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『ミニミニアニー』1

10000ヒットいただきネタ第一弾!
尚利さまにいただいたネタでSSでございます><

ちょっと長くなったので、二つに分けまする。






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『ミニミニアニー』 1



「アニー? いないのか?」
 ノックをしても返事はなく、しかし室内からは熱気が漏れ、明らかに在宅の気配。
 ハンスは逡巡しながらもアトリエの戸を開け、そろりそろりとなかをのぞいた。
「……アニー? ぺぺ?」
 しんとしている。不自然なほどに。錬金釜の火は燃え盛っており、テーブルには湯気のたったティーポット。
 留守、という雰囲気ではない。
 しかし、だれの姿もなかった。
 これといって用があったわけでもなく、ハンスはどうしたものかと考え込む。ここに居続ける理由はない。かといって、このまま出ていくのもどうか。ショップをのぞいたが、やはり無人。あまりにも不用心だ。
 悩んだあげく、椅子を引いて落ち着くことにする。少しぐらいなら問題ないだろう。
 いざ座ろうとして、目を見張った。
 椅子の上に、見慣れた服が転がっていた。
 へんてこ帽子にマント。それがなくとも、だれのものなのかは一目瞭然だ。
「……っ、…………!?」
 急に挙動不審になり、ハンスは思わず辺りを見回す。これがここにこうして脱ぎ捨てられている──そんな状況は初めてだ。ベッドの脇に放ってある現場は何度か目撃したことがあるものの。
 もう夕方だ。アニーがまだ寝ている、またはもう寝ている、という状況は考えづらい──否、あり得ないことではないが、ベッドにいないのだからちがうのだろう。
 では、なにか他の服に着替えて、出て行ったのだろうか。それとも、なにかのトラブルが?
 ほんの十数秒、しかしハンスにとっては永遠とも感じられる間ののち、服に向かって手をのばす。そっと触れると、それはまだぬくもりを帯びていて、慌てて手を引いた。なにか、とても良くないことをしてしまっているような、この感覚はなんなのだろう。
 その服が、かすかに、動いた。
 目の錯覚ではない。虫でもいるのだろうか。ハンスは気を落ち着けつつ、もう一度、衣類に手を伸ばす。
 帽子、マント、上着、ズボンと、順番にテーブルへと移動させていき──
 ──出てきたそれに、息が止まりそうになった。
 白いシャツのようなものに埋もれている、小さな小さな人形のようなもの。むにゃむにゃと寝息をたてていたそれは、ゆっくりを瞳を開け、身体を起こす。
 一糸まとわぬ姿で。
「う、うわ──────っ」
「はにゃっ、わわわっ!?」
 ハンスの声で一気に覚醒したらしいそれは、自らの状態に気づいたのだろう、慌てて衣類のなかに引っ込もうとする。その拍子に、椅子から落ちたのは、紛れもなく真っ白の下着で、
「わ────っ」
「きゃ────っ」
 混乱のなか、悲鳴はしばらく、やむことはなかった。


 
 人形のように思われたそれは、アニーに他ならなかった。
 いまでは、ハンスのハンカチを身にまとっている。テーブルの上にちょこんと座り、頬を膨らませ、ぷい、とそっぽを向いた状態だ。
「ハンスのえっち」
「な、え、え、……………っ、と、いうことはないだろう!」
 思いもかけない単語に、ハンスの反論もしどろもどろだ。服のなかに、小さくなったアニーが素っ裸で埋まっているなどと、だれが思うだろう。
 アニーが縮んでしまった経緯は、まったくもって情けないものだった。
 ペペが里帰りで不在。師匠がいないところで、なにかビッグなものを作ってやろうと妙にやる気に。適当な材料で適当に作ったものが、どういうわけかおいしそうな仕上がり。で、食べたとたんに眠気に襲われ──
 ──気づいたら、こうなっていた、ということらしい。
「あたしがいない間に、あたしの服触って、どうするつもりだったのって話でしょ」
「カギも開けっ放し火も付けっぱなしで、あんな状態で服が転がっていれば不審にも思うだろう!」
 痴漢や変態のようにいわれるのは極めて心外だった。冷静に否定できないのは、ほんの少しの後ろめたさがあるからかもしれないが。
「しかも、あたしの裸見たし」
「見てないっ! そんな小さなものをどう見ろというんだ!」
「だれが幼児体型だー!」
「そ、そうはいっていないだろう!」
 不毛な争いだ。
 なおもぶつぶつと文句を漏らしていたアニーは、やがて怒りがおさまったのか、身体を小さくして黙ってしまった。青いハンカチにくるまって、うつむく。
「……アニー?」
 そうなると、逆に心配だ。身をかがめて顔をのぞき込むと、アニーは小さく唇を尖らせていた。
「こんなはずじゃなかったのになあ。寒いしお腹減ったし、これじゃなんにもできないし、情けないよ」
 どうやら、反省はしているらしい。ハンスはため息を吐き出して、指先でそっとアニーの頭を撫でた。
「偶然とはいえ、新しい薬の調合に成功したと思えば、落ち込むことでもないだろう。ペペが帰ってくれば、元にも戻れるだろうし」
 そこまでいって、ハンスははたと気づいた。新しい薬、と決まったわけではない。既存の薬を偶然作ってしまったというほうが、可能性は高いのかも知れない。
 それなら、ペペは無理でも、相談することのできる相手はほかにもいた。
「もしかしたら、解毒薬のようなものがあるのかもしれないな……リーズさんを捜してこよう」
 もう日が暮れようとしている。行動するなら早いほうがいい。
 すぐに立ち上がると、小さな手が、ハンスの服を必死につかんだ。
「待って、ハンス」
 気づかずに、そのまま数歩進んでしまう。それこそ虫のように服にぶら下がったアニーが悲鳴をあげ、やっとハンスは小さな身体を手のひらに乗せた。
「すまない。どうした?」
「どうした、じゃないよ! こんな姿でここに一人なんて、心細いでしょ!」
「あ、ああ、そうか」
 手の上で声を荒らげ、ハンスを見上げてくるアニーは、いままでにない破壊力を持っていた。しかも身につけているのはハンカチ一枚だ。
 ハンスは思わず目を逸らす。
「明日にはペペも帰ってくるから、今日はこのままでいいよ。ハンス、ここにいてくれるんでしょ?」
 どうして、あたりまえにそういうことになっているのか。ハンスは言葉に詰まったが、否定する理由もない。仕方ないな、と答える。
「昨日作ったシチューが残ってるんだよ。作り置きで悪いけど、一緒に食べよう? それに、ケーキだってあるし。ね?」
「……それはいいが……いやに、サービスが良くないか?」
 さすがに訝しく思い、眉をひそめる。アニーはえへへと笑って、小首をかしげた。
「だって、あたし一人じゃ鍋のなかに落ちちゃうじゃん」
 そういうことか──ハンスは納得した。要するに、食い物をやるから世話を焼け、ということらしい。
「なら、君のいうとおりにしよう。夕食をとって、さっさと寝てしまえば、問題ないな」
「うんうん!」
 アニーは嬉しそうに頬をほころばせ、ハンスの手の上で飛び跳ねた。ハンスは苦笑して、小さな家主の仰せのままに、鍋のシチューを温め始めた。







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すみません続きます。
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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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