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『リーナの誕生日』

お誕生日ネタです。コメディ。
リュオンとジェラール、リーナが出てきます。






*****






『リーナの誕生日』



「おや、どうかしたんですか、リュオンくん。こんなところで」
 かけられた涼しげな声に、リュオンは回れ右をして駆け出しそうになった。
 こんなところ。まさに、こんなところだ。
 よりによって、こんなところを目撃されるとは。
 眼鏡の奥の瞳を、純粋に不思議そうに細め、声をかけてきたのはジェラールだった。まだ彼でよかったと思うべきなのかもしれないが、リュオンの心臓は早鐘のように騒ぎ、おさまってくれそうにない。
「い、いや……たいしたことじゃ」
 結局逃げ出す勇気もなく、言葉を濁す。
 目の前では、商人というよりは職人風の娘が、宝石をいじっていた。娘の前には赤い布が敷かれ、色とりどりのアクセサリーが並んでいる。ヘングストの街道に出ている露店だ。
 以前から気になっていて、リーナに見つからないようにこっそりとやってきたというのに。
「ほう、これは、素晴らしい品ですね。値段も手頃ですし……ハンドメイドですか?」
 リュオンの隣に来て、ジェラールが腰をかがめる。娘はうなずき、なにごとかを説明しているようだ。そこはやはり行商ということなのだろう、ジェラールの目はすでに商売人としてのそれになっていた。
「で、これはつまり……リーナさんへのプレゼントですか?」
「──っ」
 いきなり核心を突かれ、リュオンは口から内蔵が飛び出る思いだった。
 なぜだ、なぜバレバレなんだ……! 激しいショックを、どうにかポーカーフェイスで隠す。
「そ、そんなわけねえだろ。どうして俺があいつに……いくら誕生日だからって、こ、こんなもん」
「誕生日ですか! それはいいですね、リーナさん、きっと喜ぶと思いますよ」
 リュオンは頭を抱えた。なんということだろう。リーナの誕生日はリュオンだけが知る秘密情報だったはずなのだ。俺のバカ、俺のバカ。
 ジェラールは柔らかく微笑んで、緑色の宝石のペンダントを手に取った。光によって、ほんのりと黄色に変化する宝石だ。細工は簡素だが上品で、宝石の隣に花のプレートがついている。
「これなんて、似合いそうです」
 それはまさに、リュオンが目を付けていたものだった。というよりも、むしろそれを買いに来たのだ。ただ勇気がなくて、ここで固まってしまっていたというだけで。
 だが、この状況で、ならそれを買おうといえるほど、リュオンは素直にできてはいなかった。そっぽを向いて、腕を組む。
「なら、アンタが買ってってやれよ。俺はいい。ガキじゃねえんだし、いまさら、プレゼントなんて」
「リュオンくん」
 ジェラールの声が、一段階低くなった。
「目を見ていれば、わかりますよ。これを買いに来たんでしょう。──背中を押すつもりだったのですが、逆効果だったでしょうか。友人なら、プレゼントを渡すのはおかしなことではありません。これは、君が買うべきです」
 差し出されたペンダントを前に、リュオンは硬直した。それでも、あと少しの、勇気が出ない。
「リュオンくんがあげた方が、きっと、リーナさんは喜びますよ?」
「──ちっ、しょうがねえな!」
 結局、ひったくるようにしてそれを受け取った。金を払い、ほとんど逃げるようにしてその場を走り去る。
 もしかしたら、ジェラールが現れなければ、買うことができなかったかもしれない。リュオンはほんの少しだけ彼に感謝しつつ、村への帰路を急いだ。



 そうして、リーナの誕生日当日。
 リュオンは朝からドキドキしていた。昨夜はほとんど眠れなかった。リーナが遠出をしないことは確認済みだ。何気なさを装ってアトリエへ行き、ごくさりげなく──決して他意はないのだという意図をこめつつ──渡せばいい。
 それだけだ。
 それだけのことだ。
 だというのに、朝っぱらから過呼吸状態だった。息のしすぎで息が詰まりそうだ。どうしようもない。
「あ、おはようございます!」
 不意に、リーナの声がリュオンの小屋まで届いてきた。
 長老にでも挨拶しているのだろうか。外に出ているのなら、いまのうちだ。──いや、急ぐことはない。いや、でも、どこかに出かけられたら最悪だ。しかし、慌てて出て行くのは格好悪い。
 ここまできてそれでも悶々と、小屋の中を行ったり来たりする。
「どうしたんですか、ジェラールさん。こんな朝早くに」
「──はっ?」
 続いて聞こえてきた名に、リュオンは存分に取り乱した。
 ジェラールだと!?
 聞き間違いではないはずだ。リュオンは弾丸のごとく小屋を飛び出す。
 果たしてそこには、たしかに、ジェラールがいた。
 いつも通りのやわらかい物腰で、馬車から降りると、リーナに向かって微笑む。
「買い付けに行く途中なのですが……ちょっと、用がありまして。リーナさん、お誕生日だそうですね?」
「──っっ!!」
 リュオンは息を飲んだ。日にちまで詳しくはいわなかったが、彼のことだ、得意の情報網を駆使して調べたのだろう。リーナは驚いたように目を見開いて、それから頬を染める。
 ジェラールが、ピンク色の花束を差し出したのだ。
「すてき……!」
「たいしたものではありませんが、プレゼントです。それと……もうひとつ」
「なんですか?」
 ジェラールは、小さな木の箱をリーナの手に乗せた。開けてみてくださいといわれ、リーナはおずおずとリボンをとく。
「わあ……!」
 感嘆の声に、嫌な予感しかしない。リュオンはリーナのうしろにまわりこみ、箱のなかをのぞき込んだ。
 そして、絶句した。
 淡いピンク色の宝石の──ペンダントが、入っていた。
「ロットビーチで夏にしか採れない、希少な宝石です。とてもかわいらしい宝石なので、リーナさんに似合うと思いまして、ペンダントに仕立ててもらいました」
「すごい! 素敵です! ありがとうございます!」
 目を潤ませて、リーナはそう礼を告げる。ジェラールは困ったように眉をひそめ、
「ペンダントはどうかとも思ったのですが……数があって悪いものではないですしね」
 そう、付け加えた。リュオンに向かって、意味ありげに微笑む。
 リーナはきょとんとしている。
 リュオンは、まだ、口が開けない。
「それでは」
 本当に用はそれだけだったのだろう。ジェラールは丁寧に一礼し、馬車に乗ると、さっさと村から出て行ってしまった。
 沈黙が残る。
 リーナが嬉々として、ペンダントを取り出す。
 さっそくつけようというのだろう、首の後ろに手を回した。考えるよりもはやく、リュオンはその手をつかんでしまう。
「いたっ。リュー、どうしたの?」
「──い、いや、その……」
 リュオンは言葉につまった。
 実は俺からもプレゼントが。しかもペンダントで。ぜったい似合うから。──もろもろの言葉は、むなしく頭を通り過ぎていく。
「……おまえみたいにキノコも食えないようなガキ、そんなの似合うわけねえだろ」
 流れでた言葉に、心の中で泣きそうになる。なんだそれ。それはナイ。
「もう、リューったら! どうせリューは、あたしの誕生日なんて忘れてたんでしょ!」
 リーナは頬を膨らませて、ついとそっぽを向いた。数歩進み、振り返ると、べーっと舌を出す。
 そのまま、アトリエに、帰ってしまった。


 いつのまにか、リュオンのまわりには、人だかりができていた。
 正確には、妖精だかりだ。
「りゅー、いまからでも渡せば?」
「りゅーのぺんだんとのほーが、きれいだよー」
「きっと喜ぶよー?」
 口々と、余計なお世話を口にする、妖精たち。
 なんで知ってんだそんなこと、とつっこむ気にもならず、リュオンはがっくりと肩を落とした。
 
 


  

────────────
ジェラールは腹黒い、に一票。
リュオンは妖精たちのオモチャ、に一票。
報われずに終わってしまいました。ごめんリュー!
この後、キースとか色々押しかけてきそうです。


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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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