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treasure『どれが現実?』

またまた伽砂杜ともみさまにいただきました!
いつもはどちらかというと、ほのぼのコメディテイストが多い? という雰囲気ですが、今回はドッキドキです!! きます!! すごいです!!!
大きく深呼吸してーーー、続きへどうぞっ><





*****





『どれが現実?』 BY伽砂杜ともみ



「ハンスさん! そろそろアトリエに伺う時間じゃないですか?」

 そんなダニエルの声に、ハンスはそうだったか? と疑いつつも、ああ行ってくると返事をした。
 陽射しは暖かく少し汗ばむほどだが、木陰へと入ればそれなりに爽やかな風が髪をなでていく。

「……今日はアニーに何か用があったか?」

 別段、課題が遅れているわけでもなく、自分が依頼を出した事もない。
 手に持っているファイルにも、特に何かチェックされているわけでもない。
 忙しくなってきた委員会の仕事を放ってでも、こなければならない事だったろうか。
 そう考えながら歩くが、すぐにアトリエが見えてきた。

「まあ、体調を崩していないか訪問するのも、仕事の内か」

 言い訳がましく呟いて、いつもの通りノックをしようと右手を上げた。
 ふと中からアニーの楽しげな笑い声が聞こえてくる。少々ためらいながら、扉を叩けば、開いてるよーと気軽に声がかけられた。

「失礼する」
「あ、ハンス。いらっしゃい!」

 いつも以上に機嫌が良さそうな彼女の笑顔に、ハンスも思わず破顔する。
 しかし、すぐに目についたのは、いつも重そうな鎧に身を包んだ黒ずくめの彼。

「ああ、キルベルトもいたのか」
「まあな」

 あまり見た事のない彼の笑顔に、ハンスの心がざわめいた。
 何故かは分からないが、アニーとキルベルトの間にある空気が違う物のように感じる。
 ハンスの様子を気にも留めず、アニーが窯の前に立ち、笑顔のまま声をかけた。

「ハンス、今からお昼にしようと思ってたんだけど。食べてってよー」
「いや、まだ仕事が残っているから……」

 もったいない気がしたが、本当に忙しいのだ。そう、本来ならここに顔を出す時間もないはずだったのだ。
 残念そうなアニーの表情に、申し訳なさでいっぱいになったが、今回ばかりは仕方がない。
 そう言って、とりあえず特に用がないので立ち去ろうとすれば、キルベルトが呼び止めてきた。

「そう言うなって! 飯ぐらい食わねーと、仕事もはかどらないぜ?」
「いや、そうもいかないんだ」
「まあまあ。すぐに出来るって! なあ、アニー?」
「うんうん! 超特急で作るから、食べていって? ねえキルベルト、シャリオミルクちょっと買ってきてくれない? その間に出来る事しとくから」
「ああ、待ってろ」

 派手な音を鳴らして、飛び出していくキルベルトを呆然とハンスは見送った。
 ――今、自分は何を見た?
 キルベルトは出て行く前に、彼女の頬にキスを落とし、アニーはとても嬉しそうにはにかんだのだ。

 悪夢だと思った。
 現実であるはずがない、と。

 ハンスは蒼白になって、鼻歌を歌いながら窯に向かうアニーの背中に、かける言葉を探した。何を、言ったらいいのか。
 課題もしっかり提出しているし、ギルドや市民からの評価も高い。恋愛をするな、などというのは個人の勝手なのだから、言えるはずもない。

 そうだ。自分は彼女に気持ちを伝えなかったのだ。
 何かを言える立場ではない。
 だけど……

「……アニー」
「うん? 何か言った?」
「ちょっと聞きたい事がある」

 自分の声が、こんなに低く出る物だとは思わなかった。
 でも、彼女はいたって普通で。
 そんなにまでキルベルトを。と思えば思うほど苛立ちが増し、虚しさも襲う。

「なになに? 何か依頼?」
「いや、そうじゃ、なくて」

 手を止めて、大きな目でハンスを見つめ返してくる。
 純粋で、いつも何か楽しそうにきらめく瞳。これを自分ではない他の男がさせているのかと思えば――息が、止まりそうだった。

「……その、キルベルトと」
「あっ! わかっちゃうよね、やっぱり。こないだからキルベルトとお付き合いしてるんだよー」
「そう、か」

 声が、出なかった。
 心をえぐられたように、深く黒い何かがハンスの中に生まれる。この気持ちを後悔と呼ぶのだろうか。ただひたすらに悲しみがその暗闇に流れ込んでいく。
 これ以上、この場にとどまっていたくなくてアトリエを飛び出した。

「あれ! ハンス、お昼は……」

 そんな声が聞こえたが、彼女の顔も見ていられなかった。
 今さら担当を替えてもらうわけにもいかない。
 この開発がきちんと軌道に乗り、自分が必要となくなるまでは、アニーとキルベルトを見ていなくてはならない。

 ――そこで、目が覚めた。
 体が酷くだるく、重い。
 太陽の高さで、そろそろ起きる時間かと起き上がった宿舎の一室で、ハンスは辺りを見回した。

「夢、か?」

 いやにリアルな夢だった。
 心にぽっかりとあいた、虚無に近い穴はマイナス思考を増幅させる。

「いや、まさか」

 弱々しく首を振り、いつもの制服に着替える。
 自分を奮い立たせるように、勢い良く扉を開けた。

 いつものように忙しく、いつものようにジュリアが団長に怒られている。
 昼前にダニエルが近づいてきて、いつもと変わらぬ少し緊張した顔と声で話しかけてきた。

「ハンスさん! あの、ハンスさんが会議に出られている時に、アニーさんが見えてですね! 話があるから、アトリエに来て欲しいって言ってました!」

 心臓が、跳ね上がった。
 まさか現実だというのか? ダニエルのセリフは違うようだが、夢の中でもこれくらいの時間ではなかったか。

「あの……ハンスさん?」
「あ、ああ。分かった、ありがとう」

 のどが乾いて、思うように声が出せない。
 心配そうなダニエルを後にして、ハンスは重い足取りでアトリエへと向かう。
 夢と同じように、陽射しは暖かく少し汗ばむほどで、日陰を歩けば爽やかな涼を得られる。
 いつも歩く道のりが、ひどく遠く感じられた。
 アトリエに心から行きたくないと思う事は初めてではないだろうか。

 少しだけ、無駄に遠回りをすれば、横手に並ぶ植木の影からビュウが葉っぱまみれに飛び出してきた。

「ああっ! ハンス、ひさしぶりー!」
「……ああ、ビュウか」
「ん? どうしたんだよ、っていうか。助かったよ!」
「また迷子か?」
「違うっ! さまよってただけだ!」

 ビュウの一文字に結んだ口を見て、やっとハンスが小さく笑う。
 心の機微に聡い彼だ。だが何も聞いてこない事に、感謝した。

「それで? どこに行きたかったんだ?」
「ああ、アニーんとこなんだけどさー。ハンスも呼ばれてるんだって? 仕方ない、一緒に行ってもいいぜ」
「仕方ない。一緒に行くか」

 素直に離れまいと横を歩くビュウに、多少落ち着きを取り戻す。
 だがさすがにアトリエの扉を目の前に、躊躇した。が、ビュウは遠慮なく扉を開け放つ。

「ビュウ、さんじょ~ぅ!」
「あ、いらっしゃい! 二人で来たんだねー。どうせハンスに連れてきてもらったんでしょー」
「違う! ちょうど途中で行き会っただけだ!」
「はいはい。そういう事にしとくよー」

 アニーが二人を招き入れ、適当に座ってーと声をかけた。

「あれ、ハンス。どうしたの? いつも以上に難しい顔して~」
「……いや、なんでもない」

 見回したが、キルベルトの姿はない事に安堵していた。
 そうだ、あれは夢だったのだと確信する。
 そんなハンスを不思議そうに見やり、アニーは屈託なく笑顔を向けてきた。

「あ、お昼まだなんでしょ? 今から作ろうと思ってたんだ、食べていってよ」
「アニーのシチューもいけるもんな!」
「またまた~! ちなみに今日はシチューじゃないけどね」
「マジで!? シチューがいい! シチューにしてください」

 ビュウの頼み方に、まんざらでもないのかアニーが吹き出す。
 嫌な予感と、デジャブのようなモノがハンスの心に到来する。

「……まさかと思うが、その、付き合ってるとか言わないか?」

 あまりにも思い切った突拍子のない言葉に、二人は目を丸くした。
 顔を見合わせ、アニーがたまらなくなったのか大声で笑いだした。
 ビュウも苦笑しながら、口を開く。

「何でわかったんだ?」

 ――目が、覚めた。
 太陽が昇り始めているのだろう。辺りは少し肌寒く、薄暗い。
 夢の連鎖に、『今』が本当に現実なのかを疑う。
 ゆっくりと体を起こし、ベッドに敷いてあるシーツの、サラリとした感触を確かめた。
 
 ビュウはフィズを好きなはずだ。
 それは間違えるべくもない、はずなのに。

 悩み抜くが、今の状況が現実なのかも不確かだ。
 すぐに陽は昇り、出勤時間が来る。
 いつもの制服を身にまとい、いつものように出勤した。

「あ! ハンスさん、おはようございます!」
「……ああ、おはようございます」
「な、何か? 顔に何かついてますか?」

 思わず見つめてしまったため、非常にうろたえてしまったダニエル。
 苦笑しながら謝罪すれば、更に恐縮させてしまった。

「何をしているんだ、僕は」

 万が一、現実だった場合を考え、仕事に打ち込む事にした。
 無事に昼も過ぎ、陽も傾きかけた頃に顔を見せたアニー。
 ひょこっと顔をのぞかせて、誰かを探しているのか、周囲を伺うように目を泳がせている。
 そして、ハンスと目が合った途端に表情を輝かせ、小走りに駆けてきた。

「ハーンス~!」

 果たして、これは夢なのか。
 どちらなのかを図りかね、返事を逡巡すれば、アニーが訝しげにのぞきこんでくる。

「ハンス? 聞いてる?」
「あ、ああ。すまない、考え事をしていた」
「またぁ? もう、仕事のし過ぎで疲れてるんじゃないの?」
「いや、そういう事ではないんだ」

 いつもと変わらないアニーのようにも見える。
 キルベルト、ビュウときた。次は……まさかのカイル、とかいうのか? いや、まさか。
 心配そうに、だが自らの用件を済ませようと話しているアニーの言葉も、疑いからか遠く聞こえるようだ。

「……でね? お願い、出来るかな?」
「うん? あ、ああ……悪い、もう一度言ってもらえるか?」
「ハンス、本当に大丈夫? 風邪でもひいたんじゃない?」
「いや、違うんだ。本当にすまない」
「えー? いいけどさー」

 唇をかわいらしくとがらせて、アニーは大きめの紙袋を差し出した。

「これ。今度ビュウも一緒に……」
「ビュウと!?」
「う、うん? そう。ビュウとハンスとあたしで、採取に行こうよ~って話でね。装備もおそろいで買ってみたんだけど。疲れてるみたいだから、キルベルトでも誘って……」
「いや! 疲れてなどいない!」

 差し出された紙袋をひったくるように受け取り、ハンスは真剣な顔で大丈夫だと頷いてみせる。
 あまりの剣幕に、綺麗な青い目を白黒させて、アニーは苦笑しながらもお願いねーと残して立ち去った。

 あからさまだっただろうか。
 だが、今のハンスにはそんな余裕はなかった。だからといって、告白する勇気もなかったが。
 とりあえず疲れ果てたような脱力感に、現実を思わせられる。
 少しだけ落ち着きを取り戻しながら、ほぼ奪い取った紙袋の中身を確かめようと覗き込めば、動きを止めた。

「……またかっ!」
 紙袋を床に叩きつけようと振り上げたが、思い留まる。

 これは、夢だろうか。

 だがこれが夢でも現実でも、結果は同じだった。
 以前渡されたピンク色のワンピース。その名も甘い服の時と同様、着られるわけがない。
 汚して売れなくなっても、アニーが困るだろう。返品だ、それが一番だ。

 一瞬、ビュウならば着るのだろうか。
 そう考えたが、ふと視線を上げれば神妙な顔をし、同じ紙袋を抱えたビュウ。
 彼を案内してきたのだろうジェリアが、こちらを指さしているのが見えた。
 そうだ、返品が一番なのだ。こちらを見たビュウに、頷いて見せる。

 この……おそらく手にする事はないと思っていた服。
 確か、清らかな服といったか。ひょっとしたら聖なる服だったかもしれない。どちらにしても、着る事はないだろうと考えていたのだから、同じ事だ。

 以前、花見に着る服を探しに武器屋へ寄った時、確認した品だった。
 これはない。と口には出さずとも、思った品だった。

「これはもう、夢だろうが関係ないな」

 夢の連続に疲れていた。
 だがそれすらも吹き飛ぶ、爽やかな攻撃。
 甘い服を届けに来た事といい、今度こそ。本格的に説教せねばなるまい。

 今回は、ビュウも同感に違いないだろう。

 そう考え、ビュウの元へと足を向けた。





────────────
いやもう何度ドッキドッキしたことか!! ハンス疲れすぎだよ!! 休んで!! せめていい夢を見て……!!(ただでさえ現実でむくわれないのに/笑

ほっとするかと思いきや、どんどん押し寄せてくるどきどき感。伽砂杜さまの手腕に感服です!
素敵なSSを、ありがとうございました──!!

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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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