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『V.S.アニー』

瀬名さまにネタをいただきました!
コメディテイスト、名もないファンクラブ会員の一人称です。

書きようによっては甘くなったような気もするんですが……なんか間違えちゃった……ような……。
そんな感じです(どんな。






*****






『V.S.アニー』



 どいつもこいつもわかってない。
 いったい、何を見ているのだろう。

「今日も格好良かったわ、ハンスさま……!」
「挨拶したら、相変わらず照れちゃって! とてもかわいらしかったの!」
「連れて歩きたいわ」
「一日でいいから、デートしてくれないかしら」

 仲間であるはずのファンクラブメンバーを一瞥し、私はため息を吐き出した。
 連れて歩きたいとか、一日でいいからとか、そんなことだから気づかないのだ。
 最近、あの人が見せる、あの表情に。
 私は気づいている。
 だから、行動せずにはいられなかった。



   *



 天気の良い朝を待ち、私はアトリエの戸を叩いた。
 間をおかず、開け放つ。
 息を飲んだ。もしかしたらいるかしら、と思ったけれど。

「わ、な、なんだ、いきなり」
 目に見えて慌て出す、愛しいひと。
 わかってる。ハンスさまは、私の名前なんて知らない。私がどれだけ愛していても。
「何をしているんですか、こんな朝早くに、女性の部屋で」
「委員会の仕事で……──ええと、君は、アニーの?」
「ライバルです」
「ライバル?」
 ハンスさまが目を白黒させる。かまわずに、私はずかずかとアトリエに入った。
 奥にあるベッドの上に、パジャマ姿の小娘が転がっていた。
 ハンスさまが来ているというのに、まだ寝ているなんて……! 街で見かける錬金術師スタイルよりはまだマシだけど、この格好もひどい。まるで子どもの寝間着だわ。 
「おいおい、なんだ、客かー?」
「お子様は黙ってなさい」 
 小さな男の子を一蹴する。男の子は顔を真っ赤にして何か怒っていたけど、そんなことは関係ない。
 私は、彼女を起こすために、できるだけ大きな声を張り上げた。
「アニー・アイレンベルク! 起きなさい!」
 背後で、ハンスさまと男の子が耳をふさぐ。当然だわ、なんたって、貴族大声選手権で入賞したことがあるんですもの。
 よだれを垂らして寝ていた小娘も、目を開けた。
「むにゃ、なになにー……」
 緊張感の欠片もない。
 私は仁王立ちしてアニーを見下ろし、右手の人差し指を突きつけた。
「表に馬車を待たせてあるわ、すぐに準備なさい。行き先はビーチ、もちろん、水着を持ってね」
「えー……ビーチ? 水着ぃ?」
 まだ寝ぼけているのかしら。アニーは目をこすって、起きあがろうとしない。
 イライラするわ。
 どうして、こんな小娘に。
「あなたにプライドがあるのなら、受ける以外の選択肢はなくってよ! 私の人生がかかっているの。いいから、すぐに準備なさい!」
 怒鳴りつけると、さすがにアニーは起きあがった。
 呑気に伸びをして、あくびをして、それから瞬きをする。
「……なんで?」
 もっともな質問ね。
 あたしは、自信溢れる笑みをお見舞いした。
「女として、勝負よ!」





 アニー・アイレンベルクは、おとなしく準備をして、馬車に乗り込んできた。さぼれるさぼれるぅ~とかなんとかいっていたけどなんのことかしら。
 状況がわからないが僕も行こう──そんなことをいって、ハンスさまも同行。どうせ誘うつもりだったのだから、ちょうどいいわ。

「うわあ、良い天気だし、気持ちいいね!」
 ビーチにつくなり、アニーは全開の笑顔でそんなことをいった。
「ありがとう、連れてきてくれて! 最近結構引きこもってたんだよね。ああ、空気がおいしい!」
 いい気なものだわ。これからどんな辱めを受けるとも知らないで。
「水着、持ってきたんでしょう? 馬車の中で着替えるといいわ。私は下に着ているから、大丈夫」
「え、下に着てるの? 気合い入ってるね」
「──! い、いいから、早くなさい!」
 なんなの、この小娘。見た目通り、失礼極まりないわ。

 私は、アニーが出てくるのを待った。
 主役は最後に登場するんだもの、先に水着姿になったのでは意味がない。
 委員会の凛々しい制服姿で、ハンスさまが所在なげに立っている。私は従者を呼んで、彼にティーブレイク一式を用意させた。
 ハンスさまの水着姿も見たいけど、きっとあの方は拒否されるもの。せめて日陰で、冷たい飲み物と一緒に、見ていてくれるといいわ。
 アニー・アイレンベルクの惨めなさまを。
 そうして、目を覚ますといい。

「さ、泳ごうか!」
 アニーが目をキラキラと輝かせ、馬車から飛び出してきた。
 その姿に、私は唇の端を上げた。
 笑いが止まらない。
 多少のフリルがあしらわれたキャミソールと、ショートパンツタイプの水着。まるで少年みたい。
 ハンスさまが身を乗り出している。現実を見たかしら。
「ご覧なさい!」
 私は大ボリュームで叫ぶと、ワンピースのボタンをすべて外し、勢いよく脱ぎ去った。
 ワンピースの下には、特注で作らせた真っ赤なビキニ。宝石があしらわれたゴージャスさに、もちろんそれに負けない肉体美。
 ビーチにいる他の客たちの視線が、私に集中しているのを感じる。
 当然よ、他の誰よりも美しいんだもの。
「高そうー」
 アニーの感想が癪に障る。私はアニーに指を突きつけた。
「さあ、負けを認めなさい! なんなの、その残念な身体! 貧相な胸、というよりそもそもないじゃないの、胸! ウェストは多少あるみたいだけど、まるっきり子どもだわ!」
「ちょ、なんでそんなこといわれなきゃなんないの! 怒るよっ」
 ちょっと意外だったけど、アニーは顔を赤くして、頬を膨らませてきた。ちゃんと怒るのね。
 でもその怒り方。とても洗練された女性のものじゃないわ。
「あたしはまだまだこれからだよ! それに、そういうのって個性でしょー!?」
「あら失礼、まだ本当に幼児だったかしら? それなら、まだまだこれからね」
「むかー! 十八だよ!」
「あら、じゃあ私と同じね」
 さっと、アニーの顔色が変わる。もっと年上だとでも思っていたのかしら。
 ふふん、いい気味。
 これで、私との差がはっきりしたわ。
 私は、ちらりとハンスさまを見た。ちょうど目が合って、思わず赤面する。そんな見つめられたら、いくら私でも照れてしまうわ。
「ええと……一体、これはどういった催しなんでしょうか」
 投げかけられたのは愛の囁きでも、ましてや褒め言葉でもなかった。
 ハンスさまったら。
 でもそんなところも好き。
「私と、あの錬金術師の、女としての完成度の違いを明確なものにする催しですわ、ハンスさま。よくご覧になりまして?」
「あ、いや、その……」
 私は、ずいとハンスさまに近づいた。ちょっと恥ずかしかったけれど、これでもかと胸を強調して身を寄せる。
 ハンスさまは顔を赤らめて、身を引いた。
 助けを求めるような視線をアニーに送る。
 ……どういうことなの、あんな小娘。
 私の方が、絶対、何倍も何倍も、キレイなのに。

「ショック……だけど気にしない! せっかく泳ぎに来たんだもん! 泳ごう!」
 膝をついてうちひしがれていたはずのアニーが、立ち上がってそういった。
 砂を蹴って、海に飛び込む。
 ──まるっきり子どもじゃない。どうして、あんな小娘がいいのかしら。
 ハンスさまに視線を戻すと、彼は、じっと小娘を見ていた。
 一人で泳いで、はしゃいでいるアニー。
 そのアニーを……温かい目で、ほほえみを浮かべて、見つめるハンスさま。

 どういうこと。
 こんなはずじゃない。
 こんなハンスさまを見たかったわけじゃないわ。
「なら、泳ぎで勝負よ!」
 私はそういい放って、海に飛び込んだ。
 やけになっていたのかもしれない。
 でも、どうしても、この小娘に勝たなければ、という気になっていた。
 やることなすこと全部が、空回りになってしまうのだとしても。
 このまま諦めてしまうなんて、そんなの、絶対にイヤ!
「アニー・アイレンベルク! 私に追いついてみせなさい! 子どもは泳ぎも得意でしょう?」
「泳ぎなら得意だよ! 負けないよー!」
 一緒に遊ぶつもりなのかしら、アニーが笑って泳ぎ出す。
 ──心の中が、ざわざわと揺れた。
 違う、何かが違う。
 私は一体、何をしているの?

 足が、引っ張られた。
 そうじゃない、つってしまったんだわ。泳ぐのなんて久しぶりだもの。
 勝負はお預けかしら──私は、そのままそこに留まろうとする。
 けれど、それすら無理だった。
 水着にあしらわれた宝石が、重い。
 思うように、身動きが取れない。
 見上げる先は、光を受けた水面。キラキラと輝いている。まるであの小娘みたいに、何にもとらわれずに。
 それが、どんどん、遠ざかっていく。
「────っ!」
 気が遠くなる。
 意識を手放す直前に、アニーが見えた。
 必死な顔をして、私に向かって手を伸ばす。

 なによ、あなたなんかに助けられたくないわ。
 放っておいて──







「……ぷはあ!」
 息を吐き出すと同時に、意識が戻った。
 目の前に、アニーの顔があった。
 近い。
 ひどく近い。
「──! 良かったぁ、どうなるかと思ったよ」
 心底ほっとしたように、アニーは空を仰ぐ。私は、自分が寝転がっていることに気づいた。
 助けられたんだわ、この小娘に。
 身体を起こし、唇を拭う。
 ……唇? 何かしら、この感じ。
「まだ動かない方がいいよ、息してなかったんだから。身体休めたら、帰った方が良いね」
 息を……していなかった?
 アニーの向こうでは、ハンスさまがうちひしがれている。
 何にそんなにショックを受けているのかしら。なんだか青い顔……でも、どこか、ほっとしたような。
 ふと、思い当たった。
 目を覚ましたときの、アニーの顔の近さ。
 それに、かすかに唇に残る、この違和感──
「あなた、まさか、キス……」
「キスぅ? 人工呼吸だよ」
「────!」
 私は一気に赤面していくのを感じた。言葉にならない怒り。
 なんてこと!
 よりによってこんな小娘に、人工呼吸……!
 私は衝動のままに、手を振り上げた。
 ぱあん、と乾いた音。気づいたときには、アニーの頬を殴っていた。
「よくも、そんな辱めを……!」
 目に涙がにじむ。情けない、あまりにも情けない。
 一体私は、何をしにここに来たというのだろう。
 そばで見守ってくれていたらしいハンスさまが、何かをいおうとする。私を責めるの? それともアニーを?
 けれど、アニーがそれを制した。
 真剣な顔で、まっすぐに、私の目を見た。
「なんて思ってくれてもいいよ。でも、あたしは後悔しない。死んじゃってたらどうするの」
 固い声に、びくりとした。
 彼女の言ってることは、正しい。
 正しい、けど。
 それじゃあ、私は、どうすればいいの。
 どんどん、涙が溢れてくる。アニーは手にしたタオルで、ぐいぐいと私の涙を拭った。
 それから、まるで真夏の太陽そのものみたいな笑顔を見せた。
「無事で良かった。また、来ようね」
 ──どきん。
 胸の奥底で、何かが動く。
 ああ、私、貴男の気持ちがわかったような気がする。
 反則だわ、こんなの。

 飲み物もらってくるよ──そういい残して、アニーが走り去っていく。
 ハンスさまが肩をすくめて、囁いた。
「……あんまり、いじめないでやって欲しい」
 わかってる。
 本当は、わかってた──ぜんぶ。
「負けたわ」
 不思議と清々しい気持ちで、私は笑った。



   *



 どいつもこいつもわかってない。
 いったい、何を見ているのだろう。

「残念だわ、ゴールド会員のあなたが、ファンクラブをやめてしまうなんて」
「あなたこそが、次の会長だと思っていたのに」
「まさか、ハンスさまのことがお嫌いになったの?」

 ファンクラブメンバーが、口々にいう。
 私は晴れ晴れしい気持ちで、金色の会員バッジと会員証を置いた。
 そうしてきっぱりと、脱退理由を告げる。

「もっと、好きな子ができたのよ」
 私、あなたには負けないわ、ハンスさま──!

  








────────────
「アニーが泳ぎが得意っていうこととハンスファンクラブっていうところを組み合わせて『ハンスさまにはふさわしくない!』とアニーを陥れる気でビーチに行ったけど、溺れてしまって、アニーに助けられて人工呼吸までされて……逆にアニーに惚れる」──以上が、瀬名さまからいただいたネタでした。
改めていただいたネタを見てみると……もっと違うアプローチがあったような? なんか違ったような??
とか思いましたが書いてしまったものは仕方がない!

瀬名さま、楽しいネタをありがとうございました!

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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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