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treasure『永遠に続くメロディ』

平隊員Tさまにいただきました!
ハンスとアニーは、ラブラブと付き合っています。甘いですよ……!!

これ単品でもちろんお楽しみいただけますが、同じく平隊員Tさまの『とある鳥のさえずり』既読の方がなおおいしい感じです。







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『永遠に続くメロディ』 BY平隊員T


 とある日の夕暮れ時、アニーは鏡台の前に置かれた椅子に腰掛け、ふんふーんと鼻歌を歌いながら三日月型のイヤリングを左右の耳に飾っていく。その実に楽しげな姿を、少し離れた場所からペペは世にも珍しい生物を目にするように眺めていた。
「アニー……どっかで変なもん食ったのか?」
「どう言う意味よ、それ。でも今日は気分が良いから許しちゃう」
 そう言ってにっこり微笑むと、すっと立ち上がりその場でくるりと一回転する。それに合わせて、普段着慣れないドレスの裾がふわりと舞った。
「どう? 似合うかな?」
 帽子も被っておらず、マントも付けていない、なんとも女性らしいその格好に、ペペは目を細くしながら溜息を吐いた。
「似合ってるんじゃないのー」
「そっか、やっぱり似合っちゃってるよねー」
 嫌味を含んで言ったはずのペペの台詞に、アニーはえへへと可愛らしい笑みを浮べる。どう見ても浮かれ切っているその姿に、ペペは再び溜息をもらす。
「それ、どうしたんだ?」
「んー? 聞きたいー?」
 聞いて欲しいくせに、と毒付くペペに対し、アニーは頬を薄っすらと赤くしながらほうと息を吐いた。
「ハンスがねー、アニーに似合うだろう、ってプレゼントしてくれたんだよー。
このイヤリングもね」
「それは、よかったな……」
 目の前で目一杯にノロケられ、ペペは心底疲れた風な溜息を吐いた。今日何度目の溜息になるだろうか。
 アニーとハンスが恋仲になってから、早くも三ヶ月が経とうとしている。最初のうちこそママゴトのような恋愛をしていた二人ではあったが、そのうちにアニーはリーズの手ほどきも手伝って女性らしさを身に付け、ハンスは一層凛々しく、頼りがいのある男性へと変わっていた。
 アニーの錬金術師としての腕はすでに超一流級。恋にうつつを抜かしたとしても、ペペには強く叱れる程の理由がなくなってしまい、今や隠居の老人のごとく。
 今日は一週間ぶりのデートとあって、アニーはいつも以上にめかし込んでいる。とは言え、化粧らしい化粧はしておらず、強いて言えば桃色のリップクリームを唇に引いているくらいだろう。
 今まで帽子にマントという少年のような格好だったため盲点となっていたが、アニーは非常に肌が白く、健康的な美を生まれ付き持っていた。そのため、下手に化粧を施す必要がないのだ。女性からしたら嫉妬を覚える程だろう。
「んで、今日はどこに行くんだ」
「劇場だよ。リーズ姉さんからね、なんと、超有名な歌手のリサイタルチケットを譲ってもらったんだよ! しかもタダで!」
「そうか。明日辺り槍が降るかもな。お出かけの際は盾を常備しましょう、ってみんなに言っとかないとな」
「あははー、そだねー」
 冗談に笑い合っているとアトリエの扉をこんこんと叩く音が耳に届き、相手の声を待たずにアニーが扉を開けた。そこに立っていたのは黒のスーツを着込んだハンスだった。そのまま式に行くと言っても誰も疑問に思わない程に、皺一つ無く綺麗に着こなしている。
「ハンスー」
 言いつつアニーはハンスの右腕に抱き付いた。その姿にペペは、見ていられないと言った感じに首を振りながら顔を背けた。
「アニー、付けてくれたのか」
 ハンスは男性とは思えない程に綺麗なその手をアニーの頬に当てると、肌をゆっくりと撫でながら耳に持っていく。そこに下がる三日月を人差し指で優しく弾いた。
「どうかな? 似合う?」
「ああ。よく似合ってる」
 自分達の世界を作り上げる二人に、ペペはアトリエ中に響く程の大きな咳払いをして細くさせた目を向ける。
「……仲良くするのは結構な事だけど、時と場所はわきまえるように」
「す、すまない。さあ行こうか」
「うん」
 アニーは差し出されたハンスの手を取ると、一層優しく幸せに満ち満ちた笑みを浮かべて見せた。
 自分には一切見せる事のないその幸せそうな表情に、ペペは少しばかり面白くなさを感じながらも、アニーが幸せならそれでいいんだ、と心の奥でぽつりとつぶやいた。


※※※


 劇場の入り口に構える大理石の巨大な柱。左右に並ぶそれには垂れ幕が下げられ、そこには「歌姫モルテ リサイタル」と書かれてある。
「超有名歌手って、モルテの事だったのね」
「僕も名前くらいは聞いた事はあるが、知り合いのような口振りだな」
 ハンスの言葉にアニーは小さく首を傾けると、片目を閉じてウインクしながら唇の前に人差し指を立てて見せる。
「なーいしょっ」
 その仕草は、魅力を付けつつあるアニーもやはりまだまだ年相応の少女だと感じさせ、ハンスは思わず彼女の頭を優しく撫でた。
「ん、なに?」
 不思議そうに見上げるアニーに、ハンスは微笑んで見せる。
「いや、アニーもまだまだ子供だなと思ってね」
「あー、それってぶじょくってやつですかー? ハンスさん?」
「――安心したんだ」
 ほえ、と間の抜けた声を出すアニーの手を取ると、二人は劇場内へと歩き出した。

 劇場内は超満員状態。ステージ上以外は明かりが一切点いておらず、落ち着いた空気を感じる。
 その中の一席にお互い腰を下ろすと、次第に周囲のざわめきが小さくなり、そして一切の雑音が消えていく。それに合わせて、ステージのライトがぱっと消えると、一筋のスポットが煌びやかなドレス姿の女性を照らした。
 ボリュームのある金の髪が彼女の一礼に合わせてゆったりと下がると、それと同時に周囲から拍手が起こった。
「モルテ、綺麗……」
「そうだな……」
 彼女のためだけに用意されたそのステージは、彼女を飲み込む事はなくその美しさを一層際立たせ、それは人の持つ美とはかけ離れて見えた。まるで天使、女神と言った風だろうか。劇場内にいる誰もが彼女に魅せられている事からも、それは伺える。
 彼女、モルテはゆっくりと瞳を閉じると、両手を大きく大きく広げ、そして――。


※※※


 劇場からの帰り道、星空に浮かぶ月の光に照らされながら、二人は特に言葉を交わす事もなく歩いていた。
 独特な劇場の雰囲気に完全に飲まれてしまったのか、アニーは今もぼーっとした表情のまま宙を眺めている。
「アニー」
「――……え? な、なに?」
 はっとして顔を上げるとアニーはハンスを見たが、なぜかすぐに目を背けた。月の光が紅潮したアニーの頬を照らしている。それは歌声の熱によるものなのか、別の理由なのか、それとも両方か。
「顔が真っ赤だぞ。大丈夫か?」
 なぜそうまで真っ赤になってしまっているのか、恐らくハンスはその理由に気付いている。それはハンスの口元が悪戯っぽく笑っている事からもわかる。
 からかわれた事に気付き、アニーは面白くないと口を尖らせた。
「どーせ私は子供だもん」
 へそを曲げるアニーの頭をハンスは優しく撫でると、その肩をそっと抱き寄せた。
「そのままのアニーでいて欲しい」
 耳元でささやかれたその言葉に、アニーは目を閉じると微笑みながらゆっくりと頷いた。

 そんな二人からやや離れた位置にある草むらの陰に、三つの人影が身を潜めていた。
「ハンスくんってば抱き寄せちゃったりして、意外に大胆なんだから。きっと「もう君しか見えない」とか言っちゃってんのよ。やだ、もう」
「なんで照れてんの? それと、多分そんな事言ってないと思うけど」
「どうでもいいけどよ、俺眠いんだよな。帰っていいか?」
 空気の読めていないキルベルトを、リーズは鋭く睨み付ける。
「わざわざ私がチケットを譲ったのはなんのためだと思ってんの? 二人を急接近させて面白……じゃなくて、幸せになってもらいたいのよ」
「今絶対、面白いモノ見たい、って言おうとした」
 ビュウの一言に図星を付かれながらも、リーズは乾いた笑い声でそれを無理矢理笑い飛ばす。
「な、なーんの事それ? ぜーんぜんそんな事思ってなくてよ?」
「言動が変」
「顔がおかしい」
「顔がおかしいってなに?! 関係無いでしょ、それ!」
 リーズの剣幕にキルベルトとビュウは揃って溜息を吐いた。
「なに?」
「俺らさ」
「すっげ、虚しい……」
「そ、そう、ね……」
 ははは、と笑いながらリーズは頬を掻くと、その場から退散しようと提案した。当然、キルベルトとビュウはそれに同意して頷き、そそくさとその場から離れた。
 立ち去り際リーズがアニーとハンスの方へ向くと、互いに目を閉じ唇を重ねようとしている場面だった。
「あっ、と」
 とっさに体を反転させるとふうと息を吐き、手をひらひらと振りながら街道から外れた林へと歩き出した。
「お幸せに、お二人さん」


※※※


 わたしはオルゴール
 永久に永久に歌い続ける

 それは例えば、恋の始まりを

 届く事の無い、秘めた想い
 夜の空に瞬く幾億の星に込めて

 それは例えば、恋の終わりを

 まるで蝋燭の灯のように
 熱く激しく、儚く消えていく

 少女はいつしか大人になり
 そして気付く日が来る
 
 その想い、その全てが無駄ではなかったのだと
 その想い、その全てが今の“わたし”を作り上げているのだと

 目を開き、手を広げて
 世界はこんなにも優しい
 世界はこんなにも愛しい


 わたしはオルゴール
 永久に永久に歌い続ける

 それは例えば、あなたの事を

 言葉には出来ないこの想い
 あなたに焦がれて、溶けてしまいそうだと

 だから言わせて欲しい

 心から、愛してる






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デートに浮かれるアニーとか! スーツできめてるハンスとか! 耳元で囁いちゃったりとか!! いちゃいちゃしやがってこんちくしょう!!
そんでもって、モルテさーん!><
最後の詩がまた、全体の幸せな、かつどこかしっとりとした雰囲気を包んでいて……なんとも大人な風味をかもし出しております。
それにしてもヒマだな、王女!(笑

平隊員Tさま、ごんじゃらでの貴重成分供給、ありがとうございましたー!!

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  Name : 光太朗。
  性別女、またの名を光太朗子。
  『アニーのアトリエ』ハマり中。

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