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『眠る彼女』

ハン→アニで、キル→アニ?
勢いで書いてみたもの。

リーズ姉さん、ビュウも出ます。




*****

『眠る彼女』



「どこ行った、あの万年サボリ魔──!」
 いつものようにアトリエの扉を開けてみれば、いつものように怒り狂う小さな妖精。そして、アトリエの主であるはずの彼女の姿はナシ──これも、ほとんどいつものことだ。
 ハンスはそのまま回れ右をした。彼女の居場所を怒れる師匠に聞いたところで、まともな返答は期待できないだろう。
「……また、逃げたな」
 つぶやいて、ハンスは錬金術師の少女を捜すべく、アトリエを後にした。


   *


 そもそもアニーには、やる気というものが感じられない。
 こと「玉の輿」が絡めば闘志を燃やすものの、何か一つのことを成し遂げてしまえば、すぐに消火されてしまうようだ。それは例えば中和剤の作成だったり、ギルドから受けた簡単な依頼の達成であったり。大きすぎる目標を掲げるわりには、そこへ繋がる気力はゼロ。努力と根性が嫌いという、典型的なダメ人間だ。
 それでも、潜在能力だけなら一級品──という、噂がある。なんといっても、血筋が普通ではない。
 しかしそんなものは、このままでは、宝の持ち腐れだ。

 アニーの担当委員として、ハンスは焦りを感じていた。彼女への評価は、そのままハンスへの評価へ繋がる。なにも常に金賞を取れとはいわないが、せめて毎回の課題をこなすぐらいのことはしてもらわないと、困るのだ。
「逃げるとすれば……フィズのところか? いや、それは前回使ったな。ギルド、武器屋……──広場、か」
 ぶつぶつとつぶやきながら、ハンスは道を歩いていく。いままでの逃げ場所を書き出したリストを開くまででもない、彼女の行きそうなところなどたかが知れていた。加えて、単純な思考パターンも加味すれば、これほど天気の良い昼下がり、行くところといえば一つだろう。
 町の中心に位置する、その名も中央広場。


 

 足早に辿り着いてみれば、果たしてそこに、アニーはいた。
 ハンスの推理は確かに当たっていた──が、この事態は想像していなかった。
「アニー……」
 力無くつぶやいて、ハンスは頭を抱えた。

 噴水脇のベンチで、仰向けに寝転がる少女。大きな帽子とマントがトレードマークの捜し人、間違いなく、錬金術師アニーだ。
 彼女は、実に幸せそうな顔をしていた。
 口は半開き。目は閉じられ、どうやら昼食だったらしいカントホルツが握られた手は、だらしなくベンチから垂れ下がっている。
 むにゃむにゃと、小さな声まで聞こえた。
 完全に、爆睡だ。
「いくらなんでも」
 寝るか、こんなところで。仮にも女の子が。
 しかし、あまりに呆れてしまって、声にならない。

 どうするべきか、ハンスはあらゆるルートを模索する。怒鳴りつければ起きるかも知れないが、タイミングを逸してしまった気分だ。ベンチから落とすなりなんなりして起こすか、それともこのまま放っておくか──いや、放っておくという選択肢は、ない。
 とりあえず、アニーの寝転がるその隣のスペースに、座ってみた。
 途方に暮れながら、空を見上げる。確かに、眠気を誘われる陽気だ。仕事に奔走しなければならない身にとっては、残酷なほどに、心地よい。

 一息ついて、隣を見る。
 のんきに寝続ける少女を、見下ろした。
 平和そのものだ。あたりまえだが、こうして眠っている姿をじっくり観察することなど初めてで、ハンスは無意識にまじまじと見入ってしまう。
 異性との接し方がわからず、女性の前ではどうすればいいのかわからなくなってしまうハンスが、唯一普段通りに話すことのできる相手。日頃から思っているとおり、少女というより少年のようだ。

 ──本当に?
 心のどこかで、声が聞こえた気がした。それは自問だ。
 気づいてしまってはいけないような気がしながらも、ハンスは目を逸らすことができない。

 彼女の髪は、これほど柔らかそうだっただろうか。
 彼女の頬は、これほどあたたかそうだっただろうか。
 彼女の手は、目は、唇は。
 ハンスは、思わず手を伸ばした。
 指先が髪の毛に触れる寸前で、止める。
 このまま触れてしまったら、何かが、変わってしまうのではないのだろうか──





「……ずいぶん長いこと、あのままねー」
「どーすんだろうなー。このまま日が暮れたりして」
「うわ、笑えない」
 広場の端の商店の影から、ベンチを見守る二人がいた。
 たまたま通りかかり、問題の場面に遭遇したリーズと、元々いたのだが気づかれなかったビュウの二人だ。

 何食わぬ顔をして出て行けば良いのだが、俄然、興味が勝った。
 二人は目が合うやいなやうなずき合い、冒険者スキルを最大限に活用して気配を消し、のぞき見に全力を注いでいた。
「じれったいなあ。行くなら行けばいいのに」
「つーか、ハンスって、そうなの?」
「あたしの見たところだと、ほぼ間違いないね」
 誇らしげに、リーズはいいきった。だってあたしの『女の武器』が通じなかったんだから、と続いたが、それについてはビュウは無言を通すしかない。綺麗な女性だとは思うが、色気とかそういう問題になれば、ある意味アニーと良い勝負だ。
「見てるのがオレらだけならまだしもさー、公衆の面前だろ。やっぱりここは友として、出て行くべきかな」
「友として、応援するべきでしょ、イロイロ。奥手な実直青年と天然少女なんて、オイシ……じゃない、応援したくなるじゃないの」
 本音がチラリと漏れたが、なんとなくわかる気がしたので、ビュウもつっこまなかった。
 ため息をつきつつも、視線を戻す。
 まるで一枚の絵のように、ハンスはピタリと停止していた。目線の先にはアニーがいるのだろう。いま自分がどんな顔をしているのか、本人は知っているのだろうか。

「なんだなんだ、ナニ祭りだ!」
 不意に、デリカシーの欠片もない第三者の声が割り込んできた。
 同時に、ガッチャガッチャと鎧が揺れる音。振り返るまでもなく声の人物がわかり、ビュウとリーズはそろって唇を曲げた。
「出たな、筋肉バカ」
「静かにしてよね」
 ほとんど同時に告げる。大剣を背に刺した大男、キルベルトは、大声のままに返した。
「なんだよ、マブいダチだろー。それより、アニー知らないか。アトリエにいなくてよ、小せえのが怒ってた。──お、ハンスじゃん。なにやってんだ、あいつ」
 一体彼はデリカシーや気遣いというものをどこに忘れてきてしまったのか。いっそ取りに戻ってもらいたいぐらいだ──そんなことを思いながら、リーズは口元で人差し指を立てる。
「いまいいとこなの。イイコだから、帰ってくれない?」
「イイコって。バカにしてんだろ」
 どうやら完全に馬鹿ではないらしい。
 なんだかもうどうでもよくなってきていたビュウが、肩をすくめて息を吐き出した。
「アニーなら寝てるよ、あっちのベンチで。用があるなら起こしてくれば?」
「ちょっと! ダメだったら!」
「寝てるぅ?」
 野太いながらも、素っ頓狂な声をあげる。わざとらしく手で傘を作りベンチを確認すると、キルベルトは大股で歩き出した。

「おいおい、なにしてんだ、アニー!」
 何の遠慮もなく、停止中のハンスと夢の中のアニーの前に躍り出ると、アニーの頬を両側に引っ張った。
 ぶに、と頬がのび、同時に目が開く。
「にゃ、ちょ、なに? あれ? ──玉の輿は?」
 どんな夢を見ていたのかは明白だ。一気に覚醒したらしいアニーが、目を丸くしてあわただしく左右を確認した。
「玉の輿、は?」
 繰り返した。よほど良い夢だったのだろう。
「玉の輿じゃねーよ、こんなとこで寝てたら通報されんぞ。帰れ帰れ、さっさと帰れ! おまえがいないと、アトリエに入り浸れねえだろ!」
「なにそれっ、そもそも入り浸らないでよ!」
 寝起きだというのに、いつものテンションでケンカを始める。

 やがてアニーは、隣で固まっているハンスに気がついた。
「あれ、ハンスじゃん。どしたの」
 ハンスはまるで本当に動けなくなってしまったかのように、微動だにしていなかった。表情が硬い。声もない。
 しかしやがて、端正な顔が徐々にあるものに変わっていく。
 アニーには、その表情に覚えがあった。
 爆発寸前、というやつだ。
「あれー、なんか怒ってる?」
「……怒ってる。いったい君はこんなところで何をしているんだ。さっさとアトリエに戻って修行を……」
「そういうハンスくんは、何をしていたんでしょうかねー」
「寝顔まじまじ見ちゃってなー」
 そこへ、にやにや笑いの二人が参戦した。
 さっと、ハンスの頬が朱に染まる。
「え、なに? ヒドイ! オトメの寝顔を見てたの?」
「お、オトメはそもそもこんなところで寝ないだろう!」
「う、イタイとこ突かれた! 寝るつもりじゃなかったんだけどなー」
 アニーが唇をとがらせる。さすがにその顔を見ていられなくなって、ハンスが視線を逸らすと、その先では二人の見物人が待ちかまえていた。
 何かをいうわけではない。
 しかし、果てしなくニヤニヤしている。

 一体いつから見ていたのだろう……というよりそもそも、自分は何をしていたのか──ハンスは脳内がぐるぐると混乱していくのを感じながらも、むりやり振り払うかのように、勢いよく立ち上がった。
「とにかく、帰るぞ、アニー!」
「ぶーぶー。自由をー! 錬金術師に、自由をー!」
「課題の提出もまだだろう!」
 ごまかすように、鋭く叱咤する。文字通りアニーの首根っこをつかんで、ズルズルと引きずり始めた。目指すは、小さなオニの待つアトリエだ。
「あ、オレも行く、オレも」
 空気を読まず、のんきにキルベルトがついて行く。拒否の声が見事にハモった。
『おまえは来るなー!』
「なんだよ、照れんなよー」





 歩き去っていく三人を見送りながら、ビュウはぽつりとつぶやいた。
「実は、筋肉バカの方も怪しいと思うんだよな」
「あたしの見たところだと、ほぼ間違いないね」
 自信たっぷりのリーズの言葉に、それって実は信憑性ないな、とビュウは悟る。しかし、もしかしたら、あるいは。
「でも相手がアレじゃ、苦労するだろうねー」
 誰が、とはいわず、リーズは至極楽しそうにつぶやいた。 
 
 








──────────────────

なんかまとまんなかった……。
ハンスはどこまでもオトメに。アニーはどこまでも鈍感に。
周囲にはガヤガヤしていて欲しいです。

キル→アニかどうかの解釈はお任せで。



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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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