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MISSING 9

完結です!






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『MISSING』 9



「────!」
「アニーさん?」
 ハンスとコルトが、そろって目を丸くする。アニーは、小さくなった紙切れを拾い上げ、そのまま錬金釜に放り込むと、力任せにかき混ぜた。
「どういうことなのかぜんっぜんわかんないし、いまの流れでハンスが思い出しそうになってるってのはわかるんだけど──やめ! なんか違う!」
 大声で宣言する。勢いに気圧されたのか、二人の青年は目を見開いたままで、声を出せずにいる。
「まず、コルト!」
「う、あ、はい!」
 思わず、といった様子で、コルトは背筋を伸ばした。
「手紙になに書いたのか知らないけど……反応からすると、あたしの悪口とか? あ、それともハンスの、だれにも知られたくない秘密? それはなんでもいいけど、そういうことをわざわざ手紙にしない! いいたいことははっきり口でいう!」
「え……ええー?」
 困惑したように、コルトが眉を下げる。しかし、それにはかまわず、アニーはハンスに向き直った。
「それから、ハンス。手紙、出して」
「え、いや……しかし」
「出して」
 ほとんど命令だ。ハンスは、よろよろと手紙を差し出す。ずっと持っていた、コルトが書いたという手紙。
 アニーは、それも破ると、ぱらぱらと釜に混ぜ入れた。
「ハンスが言い出せないんだから、よっぽどなんでしょ。採取先で戦ってるときまで、そのことばっかり考えちゃうって、なんなのそれ。そんなに困るぐらいなら、こうやって破って捨てちゃえばいいじゃん」
「……さ、さすがにそれは」
 なにか言いたそうだ。それでも聞く耳を持たず、アニーは続けた。
「そうでなくても、相談してくれるとかさ。ほかにやりようがあったはずだよ」
「…………」
 ハンスは黙った。
 アニーは、苦笑した。こういうところは、やはり、ハンスなのだ。あたりまえのことだけれど。
「あたしね、ハンスがあたしのこと忘れちゃって、わかったことがあるんだ。ハンスって、やっぱりハンスだよね。覚えてても、覚えてなくても」
 そう言葉にすることで、アニーはより確信を強めていった。
 自分のことを忘れてしまったと聞いたとき、悲しかったのは本当だ。それは、いまでも変わらない。
 しかし、記憶を取り戻そうと苦悩しているハンスの姿を見ていると、なんともいえな気持ちになってしまった。
 コルトや、ほかのみんなや、もちろんアニーも、ハンスに記憶を取り戻してもらいたいと思っている──それは今後も変わることなく、あたりまえのことではあるけれど。
「いいよ、思い出さなくて」
 拗ねた気持ちでも、皮肉でもなんでもなく、アニーは心からそういった。
「……え?」
「アニーさん?」
「いままでの思い出がないのは残念だけど、でもだからって、ハンスが苦しそうにしてるのを見るのは、イヤだもん。これからまた、作っていけばいいよね、思い出。だから、早く身体治して、あたしの担当に戻ってきてよ」
 我ながら良い考えだと、アニーは自分の結論に満足していた。
 これから、作っていけばいいだけの話だ。いままでにこだわるのではなく。
 ハンスがハンスであることは、変わらないのだから。
「ね、コルトも、それでいいよね?」
 問題は、アニーと同じように記憶を忘れられてしまっているコルトが納得するかどうかだ。コルトは小さく息をつき、目を細めた。
「ええ。そう、ですね」
 少し、淋しそうにも見える。複雑な表情。
「だから、この話はこれでおしまい! これから新しく──よろしくね、ハンス」
 アニーは、ハンスに向き直った。右手を差し出す。
 ハンスの肩から、ふっと、力が抜けた。
「……まったく、かなわないな、君には」
 つぶやいて、微笑む。アニーの右手を、そっと握った。
「これからも、よろしく、アニー」
「うんうん、よろしく」
 アニーも、ぎゅっと力を入れる。
「……?」
 ハンスが眉をひそめた。手を離し、自らのそれをじっと見つめる。
「どうしたの、ハンス?」
 これで一件落着だと思っていたアニーは、予期せぬ事態に首をかしげた。ハンスの表情は険しく、どうやらただごとではない。
「先輩?」
 コルトも、いぶかしげに問う。
 ハンスは顔を上げると、アニーとコルトとを順に見た。
「……いや……よろしく? どうして改まって、これからもよろしく、なんだ? コルト、君もどうしてアトリエに? ……いや、おかしいな、そうではなくて……」
 ぶつぶつとつぶやく。
 アニーは、コルトを見た。コルトも、目を見開いている。視線を合わせ、それからもう一度、ハンスを見る。
 これは、もしかして。
「ハンス、ハンス。あたしのこと、わかる?」
 ハンスは眉根を寄せた。
「なにをいってるんだ? 僕が君のことをわからないはずがないだろう」
「────! やった──!」
 アニーは飛び上がり、そのままハンスに抱きついた。
「思い出した! 良かったね、ハンス!」
「な、ちょ……っ、は、離れろ! どうしたんだ、いきなり!」
「わーい!」
 腕に力を込める。ハンスが蛙のつぶれたような声を出したが、それでもかまわず、アニーはそのまま飛び上がった。
「ハンス──! てめ、心配かけさせやがって!」
「いやあ、良かった良かった!」
「解決ー! 今日はパーティーだねー!」
 様子をうかがっていたらしいお馴染みの面々が、どやどやと押しかけてくる。
 ハンスはただただ困惑し、悲鳴に近い声をあげた。
「な、なにがあったんだ?」


 最後にアトリエに入ってきたリーズが、コルトの隣に立った。
「また見てる」
 コルトは平静を装った。
「なにをですか?」
「アニー」
「気のせいですよ」
 小さく笑う。いまは、その目線は、ハンスとアニーとの両方に向けられている。
「ハンスに思い人ができたと知って、後輩の君が先輩の背中を押そうとして書いた、ウソのラブレター──アニーに僕からのラブレターを渡してくださいっていえば、さすがにハンスも行動を起こすだろうと思って……って話だったけど」
 コルトは苦く笑って、肩をすくめた。
「反省してます。先輩を甘く見てました。まさか、悩みに悩んで記憶までなくしちゃうなんて。僕はただ、先輩に幸せになってもらいたかっただけなんですけどね」
「ふうん?」
 リーズが含みを持たせた相づちを打つ。それから、小声で囁いた。
「さて、その真相は?」
 コルトの目が映しているものを、リーズも見る。
 コルトは、首を振った。
「ご想像にお任せします」
 それ以上、リーズは聞かなかった。バカ騒ぎを始めたアニーたちの輪に入っていく。
「ハーンス、記憶をなくしてる間にアニーを泣かせちゃったの、覚えてるー?」
「え……なっ、泣かせた? な、なんの話ですか?」
「そうそう、泣かされたんだよー。リーズ姉さん! もっといってやって!」

 喧噪を聞きながら、コルトはそっとアトリエをあとにした。
 本部に戻って、担当を戻してもらえるようかけあって──その後は、本土に帰らなければならない。
「──コルト!」
 その背中を、ハンスが追いかけてきた。
「あ、先輩。良かったです、記憶が戻って。僕のことも、わかります?」
「ああ、いや……そうではなくて。その、すまなかった。手紙のことなんだが……やはり、僕から彼女に渡すことは、できない」
 コルトは目を丸くした。これだけ大変なめにあってなお、気にするのは手紙のことなのだ。
「先輩、あれ、冗談だったんです。アニーさんのことが好きだといったら、先輩も焦るかなあと思って」
「──なっ、な、なんの話だ?」
「……気づかれてないつもりですか?」
 いっそ呆れた。あそこまでやって行動に出ず、それどころか記憶喪失に陥る始末──ハンスという人間は、コルトの想像をはるかに超えている。
「急がないと、だれかが本気を出して、連れてかれちゃうかもしれませんよ?」
「…………っ」
 ハンスは息を飲んだ。
 それから、咳払いをし、真剣な顔で答える。
「そんなことには、させない」
「それ、僕にいってどうするんですか」
「……うう」
 依然として血行の良くない顔色が、さらに悪くなる。いじめすぎただろうかと苦笑して、コルトはハンスの背を押した。
「先輩は、アトリエに戻らないと」
「あ、ああ。それじゃあ」
 アトリエから、ハンスを呼ぶ声がする。アニーの声だ。コルトが聞いたなかで、いちばん楽しそうで、明るい声。
「結局、お似合いなんだろうな」
 なんだかばかばかしくなって、空を仰いだ。
 それでももう一度、島に戻ってくるのもいいかもしれない、と思いながら。



 アニーのアトリエから、お堅い委員の説教が再び聞こえてくるようになるのは、それからすぐのこと──









────────────
おしまい!!
最後までお付き合いくださって、本当にありがとうございました><

拍手もコメントも、とっても励みになりましたー! こんなに長くなる予定じゃなかったんですが、ぐだぐだすみません。ぐだぐだり。
全部で2万字超えるとかちょっとびっくりしてます。

本当に、ありがとうでした!!!!

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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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