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MISSING 8

最後の1/2。






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『MISSING』 8



 先輩が僕のことも忘れてしまっているというのは、まちがいないみたいです。
 ということは、先輩がケガをしたとき、アニーさんと僕のことを考えていたってことですよね。
 理由、というか、心当たりについてなんですが……
 実は、ある手紙を、先輩からアニーさんに渡してくれるよう、お願いしていて。たぶん、先輩にとってはそれが……ええと、つまり、渡しにくい内容で……困らせてしまったんじゃないかと。先輩のことだから、どうすればいいのか悩みに悩んで、そのことで頭の中がいっぱいになっちゃったんじゃないかなあ、と思うんですが──



「なんなのかな、手紙って」
 錬金釜をかき混ぜる手を休めて、アニーはぽつりとつぶやいた。
 それ以上のことを、コルトは教えてくれなかった。リーズたちには何かいっていたようだったが、アニーには内緒、ということらしい。
 手紙のことを覚えているのかいないのか、または記憶をなくした状態で見つけているのかいないのか──そのことはこの際置いておいて、コルトが手紙をなくしてしまったということにして、何か知っているかどうか、尋ねてくれといわれたのだ。それが、「協力」ということらしい。
 ハンスの反応を思い出す。ふだんなら気づかなかったかもしれないが、注意して見ていたので、何か知っているのだろうということがわかった。それなのに、「知らない」という答え。
 晴れ渡っていない、スッキリしていない状態というのが、アニーは嫌いだ。そもそも、考えること自体が好きではない。どう見ても、ハンスはそのことには触れて欲しくなさそうな雰囲気だったが、それでも本当にあれが「協力」になったのだろうか。
「なんかなー」
 唇を尖らせて、ぐるぐる釜をかき混ぜる。ちっとも集中できず、何を作っているのかさえ忘れそうだ。最近はショップが忙しいとかで、師匠の監視がゆるいのが救いだった。いつもは口うるさい担当委員だって、あの調子。
「……なんかなー」
 おもしろくない。
 最近はどんどん楽しくなってきたはずの錬金術は、どこにいってしまったのだろう。

 コンコン、とドアがノックされた。ここ数日、毎日聞いているノックの音だ。
「はーい」
 声を返すと、コルトが入ってきた。予想通り。
 コルトは手紙を手に、少し緊張した顔をしていた。
「あ、コルト。昨日、手紙のこと、ハンスに聞いたんだけど……」
 コルトは、さっと人差し指を口に当てて、目でサインを送ってきた。黙っていろ、ということらしい。
「……なんで?」
 首をかしげ、そして気づく。なにやら人の気配がする。窓に目をやると、赤い髪がさっと隠れた。ショップのドアも少し開いている。いつの間にか、ギャラリーが集まってきているらしい。
 ということは、ハンスもいるのだろうか。それとも、これから来るのだろうか。
「なにが始まるの?」
 あまりいい予感はしない。
 コルトはなおも目配せをして、それから咳払いをした。深呼吸をするようにして、たっぷりの時間をかけて、手紙をアニーに差し出す。
「昨日話した、大切な手紙です。書き直して来ました。読んで、もらえますか?」
 いやに真剣な顔だ。アニーは目をまたたかせた。
「え、あたしが? あたし宛て?」
「そうです。読んでください」
 本当に受け取っていいものかどうか、アニーは逡巡する。ハンスの記憶を戻すカギになる手紙ではなかったのだろうか。
 アトリエのまわりで、息を飲むような気配。珍獣にでもなった気分だったが、受け取らないわけにはいかないようだ。
「うーん、じゃあ」
 ためらいつつも、手に取る。
 そのまま、コルトがじっと待っているので、封筒を開けた。便せんを取り出そうと、手をかける。
 ガタン、と音がした。
 ドアを開け放って、鬼気迫る様子で飛び込んできたのは、相変わらず顔色の悪いハンスだった。
「──ちょ、ちょっと、待ってくれ!」
 叫ぶようにして、制止する。肩で息をしているところを見ると、ちょうどいまやってきたということなのだろう。
「ハンス」
 声をあげつつも、アニーは、ハンスが飛び込んでくるような気はしていた。そうでなくては、意味がないはずだ。
 ちらりとコルトを見る。表情は読めない。
「先輩、どうしたんですか」
 コルトがのんきな声をあげる。ハンスは言葉を探すようにして、ええと、と切り出した。
「そ、その……手紙を渡すのは、待ってくれ。いや、というより……実は、僕が拾ったんだ、君が書いたという手紙。いいだせなくて、すまない」
「先輩が持っていたんですか?」
 コルトがいかにも驚いたという顔をする。どうにも白々しい。
「ハンス、どうしたの? ちょっと待ってくれって、どういうこと?」
 どういうからくりなのかまったくわからなかったが、一応、アニーは尋ねた。おそらく、こうしてハンスがやってくることは、コルトの計算通りなのだろう。これで、記憶が戻るのだろうか。
「それが……その」
 ハンスは瞳を伏せた。
「どうして、といわれると、困るんだが」
「えー」
 その中途半端さはなんなのか。隠しているというわけではないらしい。アニーはため息を吐く。
 しかし、それでもまだあきらめていないのか、コルトが食い下がった。
「いいんですか、先輩。渡してしまいますよ、アニーさんに、この手紙を」
「いや、だから、ちょっと待ってくれ」
「どうしてですか」
 コルトの口調が、問いつめるようなそれになる。
 ハンスの表情が、苦悩に歪んだ。アニーは、ハンスをじっと見つめる。思い出そうとしているのかもしれない。
「と、とにかく……うまくいえないんだが、その手紙は……──」
 言葉が途切れる。張りつめたような、それでいて重い空気。
 長い、長い沈黙。
「──やめた!」
 突然、アニーは叫ぶと、手紙をびりびりと破り捨てた。






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モロ続きます。

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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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