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『クサクナイクスリ』

やってしまいました、エイリズ第二弾。
読んでみたい、というお言葉に甘えて、 『クサイクスリ』 その後です。





*****





『クサクナイクスリ』



「やあリーズ! 逢いたかったぜ! 船に揺られている間、寝ても覚めてもリーズのことばかり──見ろよ、この花たちも、おまえに会えたとたんに元気になったみたいだ」
 船から降りるなり、人々の目を気にすることなく、エイリーはそんなセリフをのたまった。ひざをつき、ずい、と真っ赤なバラの花束を差し出す。
 確かに、花も、ついでにエイリーもいきいきとしている。船旅でよくも枯れなかったものだ──それとも、豪華客船には花屋でもあるのだろうか。そんなことを思いながら、リーズは一応にっこりと笑って、それを受け取った。
「久しぶり、エイリー。今度こっちに来ることがあったら、でよかったのに。予定はだいじょうぶだったの?」
 心外だといわんばかに、エイリーは首を大仰に振った。
「リーズからの手紙に、会えたら話したいことがあるなんてあったら、ほかの予定なんてぜんぶキャンセルするさ。いや、ほかのは予定とも呼べない。こうして会えるなら、それがオレの人生における最優先事項なんだ──」
 手を握ってくる。抜け目ない。
 リーズはその手をあっさりと払った。エイリーの口から流れ出るアレコレは、だいたい二割ほどだけ聞くことにしている。ぜんぶを頭に入れていたのでは脳がどうにかなってしまう。
「じゃ、まずは食事でも、どう?」
「もちろん! そのために来たといってもいいぐらいだ」
「え、おごってくれるの、嬉しい──!」
 そうして、聞き入れた二割は、いいように脳内で変換される。エイリーも否定する様子はない。
 リーズは、エイリーの扱いには慣れている。彼の口から水のように出てくる言葉の数々にうんざりはするものの、その対応がわからないというわけではない。
 それでも、今日のリーズには、野望があった。
「さ、行こっか」
 微笑みかけ、歩き出す。エイリーも笑って、二人は肩を並べてレストランに向かった。




「実はね、エイリーのために、ちょっとした飲み物を用意したの」
 食前の水が運ばれてくるやいなや、リーズはそう切り出した。
 嘘ではない。
 核心は隠しているが。
「リーズが、オレのために……? あのリーズが……!」
 エイリーはなにやら大げさに衝撃を受けている。あのリーズとはどういうことだろう、と思いながらも、リーズはにこやかに小瓶をとりだした。
 つい、と差し出す。
『クサクナイクスリ』と包み隠さずラベル付き。
 効能は単純だ。一定時間、クサイことをいわなくなる。もちろん、そんなことをわざわざ説明はしないが。
 しかし、エイリーにはためらう様子はなかった。これを飲めばいいんだな、とつぶやいて、実に潔く、ぐいとあおった。
 思わず、リーズは身を乗り出す。目に見えるような変化がないことはわかっていたが、じっと見てしまう。
「……どう?」
 どきどきしながらそう尋ねると、ふむ、とエイリーはうなずいた。
「悪くないな」
 味の話ではないのだが。とはいえ、焦ることもない。
 やがて食事が運ばれてきて、二人は向かい合ってのランチを始めた。

 
 異様、といっていいほど、食事時間は静かにすぎていった。
 エイリーはほとんど無言だ。
 ときどき、うまいな、とか、これは何だろう、とかつぶやくだけで、話題を提供するそぶりはない。
 これはクスリの効果があったということだろうか──そうは思うが、どうも釈然としない。リーズは自分から探ってみることにした。
「ね、最近はなにしてるの? 相変わらず、あちこちまわってるの?」
 商売人であるエイリーに、当たり障りのない話題。エイリーは、ああ、とうなずいた。
「そうだな、いろんなところに行きはするが……最近じゃ、オレは指示を出す方が多いな。前ほど動くこともなくなった。新規開拓ばかりが事業じゃない」
「ふうん。そうなんだ」
 そこで、会話が終わる。なんだかむずむずした。
 なんてまっとうな会話だろう。余分なものが一切ない。これを望んでいたはずなのに、胸の中にモヤが広がっていく。なにかがちがう。
「相変わらず、モテてるんでしょ?」
 あえて、そんな話題まで持ち出してみる。
「そうでもないさ」
 あっさりとした返事。ぶつりと止まる会話。
 うーん、とリーズはうなった。
「どうした?」
「ん、ちょっとね」
 やりとりを思い出す。普段ならどんな会話になっていただろう、と頭の中でシミュレーション。
 上手な答えは浮かばなかった。
 調子が出ない。

 そのまま、会話もそこそこに、食事を終えた。店を出る。
「これから、どうする?」
 どこかに行く? と暗に告げる。
 いつものエイリーなら、事前に調査したセラ島のデートスポットをあれこれいうはずだ。探るような気持ちで、見上げる。
「どこでもいいさ」
 実にそっけない返事が返ってきた。勝手だという自覚はあったが、リーズはむっとする。
「なに、それ」
 クサイ言葉、という装飾を取り去ってしまえば、エイリーの言葉はこれほどあっさりとしたものだろうか。いつもなら、どこそこに行こう、とすぐに食いついてくるくせに。
 もしかしたら、船で数日かかるようなこの島にだって、来たくはなかったのかもしれない。
 クスリが効いた状態で手紙を読めば、行くほどのことではないと、あっさりと手紙を丸めたかもしれない。

 ふつふつと、怒りがわいてきた。
 自分がいままで接してきたエイリーという人間は、いったいなんだったのか。
「じゃ、もう帰っていいよ。ありがとう、来てくれて。……ごめんね」
 怒っているはずなのに、なんだかみじめな気分でそうつぶやく。
 エイリーは目を丸くして、リーズの顔をのぞき込んできた。
「どうしたんだ、リーズ?」
「別に。どこにも行きたくないなら、行かないってだけ」
 エイリーはひどく心外そうな顔をした。
「どこでもいい、っていったんだ。行きたくないなんていってない」
 そんなことをいわれても、とリーズは思う。普段の彼と全然違うではないか。
 そんなふうに、気をつかって欲しくはなかった。
 情けないような気になって、唇をかむ。しかし、そんな顔を見せたくはない。そんな権利はない。

 不意に、エイリーに抱きしめられた。
 リーズの首もとに顔をうずめ、彼はそっと囁いた。
「リーズといっしょにいたいんだ。場所なんて、どこでもいい」
「────!」
 リーズは一気に赤面した。一瞬、なにをいわれたのかわからない。 
 しかも、ここはレストランを出てすぐ──見事に公衆の面前だ。
「エ、エイリー?」
「まだ、わかっていなかったのか?」
 直球なだけに、リーズの脳がぐらぐらと揺らぐ。これはいったい誰だ──安易にクスリを使用したことを、初めて後悔した。本当の意味で、アニーにもうしわけなく思う。ごめんアニー、これはキツイ。
「ちょ、ちょっと待って、エイリー」
 できるだけ平静を装って、リーズは鞄から色の違う小瓶を差し出した。
「飲んで、ね?」
 優しくいう。やはりためらわず、エイリーはそれを一気に飲み干した。



「もう別れの時間だなんて、信じられない……リーズと一緒にいられた時間が宝石なら、いまから過ごす時間は石ころだ。またいつでも会いにくるからな。オレのために、心も体も空けとけよ、リーズ」
 翌日の早朝、港で今生の別れを披露するエイリーの言葉を、リーズはにこやかに聞いた。
 とても良い気分だ。とりあえず、つっこむ必要はない。
 その様子に首を傾げながらも、エイリーは時間ぎりぎりまでクサイセリフを吐き続け、ほとんど涙を浮かべて去っていく。


 晴れやかな気分で手を振ったその足で、リーズはアニーのアトリエに向かった。
 この間は本当にゴメン、ていうかいつもゴメン──きょとんとするアニーに、心からの謝罪を述べるのだった。



 
 
────────────
アニーに謝るよりハンスに謝れよ、と書いておきながらひとりツッコミ。
この二人が付き合っているのかどうか、翌日までにどんな時間があったのかはご想像にお任せします。
久しぶりにリズアトやろうと思ったら、データが全部消えていたという悲劇。ゼロからは厳しいので、断念中です。

 
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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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