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『カイルさんの宝物』 3

やっとこさ最後です。
でも全部で7000字弱。






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『カイルさんの宝物』 3



 隣で寝息をたてるアニーに、できるだけ意識を向けないようにしながら、カイルは胸中ででたらめの呪文を唱えていた。
 手を出すハズがない。そんなつもりは毛頭ないし、そもそもアニーはそういった対象ではない。
 しかし、女の子なのは間違いない。
 そもそも、下心があって作成した手錠だ。流れとはいえこうして手錠で繋がって、離れることもできず──ものすごくもうしわけないような、とんでもなく悪いことをしているような気になってきた。
 アニーの口から寝息が漏れる。
 色気はゼロ。とはいえ、女の子だ。
 カイルの手に固定されている輪が、ほんのりと赤く光った。カイルは頭を抱える。
「ボクって全力で男の子……」
 恋とか愛とかは別の次元で、ランプの点灯。これは危険な兆候だ。
 どうせなら、もっと色気のあるオトナの女性とうっかりこういう事態になりたかった。そうすれば、こんな身の危険を感じることもなかったのに。
 ハンスの怒りは、思い出すだけで恐ろしい。彼はアニーのことでカイルにあれこれいいはしないだろうが、それだけに、抑えられた怒りの炎が伝わってきた。頼みの綱であったろうぺぺもいなくなってしまって、当のアニーは男の隣で寝る始末。

「玉の輿ぃ……」
 寝言をつぶやいて、アニーがもぞもぞと動く。
 あろうことか、そのままこてんと、カイルの肩に頭を預けた。
 感触が気に入ったのか、嬉しそうな顔をして首を動かす。ゆるゆると落下して、カイルのヒザに収まった。
 ヒザまくらだ。
 恋人たちがやるという、あの。
「これは……」
 カイルは、ごくりと喉を鳴らした。
 眠るアニーの邪気のない横顔は、カイルにしてみれば新鮮だ。触れれば、どんな顔をするのだろうかと、一瞬とんでもないことを考える。
 慌てて、胸中での呪文を再開した。
「だれの前でもこれじゃあ、ハンスに同情するよ……」
 彼らが甘い関係でないことは明らかだったが、ハンスの想いもまた明らかだ。本人以外には筒抜けだといっていい。
 呪文を唱えながら、これは自分も寝てしまうのが最良なのではと思い直す。目を閉じて、ずるずると姿勢を崩すと、呪文の代わりにヒツジの数を数え始めた。





 カチャリ、という音で目が覚めた。
 ヒツジと戯れる夢を見ていたカイルは、うっすらと目を開ける。寝ぼけ眼をこすろうとして、左手から手錠が抜け落ちたのに気づいた。
 しかし、床に落ちることはなかった。カギを開けたハンスが、そのまま手錠を持ち上げる。その手には二つの輪っかが握られていた。隣にいたはずのアニーは、いまはベッドで眠っている。まずアニーの手錠を外し、ベッドまで運んだのだろう。
「やー、あはは、おはよう」
 いってしまってから、他になにかいいようがなかったのかと思うが、口から出てしまったものはしょうがない。
 怒りのオーラをぶつけられるかと思いきや、ハンスは疲れたように肩を落とした。
「こっちは必死で探していたのに、三人揃って寝ていたとはな」
 三人? ──聞き返そうとして、すぐに気づく。向かい側のイスで腕を組んだまま、ぺぺが眠っていた。なんだかんだいって心配で見に来たのだろうか。場を離れられずそのまま寝てしまうとは、なかなかの師弟愛だ。
 窓から見える空はもう赤みを帯びていて、何時間も寝てしまったのだとわかる。カイルは潔く姿勢を正すと、ハンスに向かって頭を下げた。
「本当にゴメンっ! 反省してるよ。カギを見つけてきてくれて助かった。ありがとう」
「反省してくれ、本当に。今度こそ。いい加減に」
 声にはやはり怒りがこもっていて、カイルはじりじりと身を引く。それほど迷惑をかけているという自覚がないのだが、まるで常習犯扱いだ。

 声に反応して、ぺぺが目を覚ました。ハンスの姿を確認して、お、と目をまたたかせる。
「見つけたのか。オイラちゃんと見張ってたぞ、片時も目を離さずに」
 聞かれもしないのにいい切った。ハンスは苦笑する。
「ああ、わかっている。カイルはこのまま連れて行くから、アニーにはしっかりいっておいてくれ」
「ハンスがいってけよ」
 それはカイルも同意見だった。彼女の無防備ぶりには、自分ももの申したい。とてもいえなかったが。
 ハンスが来たときにどんな体勢だったのかが気になるが、もしヒザまくらのままだったらと思うと……──思いかけて、やめた。恐ろしい想像だ。
「いや、僕は……」
 しかし、ハンスは首を振った。なんとなく気持ちがわかるような気がして、カイルはハンスに同情する。冷静に見えるが、胸中は決して穏やかではないのだろう。


「おい、アニー!」
 身軽にベッド脇に移動すると、杖を振り上げ、ぺぺはアニーの額を叩いた。
 文字通り叩き起こされ、アニーは飛び起きる。
「いったぁい! ──あれ? なになに、朝?」
 きょろきょろと辺りを見回した。状況を把握したのか、ああ、と声を出す。ハンスを見て、驚いたように目を見張った。
「すごい、カギ見つけたんだね。ありがとう、ハンス」
「もっとしっかりきっちり礼いっとけ。ハンスがいなかったら、一生カイルと一緒だったかもしれないぞ」
 ぺぺの言葉に、アニーとカイルは二人揃ってうめき声をあげた。それはあまりにもひどい。
 こほん、と咳払いをして、ハンスが少しいいにくそうに口を開く。
「実は、見つけたのは僕じゃないんだ。そのことで、カイルには一度委員会本部に来てもらわなくてはならない。手の空いている委員会の面々に、捜索を協力してもらったからな、有料で」
「げ」
 カイルが顔をゆがめた。有料──すなわち、金の力。
「それってハンスのポケットマネーかい?」
「そんなわけないだろう」
 さらりと一蹴される。手錠の開発費だけでも相当な金額を要したのに、この上捜索費まで。カイルは目眩を感じた。
「手錠で繋がれちゃうのが、あたしとハンスだったら良かったのに」
 唇をとがらせるようにして、アニーがそんなことを口走る。
 カイルは息を飲んで、すかさずハンスを見た。いつもは落ち着いているはずの顔が、一気に赤くなっている。
「ど、どういう意味だ」
 ハンスが、うわずった声で尋ねる。自分のことのようにハラハラして、カイルはハンスとアニーとを見守った。どうなるんだ、どうなるんだこの展開──胸が高鳴る。妙な期待。
 恐らく、ハンスのそれは自分の比ではないだろう。装着していないにもかかわらず、彼の手にした手錠のランプが、どちらも真っ赤に点灯していた。しかし、アニーがそれに気づく様子はない。
「だって、それなら、カイルが自己責任で探せばいい話でしょ。あ、それじゃマジメに探さないかな」
「……そ、そうだな」
「うわああ」
 思わず、両手で頭を抱えた。ひどすぎる。なんという手強さ。
「ハンス……」
 カイルは眼鏡の下から指を入れ、涙を拭った。実際には出ていなかったが、滝のような涙が出てもおかしくないぐらいの心境だ。
 それから、ハンスの肩に手を置く。心から、いった。
「応援、しているよ」
「……その前に、まず迷惑な発明をやめてくれ」





 結局、大捜索の人件費に、カイルの財産はほとんど搾り取られた。
 とはいえ、それでもハンスに同情の意を禁じ得なかったカイルは、せめてものお詫びにと、手錠をハンスに手渡した。いつか有効活用してね、と言葉を添えて。

 押しつけられてしまった手錠は、捨てるわけにもいかず、ハンスの部屋の棚に大切に保管されている。
 いつか有効活用する日が来──るかどうかは、別として。









──────────
というわけで、カイルのしょーもない発明の話でした。長くなってしまって申し訳ないです。
それにしても手錠って! 破廉恥だわ!(前も言った。

間接ちうと合わせて2時間ぐらいでガガッと。アニアト二次って素敵です。楽しかった!

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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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