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『公然いちゃつき要求』

ちょっと甘さを補充。
「みんなの前で、ぎゅうってしたいな」






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『公然いちゃつき要求』



 あたりはすっかり暗くなっているが、アニーのアトリエには煌々と灯りがともされ、おなじみのメンバーによるどんちゃん騒ぎが行われていた。
 アニーが錬金術大会で初めて金賞を取ったのだ。いままでも良い作品を提出してはいたが、惜しくも銀賞止まり。本気出せばアタリマエ、などとアニーはうそぶいたが、まわりの面々の方がむしろ喜び──というよりも、こうして騒ぐ口実を探していたというのが事実かも知れないが──、お祝いにと、ぺぺ公認のオメデトウ会だ。ただし、ぺぺは所用で不在。

「ねえねえ、ハンスー」
 宴もたけなわ、というところで、アニーが甘えたような声を出した。カイルとビュウに絡まれていたハンスは、これ幸いとアニーに向き直る。
「どうかしたか?」
 年長組が酒を飲んでいるせいか、単に人口密度が高いからか、アトリエ内は妙に暑く、アニーの頬も紅潮していた。見慣れぬ姿に一瞬物怖じしたが、ハンスはそのまま返事を待つ。
 しかし、返ってきたのは、とんでもない言葉だった。
 ハンスの顔を見上げ、小さな声で、アニーは告げた。
「みんなの前で、ぎゅうってしたいな」

 空気が、止まった。
 騒いでいた総勢六人の動きが、ピタリと一時停止する。
「な……っ」
 一番最初に声を発したのは、ハンスだ。みるみる顔が真っ赤になっていく。
「なんだいなんだい、いつの間にそういうことになってたんだい! いいとも、いいともさ! どーんといちゃつきたまえ!」
 カイルが浮かれきった声をあげたのを皮切りに、それぞれが口々にいいだす。
「どういうこと!? 二人はぎゅうとかしちゃう仲なの? いちゃいちゃしちゃうのっ?」
「だ、ダメです! アニーお姉ちゃん、ダメです──!」
「おうおう、オレさまになんのことわりもなく……ってかなんの話だ?」
「ニブニブだなー。二人はアッツアツってことだよ~、ね~?」
 だれもが身を乗り出した。
 アニーは小首をかしげ、じぃ、っとハンスを見つめる。
「ダメ?」
「だ、ダメ、というか……! ご、誤解だ! い、いいいい、いちゃいちゃとか……ましてやまだ付き合っても……」
 あたふたと否定するハンスを、ニヤニヤ笑いの面々が取り囲む。
「もう、アニーのあのセリフは、ふだんからいちゃいちゃのラブラブじゃないと出ないでしょ。ニクイねえ、色男」
 リーズがハンスの腕をつつく。ジョッキを片手に、カイルも乗っかった。
「というか、いま、『まだ』っていったね! その気は満々ってことじゃないか。もうボクらの目なんて気にせず! 一気に! がばっと! ぎゅばっと!」
 二人とも、顔が赤い。羞恥のためではないだろう。
 酔っているのだ。
 あまりの酒臭さに身を引きながら、ハンスは改めて事態を認識する。ビュウとフィズ以外は、どうやらもれなく酒を飲んでいるようだ。
 そして、それはアニーもまた、例外ではなく。
「よ、酔っている、のか……?」
「ううん、酔ってないよ」
 明らかにトロリとした目で、アニーがハンスの腕を引いた。
 完璧な上目遣いで、ね、とくり返す。
「お願い」
「────! だ、だから、どうして、そういうことになるんだ! 正気に戻ってくれ、アニー!」
「しょーきってなんだっけー」
 もはや完全に酔っぱらいだった。しかもタチが悪い。彼女に酒を飲ませたのはだれだ──一瞬考えるが、この状況ではだれということもないだろう。恐らく、彼女が勝手に飲んだのだ。故意かどうかは別として。
「なあなあ、この場合、俺たちはもう帰るべきだろ。あとは二人に任せてさ」
 いちばん冷静らしいビュウが、いちばんの問題発言をした。だれもがうなずく。
 普段は好き勝手に行動するはずの一同は、驚異的な団結力を発揮した。
「じゃ、ごゆっくり! あとでゆっくり聞かせてねー!」
 リーズがひらひらと手を振る。駄々をこねるフィズは、ビュウがむりやり連れ出した。

 
 あれほどの騒ぎだったのに、アトリエはあっというまに静かになった。
 今日に限ってぺぺがいないことを、恨めばいいのか喜べばいいのかわからない。ハンスは頭を抱えた。紅潮した顔をハンスに向け、アニーは唇を尖らせる。
「みんなの前で、って、いったのにぃ」
 ぷう、と頬を膨らませる。それはなんの誘惑だ、いったい僕になにをさせたいんだ──くらくらする頭で、それでもハンスはなんとか理性を保った。明らかに普通の状態ではないアニーになにかしてしまったら、あとからどんなことになるかわからない。
 なにかをする、という発想に、自分で慌てた。ないないない、と首を振る。
「アニー、君は酔っているんだ。ここの片づけは僕がやるから、もう寝た方がいい。だ、だいたい、ぎぎぎ、ぎゅう、というのは、どういう……」
「ダメなの?」
 泣きそうな顔で、アニーが見上げてくる。
 ハンスは言葉に詰まった。
 ダメなわけがない。しかし、アニーは酔っているのだ。とはいえ、この状況で──ハンスの頭の中を、様々な考えがぐるぐる回る。
「一回だけで、いいから」
 懇願するような声に、思考が止まった。
 あるいは、ハンスもまた、アトリエ内の酒気にあてられていたのかもしれない。もうなにも考えられなくなる。
「──どうなっても、知らないからな」
 たがが外れてしまえば、一瞬だった。
 ハンスは目の前のアニーを、力強く、抱きしめた。
「ん……」
 少しだけ苦しげに、アニーの口から声が漏れる。そんな声を出されたのでは、ますます理性がなくなってしまう。
「アニー」
 いけない──ハンスの頭の中で、警鐘が鳴った。ここでやめなければいけない。
 このままでは、取り返しがつかない。

 鈍い痛みに、意識が引き戻された。
 ハンスの二の腕に、緩く長い痛み。なにごとかと身体を離す。
「ぎゅうぅぅぅぅぅ~」
 アニーが、服の上から、ハンスの腕をつねっていた。
 ひどく楽しそうに、にこにこと笑いながら。
「い、痛い、アニー」
 いやな予感がしながら、その手を離す。なにがおかしいのか、アニーは子どものように声をあげて笑った。
「えへへ、ぎゅうってしちゃった。痛い、痛いー?」
「い、痛かった、が……──ぎゅうって、まさか……」
 続きは、言葉にならなかった。
 ハンスは、すべてを理解した。
 いったい、自分は、なにを期待して──そして、なにをしようとしてしまったのだろう。


 アニーは笑いながら、ふらふらとベッドまで歩き、体重すべてを投げ出した。枕に顔をうずめ、じゃあ寝るね、と手を振る。
 本当にすぐに寝息が聞こえてきて、ハンスはがくりとひざをつく。
 もはや、ツッコミすら声にならなかった。





────────────
こんな酔っぱらいはイヤだ!!!
ハンス以外に言った場合を想像してみましたが、まわりの補助がないので、あっさりつねって終わりそうです。
カイル「さあ、どーんと!」
アニ「ぎゅぅぅぅ」
カイル「い、痛い痛い痛い」
みたいな。

ぺぺが不在なのはオトナの事情です(いたら話が長くなるわ!

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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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