、よくないか」

 ……どっちだ。と小さくつぶやいたペペだったが、キルベルトの耳には届かなかったようだ。
 だが、ひとしきりブツブツと口の中だけでつぶやいた声からは、ハンスがどうとか聞こえたが、キルベルトは、そのままアトリエを後にした。チョコラットを半分以上たいらげて。

「何しにきたんだ」

 なんだかんだで減ってしまったチョコラットに手をのばす。
 口に放り込み、じんわりと広がる甘さに、ペペは良い出来だと確信する。少しだけ調合を変えたのが、功を奏したようだった。
 と、また躊躇なく扉が開かれた。

「アニー、いる? 頼みたいことが……」
「アニーなら外出中だぞ」

 いないことなど、一目瞭然だというのに。それでも部屋のすみずみに目をやるリーズに、ペペは見た通りのことを告げる。
 あからさまにがっかりした表情を見せたリーズに、ぺぺは熱すぎる茶を、そっとすすった。

「なんだ、いないのか」
「アレか? こっそり会ってるヤツからの依頼だろ」
「な、なんのことかな~? って、なんでペペが知ってるのよ!」
「あのリーズが、アニーみたいなのに突然絡むってのが、引っかかってたんだ。だけど、そのほうがしっくりくるだろ? アニーをここに寄こしたのだって、ヤツの……」
「わー! わー! ペペ、アニーには言ってないでしょうね!」

 身振り大きく、ペペに詰め寄る。
 あきれた顔で、小さな肩をすくめた。誰に聞かれても大丈夫なような言い方にしてみたつもりだったが、それすらも秘密にしておきたかったらしい。

「まー、いいけどな。最近はアニーも錬金術に前向きだし。どんどん難題ふっかけてくれ」
「う、うん。そうね~」

 あさっての方に目を向けつつ、リーズはアトリエに来た理由を思い出したのだろう。
 ペペを少し見つめ、重い口を開いた。

「あの、さ。ハンスこなかった、よね」
「今日はまだ来てないな……また、何かしたのか」
「あははっ……ちょっとだけ、ね?」

 リーズはごまかすように、香り高いチョコラットに手をのばす。
 それを止めるわけでもなく、茶を入れようとしたが、丁重に断られた。
 尋常ではない湯気を吹き出すポットの口。煮立った湯では、すぐにアトリエを後に出来そうもなかったからだろう。

「あまり世話を焼かすなよ」
「そ、そんなんじゃない、けどさ。もしハンスが来たら……ううん、絶対来ると思うから。引き止めといて? その辺探して、また戻ってくるから」
「わかった」

 慌てて出て行くリーズの背中に、ひとつため息を吐いて。
 また少し減ってしまったチョコラットに、手をつける。
 陽は高く、外を行き交う人の楽しげな声も聞こえてくる。誰かが駆け込んでくることも、もう日常になってしまった。
 チョコラットにカゴをかぶせ、椅子から飛び降りる。

「万能薬……いや、特効薬のほうがいいのか? たしか、この辺に……」

 踏み台を使いながら、戸棚を探る。
 ノックももどかしいとばかりに、音が聞こえたと同時に扉が大きく開かれた。
 何事かと戸棚の開き戸から顔をのぞかせる前に、背中から誰かがペペを抱きしめる。

「な!? なんだ!」
「アニー! こんなに小さくなって……どうしたんだ!」

 力任せに締め付けてくる腕に、ペペは悲鳴をあげた。
 間違えようもない、その声は、いつもの生真面目な物とは違い、熱にうかされているようだった。

「オイラはペペだ! お前こそ、どーしたっ!」

 そう叫べば、すぐに腕がゆるんだ。
 咳き込みつつ振り返れば、なるほど。目の焦点が定まっていない。

「ぺぺ……ああ、ペペか」

 表情が一変した。ほがらかな物から無表情。そして申し訳ない、というモノに。

「ぺぺ、いつも話を聞いてもらって。本当にすまないと思っている」
「え。い、いや。オイラだって聞くことくらい出来るからな」
「いいや! いつだって、頼ってばかりだ! 僕は……僕はっ!!!」

 もう泣き出さんばかりのハンスの勢いに、それでもペペは冷静だった。
 白い制服が汚れるのもいとわず、崩れ落ちるように、床に膝をついたハンスは見ていられない。
 いったい、今度は何を飲ませたというのか。

「後悔してるのか? だったら、これを食べれば帳消しだ」
「……許して、くれるのか?」
「ああ」

 許すも何もあったもんじゃないが、今のハンスに何を言ってもムダだろう。
 目の前に差し出してやった物は、薬の類ではない。
 どんな薬を使ったか、検討もつかないときには、パンチのある食材が有効だと、昔から相場が決まっている。

「ペペの優しさ……ムダには、しないっ!」

 支離滅裂になっていく口調で、小さな手にのせられたシューを取り上げ、口の中に押し込んだ。

 *

「……あ、良かった! 目が覚めたみたい」

 赤い髪をした女性が、一番に目に入る。
 口の中が焼けるような痛みに、ハンスは小さく顔をゆがめて起き上がった。
 どうやら、固い床の上で寝ていたらしいことはうかがえた。

「おお、ハンス。具合はどうだ?」
「さすがに、まだ喋れないんじゃない?」
「辛さ十五倍は、やり過ぎたか」

 見せてみろ。と、ペペがハンスの目をのぞきこみ、脈をはかる。
 リーズからもらった液体を飲んでから、記憶が定かではない。
 こんなにまでチェックを入れられるということは、アトリエに来て意識の戻る間、どうしていたというのか。
 そう言いたくても伝えられないもどかしさに眉間にシワを寄せれば、ペペが笑う。

「その表情なら、戻ってるな」
「よ、良かった~! アニーがいたら、どうなってたか~とか、気にはなるけど……」
「リーズ、いい加減にしとけよ」
「はいはい、今回は反省してるって~」

 ハンスがふらつく頭を振り、立ち上がれば、二人がおもわず身構える。
 それを見て、ハンスは愕然とした。

――本当に、何をしたというのか!?

 知りたいようで、聞きたくない気もする。
 しかし、仕事には戻らなくてはならない。
 ペペに冷たいシャリオミルクを出され、痛みはだいぶ和らいだ。
 かすれる声で礼を言えば、ペペは真顔で彼を見据えた。

「ハンス。一日を越えれば、人の記憶は薄まる。頑張れよ? それから……わけのわからない飲み物は、何を言われても、金輪際、口にするなよ。まずオイラに見せにこい」
「あ、ああ。すまない」

 目眩のしそうなセリフに、かろうじて答えれば、ペペは複雑な顔をした。
 おかしな事は、何も言っていないはずなのに。

 *

 そしてまた、いつもの日常が始まる。
 アニーのいないアトリエから聞こえてくる、なぜか入り浸っている常連たちの笑い声。
 ペペは、いつものように、その楽しげな声を聞きながら、店の品をチェックする。

「良かった。アニーお姉ちゃん、出かけてたみたいで」

 店番をまかされているフィズが、小さな声でつぶやいた。
 この小さな少女にも……そう考えたが、一番傷ついているのは、当の本人なのだ。
 ペペは何も答えずに、一度止めた作業を再開した。






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ペペの日常、そしてハンスの日常(笑
なんかこう、あたりまえにこういうことが繰り返されて、みんなが慣れてて対処してる感じが微笑ましくてたまらないです><

伽砂杜さま、ありがとうございました!

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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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