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MISSING 7

とうとう、以前の長編を抜いてしまいました(話数的に。
長さは……どうなのかな。まだ向こうの方が長いような気もしています。






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『MISSING』 7



「まったく……」
 アトリエへの道を急ぎながら、ハンスはイライラと声を漏らした。担当委員の変更は必要ないといいにいったのだが、そんな顔色でなにをいい出すのかと追い返されてしまったのだ。
 なぜこんな気持ちになるのだろう。記憶を無くしてしまった焦燥感よりも、より強いいらだち。黒くて醜い感情が、胸の奥で巣くっている。
 アニーの担当委員がコルト・ルーベルという青年になった──そうカイルたちに聞かされたとき、目の前が真っ白になった。知っている名だ。あの、コルト・ルーベル。
 自分はなにも聞かされていない。休暇ということになっているのだからあたりまえなのかもしれないが、それにしても、よりによって。どうして、コルト・ルーベルなのか。
 記憶が戻れば、解決するのだろうか──ハンスは、いままで自分がアニーという少女にどう接していたのか思い出そうとした。しかし、やはり、思い出せない。
 もう少しうまく立ち回っていたのだろうか。彼女といると、ほかの女性のように緊張はしないものの、どういうわけか余裕がなくなってしまう。

 アトリエにたどり着いて、ノックする。すぐに返事が聞こえてドアを開けるが、先ほどまでのにぎわいが嘘のように、アトリエにはアニーしかいなかった。
「どうだった、本部?」
 無邪気に問われ、ため息をつく。言葉を探しながら、それでもいわないわけにはいかないので、ハンスは正直に告げた。
「やはり、しばらくは君の担当に戻れそうにない。僕がやると主張したんだが」
「ふうん」
 アニーの返答はそれだけだ。なんとなくおもしろくなくて、ハンスはむっとする。
「ふうん、じゃないだろう」
「それよりさ、手紙ってなんのこと?」
 さらりと聞かれ、ハンスは目を見開いた。鼓動が一気に早くなる。冷や汗が垂れたが、どうにか気づかれないように息を吸い込んで、平静を装った。
「な、なんのことだ。て、手紙?」
 多少どもってしまったが、アニーは気づかなかったのか、そのまま続ける。
「なんかねー、探してるんだって。ちょっと前になくしたらしくて。仕方ないから書き直そうかなっていってた」
「か、書き直すのか」
「大事な手紙みたいだよ」
「…………」
 ハンスは黙った。いまだにどうすることもできず、持ったままのあの手紙。コルト・ルーベルという名を聞いたときには驚いたが、どうやら彼から預かったというわけではなく、彼が紛失したものということらしい。偶然、ハンスが拾ったということなのだろう。
 それならば、ハンスが取るべき行動は決まっていた。まったく単純で、簡単なことだ。拾ったのだといって、渡せばいい。あのコルトという青年に。
「なにか知ってるの?」
 しかし、アニーに問われ、ハンスはとっさに首を左右に振っていた。
「い、いや、心当たりはないが」
 答えてから、激しく後悔する。なにを嘘をついているのか。自分で自分がわからない。
「そっか、知らないんだ」
 そこで、会話が途切れる。ハンスはとにかく逃げ出したい気分になっていた。頭痛がする。頭の中が、アニーと、コルトと、あの手紙のことでいっぱいになっていた。
 この感覚には覚えがあるような気がするのだが、思い出せない。
「し、失礼する」
 自分でも挙動不審だと思いながら、ぎくしゃくとアトリエを出る。アニーが呼び止めたような気がしたが、止まることはできなかった。


「あ、ハンス! だいじょうぶなの?」
 アトリエを出たところで、リーズとジェリアに呼び止められた。よろめきながら、ハンスはうなずく。正確にはだいじょうぶではないが、いまはとにかく一人になりたい。
「特製薬草ジュース、やっぱり飲んだほうがいいよー。どう、どう?」
「い、いや、遠慮しておく」
 そそくさと去ろうとする。しかし、リーズがニヤリと笑って声をひそめた。
「ね、知ってる? コルトって、アニーが好きみたい。ラブレターまで用意して、告白するつもりだったんだって」
「──! そ、そう、なんですか」
 いま一番触れられたくない話題が出てきて、ハンスはどうしたものかと考えをめぐらせる。逃げるべきか、とどまるべきか。詳しく聞きたい、という気持ちもあるのだ。
「アニーの臨時担当委員になったのも、コルトくんから志願したらしいよー。でも、手紙なくしちゃったから、書き直して明日再チャレーンジ、なんだって」
「あ、明日?」
 ジェリアとリーズは、二人してうなずいた。
「どうして、僕にそんな話を……」
「えー、だって」
「ねえ」
 そうして、視線を合わせる。アイコンタクト。
 ハンスは心臓を押さえた。なんだか色々限界だ。それじゃあ、といい残して、その場から離れていく。

「これでいいのかな?」
 ジェリアが首をかしげて、リーズは満面の笑みを浮かべた。
「なんかわかんないけど、おもしろいからヨシ!」






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ラスト手前の準備段階的な。


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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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